2018年03月26日

EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットを欧州委員会に提出(1)

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625.暴風と雹のシナリオだけが新たに導入されたため、地震と洪水の地域レベルの集約マトリックスは更新する必要がなかった。

再較正されたゾーンウェイト
626.上に概説した再較正プロセスに続いて、以下のシナリオのゾーンリスクウェイトの再較正が提案される。
・風雨:フィンランド(新しいシナリオ)、ハンガリー(新しいシナリオ); スウェーデン; スロベニア(新しいシナリオ)
・地震:ギリシャ; スロバキア
・洪水:ハンガリー
・雹:チェコ共和国(新しいシナリオ); スロベニア(新しいシナリオ)

627.これらのシナリオに対する再較正されたゾーンリスクウェイト(CRESTA相対係数)及びそれぞれの集計マトリックスの一覧は、EIOPA Webページからダウンロードすることができる。
http://eiopa.europa.eu/Publications/Consultations/Annex%20to%20section%206%20-%20Natural%20Catastrophe%20Risk%20-%20Zonal%20Calibration.xlsx

[410.いくつかのシナリオのゾーン再較正は、現在、検証の対象となっている。]

6.5.契約上の限度と自然カタストロフィリスク
644. EIOPAは、自然カタストロフィリスクの資本要件の計算において、会社の実際のリスクエクスポジャーを捉えるべきであることを背景に、契約限度額、免責額及びその他の特定の契約条件を標準式内でどのように捉えているかを評価した。

645.自然カタストロフィリスクのリスクウェイトとリスクファクターは、国内市場の平均契約限度額と国内市場の平均免責額を考慮して較正されている。その意図は、危険毎のSCRが各国に対して適切なレベルで較正されるように、契約限度額なし、免責額なしで、会社の保険金額に直接的にリスクファクターを適用することである。

646.平均から大幅に逸脱した特定の契約条件を捉え、過度な方法で標準式の複雑さを増加させるのを回避するために、EIOPAは、各危険に対して以下のように機能する「事後調整」を導入することを提案する。

1)各ゾーンについて、以下の式を適用して、対応する総損失を計算する:
 国のファクター×ゾーン相対性×免責額と契約限度の総保険金額
 委任規則の表記法を使用して、地域𝑟と地域𝑖で
 𝐺𝑟𝑜𝑠𝑠𝐿𝑜𝑠𝑠(𝑝𝑒𝑟𝑖𝑙,𝑟,𝑖)=𝑄𝑝𝑒𝑟𝑖𝑙,𝑟×𝑊𝑝𝑒𝑟𝑖𝑙,𝑟,𝑖×𝑆𝐼𝑝𝑒𝑟𝑖𝑙,𝑟,𝑖

2)会社特定の契約条件を用いて、ゾーン𝑖 における最大総エクスポジャーを定義する: 𝑀𝑎𝑥𝐺𝑟𝑜𝑠𝑠𝐸𝑥𝑝𝑜𝑠𝑢𝑟𝑒𝑝𝑒𝑟𝑖𝑙,𝑟,𝑖

3)ゾーン𝑖の最大損失として1)と2)の間の最小値を取る:
 𝑀𝑎𝑥𝐿𝑜𝑠𝑠(𝑝𝑒𝑟𝑖𝑙,𝑟,𝑖) = min(𝐺𝑟𝑜𝑠𝑠𝐿𝑜𝑠𝑠(𝑝𝑒𝑟𝑖𝑙,𝑟,𝑖), 𝑀𝑎𝑥𝐺𝑟𝑜𝑠𝑠𝐸𝑥𝑝𝑜𝑠𝑢𝑟𝑒(𝑝𝑒𝑟𝑖𝑙,𝑟,𝑖))

4)集計行列を使用して、地域𝑟の損失を計算する:
 

647.この調整により、平均的な会社とは異なる契約条件で契約を販売する会社の特定のエクスポジャーを考慮に入れることができる。会社の引受け契約がカタストロフィ発生時に平均的な会社よりも保険金額をより大きく制限している場合、「事後調整」はこの特定会社のSCRが非現実的に大きくなることを回避する。

648.いくつかのケースでは、契約上の限度は、特定のゾーン内でより大きく異なる可能性がある。そのような特定のケースでは、そのような「事後調整」は、例えば、同種の契約のグループのように、ゾーンよりも細かいレベルで実行できる。

649.会社が提案された選択肢を利用する場合、特にさらに細分化する場合には、適切な量的情報を用いて、ORSAにおいてそれを開示すべきである。例えば、上記の1)及び2)の結果、地域レベル、リスクゾーン又は同種の契約レベルでの各契約に対するSCRの減少。

 

4―まとめ

4―まとめ

以上、EIOPAが2018年2月28日に欧州委員会に提出した「ソルベンシーⅡ委任規則の特定項目のレビューに関する第2の助言セット」の中から、その全体概要とEIOPAによる助言のうちの保険引受けリスクに関係する項目について報告してきた。

これらの項目に関するCPに対しては、保険業界団体である保険ヨーロッパ(Insurance Europe)から、多くの意見が提出されており、今回の最終の第2の助言セットでは、これらの意見を踏まえて、一部変更も行われている。

「保険料及び準備金リスクの標準的なパラメータの再較正」については、保険ヨーロッパはCPにおける再較正を支持していなかったが、EIOPAは現行の標準式の較正と同じ方法での再較正を助言している。

「保険料リスクのためのボリューム指標」については、保険ヨーロッパはCPの提案に不満足を表明し、具体的な提案を行っていたが、この案は採用されていない。

「死亡及び長寿リスクの再較正」については、保険ヨーロッパの意見も踏まえて、「(CPで提案されていた)死亡ストレスファクターを15%から25%に引き上げることを止めて、現行の15%を維持する」修正を行っている。

「健康カタストロフィリスク」については、保険ヨーロッパもEIOPAのCPでの提案を支持しており、これが最終の助言となっている。

「人為的なカタストロフィリスク」や「自然カタストロフィリスク」については、保険ヨーロッパは、CPでの提案に対して、「CAT WSの提案を評価しているが一部は過度に不当な保守的なマージンが含まれている」としていたが、EIOPAは基本的にはCPでの提案を維持している。

以上、今回の項目については、一部ステークホルダーの意見を踏まえて修正等を行っているが、基本的には、CPでの助言を維持しており、必ずしも保険業界団体の意見を反映したものとはなっていない。

次回のレポートで、EIOPAによる助言のうち、資産運用に関係する項目について報告する。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2018年03月26日「基礎研レポート」)

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