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EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットを欧州委員会に提出(1)
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(1)自然カタストロフィリスクサブモジュールの簡素化
自然カタストロフィリスクサブモジュールを簡素化する取組みの中で、EIOPAは、5つの選択肢を検討し、最高のゾーンウェイトを有するゾーンへ未割当のエクスポジャーをマッピングする選択肢(オプション5)が、フォローが容易で、追加説明の必要がなく明白であることから、最も適切であると評価した。
その公式化については、CPでは2つの方式を示していたが、ステークホルダーのフィードバックを踏まえて、最終の助言では529項で規定された1つの方式に絞り込んでいる。
(2)自然カタストロフィシナリオの再較正
自然カタストロフィシナリオの再較正については、クロスボーダーの整合性を保証する方法についての決定が未解決なため、CPで提案された再較正は非常に暫定的であるとしていた。最終の助言ではCAT WS(カタストロフィリスクワークストリーム)での検討による勧告を踏まえて、再較正を提案している。
具体的には、シナリオ特有の多くのリスクファクターが変更され、また暴風と雹のシナリオが新しく導入され、関連する集計マトリックスの更新及びゾーンリスクウェイトの再較正が勧告されたが、再較正された国のファクターについて、CPよりも国を追加するとともに、CPの数値を一部修正している。
(3)契約上の限度と自然カタストロフィリスク
EIOPAは、自然カタストロフィリスクの資本要件の計算において、会社の実際のリスクエクスポジャーを捉えるべきであることを背景に、契約限度額、免責額及びその他の特定の契約条件を標準式内でどのように捉えているかを評価した。
自然カタストロフィリスクのリスクウェイトとリスクファクターは、国内市場の平均契約限度額と国内市場の平均免責額を考慮して較正されている。その意図は、危険毎のSCRが各国に対して適切なレベルで較正されるように、契約限度額なし、免責額なしで、会社の保険金額に直接的にリスクファクターを適用することである。
平均から大幅に逸脱した特定の契約条件を捉え、過度な方法で標準式の複雑さを増やさないために、EIOPAは、646項で規定される「事後調整」の考え方を導入することを提案している。
この調整により、平均的な会社とは異なる契約条件で契約を販売する会社の特定のエクスポジャーを考慮に入れることができ、会社の引受け契約がカタストロフィ発生時に平均的な会社よりも保険金額をより大きく制限している場合、「事後調整」はこの特定会社のSCRが非現実的に大きくなることを回避することになる。
また、いくつかのケースでは、契約上の限度は、特定のゾーン内でより大きく異なる可能性があるが、そのような特定のケースでは、「事後調整」は、例えば、同種の契約のグループのように、ゾーンよりも細かいレベルで実行できる。
なお、会社が提案された選択肢を利用する場合、特にさらに細分化する場合には、適切な量的情報を用いて、ORSAにおいてそれを開示すべきである、としている。
6.3.自然カタストロフィリスクサブモジュールの簡素化
527.EIOPAは、自然カタストロフィリスクに対する資本要件の計算を簡素化するための5つの異なる選択肢を評価した。
528.各オプションの影響を評価した後、最高のゾーンウェイトを有するゾーンへ未割当のエクスポジャーをマッピングすること(「オプション5」)が最も適切であるようにみえる。
529.とりわけ、提案された簡素化は、全ての現実的な設定において、委任された規制の第88条の条件を満たしている:これは、大部分が使用されることを保証する。さらに、(再)保険会社による追加の説明の必要性なしに、このアプローチは容易であり、簡単である。
[・地域/国rの暴風/雹/地震/洪水/沈下リスクの保険金額(SI)が特定のゾーンiにマッピングできない場合は、SIはリスクウェイトが最も高い地域rの中のゾーンjのSIj に加えられるべきである。又は]
・地域rの暴風/雹/地震/洪水/沈下リスクの保険金額(SI)が特定のゾーンiにマッピングすることはできないが、SIが地理的に特定されている可能性がある(そして他のゾーンは除外される)地域(𝑗1⋯𝑗𝑛)の特定のゾーンセットに関する情報がある場合、SIは、ゾーンの部分集合のリスクウェイトが最も高いゾーン𝑗∈(𝑗1⋯𝑗𝑛)のSIjに加えられなければならない。SIが地域(𝑗1⋯𝑗𝑛)にのみ割り当てられる場合、これが地域内で最も高いウェイトを有するリスクゾーンとみなされる。
530.EIOPAは、地域内の特定のゾーンセット(𝑗1⋯𝑗𝑛)の選択は、十分に根拠があり、会社が文書化することを推奨する。
6.4.自然カタストロフィシナリオの再較正
620. カタストロフィリスクサブモジュールに関する決定の健全な基礎を得るために、EIOPAはCatリスクモデリングコミュニティからの外部ステークホルダーを、関連するEIOPAの作業構造であるカタストロフィリスクワークストリーム(CAT WS)に含めることにした。
621.CAT WSは、詳細な分析によってEIOPAの簡素化と再較正の決定を全て準備した。
622.CAT WSの勧告を評価し、国家保険協会と協議した後、EIOPAは以下の再較正を勧告する。
再較正された国別ファクター:
・AT_WS:0.06%(以前の値:0.08%)
・BE_WS:0.16%(以前の値:0.16%)
・CZ_WS:0.04%(以前の値:0.03%)
・CH_WS:0.09%(以前の値:0.08%)
・DE_WS:0.07%(以前の値:0.09%)
・DK_WS:0.25%(以前の値:0.25%)
・ES_WS:0.01%(以前の値:0.03%)
・FI_WS:0.04%(新しいシナリオ)
・FR_WS:0.12%(以前の値:0.12%)
・HU_WS:0.02%(新しいシナリオ)
・IE_WS:0.22%(以前の値:0.20%)
・LU_WS:0.12%(以前の値:0.10%)
・NL_WS:0.18%(以前の値:0.18%)
・NO_WS:0.08%(以前の値:0.08%)
・PL_WS:0.04%(以前の値:0.04%)
・SI_WS:0.04%(新しいシナリオ)
・SE_WS:0.085%(以前の値:0.09%)
・UK_WS:0.17%(以前の値:0.17%)
・AT_FL:0.13%(以前の値:0.13%)
・BE_FL:0.10%(以前の値:0.10%)
・BG_FL:0.15%(以前の値:0.15%)
・CZ_FL:0.30%(以前の値:0.30%)
・CH_FL:0.30%(以前の値:0.15%)
・DE_FL:0.20%(以前の値:0.20%)
・FR_FL:0.12%(以前の値:0.10%)
・HU_FL:0.25%(以前の値:0.40%)
・IT_FL:0.15%(以前の値:0.10%)
・PL_FL:0.16%(以前の値:0.16%)
・RO_FL:0.30%(以前の値:0.40%)
・SI_FL:0.30%(以前の値:0.30%)
・SK_FL:0.35%(以前の値:0.45%)
・UK_FL:0.12%(以前の値:0.10%)
(2018年03月26日「基礎研レポート」)
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