2018年03月28日

EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットを欧州委員会に提出(2)

文字サイズ

基準内部プロセス
i. 保険会社は、債務項目の内部信用評価を作成し、それを次の2つのカテゴリーのいずれかに割り当てる。
 aCQS 2の場合:信用度ステップ3以下、又は信用度ステップ2以上。
 bCQS 3の場合:信用度ステップ4以下、又は信用度ステップ3以上

ii.内部評価と配分は「適格」債務項目を確実に識別する。適格債務項目については、スプレッドリスクサブモジュールの第1章第1節第2項に従って決定された、割り当てられた信用度ステップ2及び3の債券及びローンとしての処理は、リスクを適切に反映する。

iii.評価は、負債項目に関連する信用リスクに重大な影響を及ぼす全てのファクターをカバーする。

iv.内部信用評価で考慮される要因は、以下を含むがこれらに限定されない。
・競争上の地位
・経営の質
・財務方針
・カントリーリスク(関連する場合)
・約款
・会社の歴史(営業年数など)
・分散化/規模
・現在の債務発行の影響(債務発行前後の比率の定量的評価)
・会社の所有構造(特に、最終的な親が政府機関である場合)
・ビジネスモデルの複雑さ

v.内部評価は全ての関連情報(量的及び質的の両方)を使用する。

vi. 各債務項目の内部評価と配分は十分に文書化されている。

vii. 内部評価は、外部評価を有する比較可能な(同等な)企業の特性を考慮に入れる。

viii 内部評価は、借り手の財務実績の傾向を考慮に入れる。

ix. 内部評価は、引受機能とは独立している。

x. 内部評価は定期的な検証の対象となる。

承認された内部モデルの結果の使用
1111.保険会社は、「範囲」のセクションに記載されている債券又はローンへの共同投資に先立って保険者と銀行が合意した場合、「ガバナンス及びリスク管理の基準」の項に記載された条件が満たされている場合には、「信用の質の段階の決定」の項に記載された要件に従って、この契約に基づいて債務及び貸出金(「債務商品」)のリスク要因を決定することができる。

1112.これには、リスク評価が内部評価アプローチによって決定された借方項目の合計、又は承認された内部モデルの結果と、類似アプローチが適用される持分投資の合計に基づいた合計額が、全ての投資の5%を超えない、という制限に従う。

1113.保険会社が共同投資するローンのサブセットにのみアプローチを適用することはできない。

1114.結果的に生じる貸出金のリスクファクターは、委任規制の第176(4)及び(5)に従って決定されるよりも高くなる可能性がある。

1115.保険者は、適用可能な全ての要件(賢明な人の原則など)の遵守責任を負い、内部モデルの結果に疑問を投げかけなければならない。

1116.別途明記されていない限り、標準式保険会社がソルベンシーIIの第100条に定義されている内部モデルの結果を使用する場合には、この規定を準用する。

範囲
外部評価なし
1117.指定されたECAIによる信用評価が委任規則第5条に従って利用できない債務項目のみ。

借り手の種類
1118.企業が発行した債務
1119.金融及びインフラ部門を除く全ての産業
1120.保険会社と同じグループに属さない借り手

債務の種類
1121貸付と債券両方

ガバナンスとリスク管理の基準
i.引受プロセス
a.EU又はEEAのIRB(Internal Rating Based)銀行のみが適格
b.銀行と保険会社は、引き受けるローンのタイプと適用される評価基準について事前に同意する。
c.借入企業は、EU又はEEAに設立された企業であり、EEA又はOECD諸国の収入の大部分は、過去3年間に欧州委員会勧告(2003/361 / EC)で定義された小規模企業よりも大きい。

ii.透明性基準
d.銀行は、引受プロセス、特に基準、組織構造及び統制についての詳細を提供する。
e.銀行は、全ての融資申込み、債務申請(すなわち、拒否されたものもまた)に関するデータを提供する。
f.銀行は、融資申込みが拒否された理由について詳しく説明している。

iii.チェリーピッキング/不利な選択の回避基準
d.銀行は、貸出金の名目価値の少なくとも50%のエクスポジャーを保持している。
e.同じ引受基準が、銀行が単独で引受ける他の比較可能な貸出金について、銀行と保険会社が共同投資する債務項目(ローン)に適用される。
f.保険会社は、事前定義された範囲にある全ての債務項目(ローン)に投資する。

iv.モデルの機能に関する透明性の基準
銀行は、内部モデル及びその限界ならびにその妥当性及び妥当性を理解できるようにするための情報を保険会社に提供する。特に
・モデルの記述に関する情報(すなわち、入力/リスク要因、リスクパラメータの定量化/方法、履歴及び方法論)
・モデルの使用に関する情報(すなわち、内部使用、報告、自己資本要件の計算)
・モデルの妥当性を保証するためのモデル検証及びその他のプロセスに関する情報(すなわち、検証フレームワーク、結果、内部監査結果)

信用度ステップの決定
銀行内部モデルの結果の使用
1122.債務項目の信用度ステップは、銀行の承認された内部モデルが以下の要件を満たす「マッピング」に基づいて作成した最新のデフォルト確率(PD)に基づいて決定される。:
a)マッピングにより、スプレッドリスクサブモジュールの対象となる債務項目の資本水準が適切であることが保証される。
b)マッピングについては、欧州委員会実施規則(EU)2016/1799の附属書Iの表1(「ITS」)が使用されている。
c)(a)の遵守を確保するために必要な場合、(b)で設定されたマッピングが適用される前にPDに対して、調整は保守的な方法で行われる。
d)調整の理由には、ITS第7条に定める定性的要因が含まれるが、これに限定されない。
e)PDへの調整は、以下の場合にいつも必要となる。

1.内部モデルが対象とする期間がITS第4条(2)に規定されている期間から大幅に逸脱している。
2.内部モデルに使用されるデフォルトの定義がITS第4条(4)に規定されているものから大きく逸脱している。

承認された保険内部モデルの結果の使用
1123.承認された保険内部モデルが、スプレッドリスクサブモジュールの範囲内の債務項目に対する結果としての適切な資本水準を確保する場合、これらの信用度ステップを使用することができる。

 

3―まとめ

3―まとめ

以上、今回のレポートでは、EIOPAが、2018年2月28日に公表した「ソルベンシーII委任規則の特定項目に関する欧州委員会へのEIOPAの第2の助言セット」の中から、資産運用に関係する項目の一部について、報告してきた。

保険業界団体の関心の高い「金利リスク」サブモジュールの構造及び較正の変更については、EIOPA 自身のイニシアティブによる提案が支持されておらず、保険ヨーロッパ(Insurance Europe)は「既存の方法論の主要な特徴は、フレームワークの他の側面と併せて設計されたものであり、孤立して又は影響評価なしに、断固として2020年のソルベンシーIIレビューの前に検討されるべきではない。」との意見を述べていた。また、「EIOPAの提案A(200 bps対称調整)又は提案B(結合アプローチ)は、金利リスクのモデリングに対する既存のアプローチの適切な代替案ではないと考えている。これらは、特に低利回り環境において、金利リスクの過度に保守的な見積もりを提供し、不当な複雑さを導入する。EIOPAの調査から、EIOPAは「シフトアプローチ」モデルをさらに調査していないことに失望している。このアプローチには、テストされた他のアプローチと比較していくつかの利点がある。保険ヨーロッパは、EIOPAの不十分なバックテスト結果を再現することはできない。99.5%の信頼水準への準拠は、相対的なシフトアプローチの較正に内在されている。」と述べていた。

これに対して、今回の最終の助言においては、相対的なシフトアプローチを採用し、さらには今回の変更による影響の大きさを考慮して、段階的な実施を認める形になっており、保険ヨーロッパの意見を一定程度踏まえたものとなっている。

「市場リスク集中」については保険ヨーロッパが指摘しており、EIOPA自身が述べていたように、今回の最終の助言で、各種の問題点の分析が行われ、それに基づいた助言が行われている。

「グループレベルの通貨リスク」については、保険ヨーロッパは、「グループレベルでの通貨処理に内在する技術的不一致は、EIOPAによって完全に調査されたり、取り上げられたりしていない。」として、「EIOPAの提案は、小規模かつ選択された保険会社グループの資本負担を軽減し、技術的不一致を是正したり、良好なリスク管理にインセンティブを与えるのに十分なものにはなっていない。」と批判していたが、EIOPAは今回の最終の助言においてCPからの変更を行っていない。

「未格付債務」については、保険ヨーロッパ等のステークホルダーからの意見を踏まえて、現在の状況を認識するとともに、これらの重要な資産種類が格付債務と同様な取扱とすることができる場合の基準財務比率等の客観的な基準を勧告している。

全体的には、ステークホルダー等からの意見を踏まえて、より一層充実した、また実務への影響等も一定程度考慮した上での助言が行われている。

次回のレポートでは、資産運用に関係する残りの部分について報告する。
Xでシェアする Facebookでシェアする

中村 亮一

研究・専門分野

(2018年03月28日「基礎研レポート」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットを欧州委員会に提出(2)】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットを欧州委員会に提出(2)のレポート Topへ