2018年03月19日

資金循環統計(17年10-12月期)~個人金融資産は、前年比70兆円増の1880兆円に、3四半期連続で過去最高を更新

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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3.その他注目点: 日銀の国債保有シェアの伸びが鈍化

2017年の資金過不足(季節調整値)を主要部門別にみると、従来同様、企業(民間非金融法人)と家計部門の資金余剰が政府(一般政府)の資金不足を補い、残りが海外にまわった形となっている(図表10)。そうした中、2016年との比較では、企業の資金余剰が2.9兆円減少した一方で、家計の資金余剰が10.8兆円も増加している。家計の資金余剰は2011年以来6年ぶりの規模となる。雇用者の増加によって雇用者報酬が伸びた割に消費が伸び悩んだことが背景にあるとみられるが詳細は不明。
 
12月末の民間非金融法人のバランスシートを見ると、現預金残高は257兆円と、過去最高であった9月末(259兆円)から2兆円減少した(図表11)。一方、前年比でみると13兆円増加しており、引き続き現預金残高は高い水準にある。

なお、この間の借入の増加幅は18兆円と現預金の増加幅を上回っており、借入から現預金を控除した純借入額(156兆円)も前年比で5兆円増加している。
(図表10)部門別資金過不足(暦年)/(図表11)民間非金融法人の現預金・借入
(図表12)預金取扱機関と日銀、海外の国債保有シェア/(図表13)国内銀行の資金フロー(主な資産)
国庫短期証券を含む国債の12月末残高は1092兆円で、9月末から5兆円増加した。その保有状況を見ると(図表12)、これまで減少を続けてきた預金取扱機関(銀行など)の保有高が底入れ(183兆円、9月末比0.2兆円増)し、保有シェアもほぼ横ばいとなった(9月末16.81%→12月末16.75%)。国債買入れを継続している日銀の保有高は引き続き増加(449兆円、9月末比4兆円増)し、シェアも41.1%(9月末は40.9%)へと上昇した。ただし、日銀は一昨年秋以降、国庫短期証券の残高を落としているうえ長期国債の買入れペースも縮小しているため、増加ペースは大きく鈍化している。

なお、海外部門の国債保有高は122兆円と9月末から3兆円増加し、シェアも11.2%(9月末は11.0%)とやや上昇した。海外勢はドル調達コストの関係で有利な条件で円を入手できる状況が続いており、超低金利にもかかわらず国債への資金流入傾向が続いている。
 
最後に、国内銀行の10-12月期の資金フローを確認すると(図表13)、近年同期と同様、現預金と貸出の流入超過(積み増し)がみられるが、国債(国庫短期証券を含む)が流出超過(取り崩し)から流入超過(積み増し)へと転換した。国債(長期国債)は引き続き流出超過が続いたものの、国庫短期証券(短期国債)の流入超過が拡大したためである。

なお、対外証券投資は引き続き2.8兆円の流出超過(取り崩し)となった。一昨年10-12月以降、累計で17兆円もの流出超過となっている。米大統領選後に米国債価格が急落し、保有国債に損失が発生したことなどを受けて、地銀などで外債投資を手控える姿勢が続いているほか、ドル調達コストの高止まりが投資の抑制要因になっているとみられる。
 
 

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2018年03月19日「経済・金融フラッシュ」)

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