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2018年02月13日
EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(5)-EIOPAの報告書2017の概要報告-
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4―NSAsによる公衆開示
(1)NSAsによる公衆開示について
ソルベンシーII指令第31条(2)は、NSAsによる強制開示の要件を定めている。このような要件は、監督当局による特定情報の開示のテンプレート及び構造に関して、ソルベンシーII委任規則及びITS(実施技術基準)第315条から第317条に展開されている。この要件には、会社による調整又は移行措置の適用に関する集計統計データの強制開示が含まれる。
そのような情報は、12月31日に終了する事業年度を有する会社が年次報告書テンプレートを提出する必要がある日の3ヶ月以内(すなわち、2016年の統計データについては2017年8月20日)に開示される。
NSAsがそのウェブサイトで、その管轄区域における会社による措置の適用に関する集計データを公表した後、どのNSAsも措置に関して開示された情報について、ステークホルダーから質問を受けなかった。1つのNSA(英国)だけが、LTGパッケージとその影響に関する一般的な質問があったことを述べた。
措置に関する追加的な関連情報は、以下のようなNSAsのウェブサイトで入手可能となっている。
・特定の措置の承認プロセスの要件(デンマーク、フランス)
・これらの措置に関する一般的な情報は、ソルベンシーII専用のページで見つけることができる(フランス、アイスランド)。
・特定の措置の適用に関する監督声明/ Q&A文書(ドイツ、英国、オランダ)
(2)NSAsの反応
1つのNSA(ドイツ)は、国内市場における(2016年末時点の)保険会社の年次ソルベンシーIIの物語と定量的報告の評価(SFCRにおけるLTG措置の適用に関する情報の公表に関する問題を含む)及び定期的に更新されるソルベンシーIIの監督上の報告に関する会社のガイダンスを公表した。SFCRにおけるLTG措置の適用に関する情報の公表に関する問題を含む、保険会社の物語と量的報告の継続的な評価は、今年中に、更なる更新及び必要に応じた追加につながっていくことになる。
あるNSAは、「内部モデルにおけるボラティリティ調整の適用」に関するQ&Aを公表している。
大部分のNSAsは、LTG措置と株式リスク措置及び/又は措置に関するデータの公開について説明するために、ステークホルダーとの間で特別なイベントを開催していない。2つのNSAsだけが、特定の措置の適用に専念するステークホルダーとの特別な会合を組織した。特にデンマークはVAに関する業界との会議を開催し、マルタとフランスはDBERに関する会議を開催した。他のNSAsは、業界及び/又はアクチュアリー協会との様々なイベントへの参加を通じて(ベルギー、フランス、ドイツ、ノルウェー)、又は関心のある会社との2者間討議を通じて(ギリシャ、英国)、いくつかのNSAsは、LTG措置に限定されない一般公開情報に関するイベントを開催した(アイスランド、イタリア、リヒテンシュタイン)。 特にイタリアは、ソルベンシーIIやLTG措置を含む公衆開示の最初の年に関して、ジャーナリストと定期的にワークショップを開催した。
ソルベンシーII指令第31条(2)は、NSAsによる強制開示の要件を定めている。このような要件は、監督当局による特定情報の開示のテンプレート及び構造に関して、ソルベンシーII委任規則及びITS(実施技術基準)第315条から第317条に展開されている。この要件には、会社による調整又は移行措置の適用に関する集計統計データの強制開示が含まれる。
そのような情報は、12月31日に終了する事業年度を有する会社が年次報告書テンプレートを提出する必要がある日の3ヶ月以内(すなわち、2016年の統計データについては2017年8月20日)に開示される。
NSAsがそのウェブサイトで、その管轄区域における会社による措置の適用に関する集計データを公表した後、どのNSAsも措置に関して開示された情報について、ステークホルダーから質問を受けなかった。1つのNSA(英国)だけが、LTGパッケージとその影響に関する一般的な質問があったことを述べた。
措置に関する追加的な関連情報は、以下のようなNSAsのウェブサイトで入手可能となっている。
・特定の措置の承認プロセスの要件(デンマーク、フランス)
・これらの措置に関する一般的な情報は、ソルベンシーII専用のページで見つけることができる(フランス、アイスランド)。
・特定の措置の適用に関する監督声明/ Q&A文書(ドイツ、英国、オランダ)
(2)NSAsの反応
1つのNSA(ドイツ)は、国内市場における(2016年末時点の)保険会社の年次ソルベンシーIIの物語と定量的報告の評価(SFCRにおけるLTG措置の適用に関する情報の公表に関する問題を含む)及び定期的に更新されるソルベンシーIIの監督上の報告に関する会社のガイダンスを公表した。SFCRにおけるLTG措置の適用に関する情報の公表に関する問題を含む、保険会社の物語と量的報告の継続的な評価は、今年中に、更なる更新及び必要に応じた追加につながっていくことになる。
あるNSAは、「内部モデルにおけるボラティリティ調整の適用」に関するQ&Aを公表している。
大部分のNSAsは、LTG措置と株式リスク措置及び/又は措置に関するデータの公開について説明するために、ステークホルダーとの間で特別なイベントを開催していない。2つのNSAsだけが、特定の措置の適用に専念するステークホルダーとの特別な会合を組織した。特にデンマークはVAに関する業界との会議を開催し、マルタとフランスはDBERに関する会議を開催した。他のNSAsは、業界及び/又はアクチュアリー協会との様々なイベントへの参加を通じて(ベルギー、フランス、ドイツ、ノルウェー)、又は関心のある会社との2者間討議を通じて(ギリシャ、英国)、いくつかのNSAsは、LTG措置に限定されない一般公開情報に関するイベントを開催した(アイスランド、イタリア、リヒテンシュタイン)。 特にイタリアは、ソルベンシーIIやLTG措置を含む公衆開示の最初の年に関して、ジャーナリストと定期的にワークショップを開催した。
5―まとめ
以上、今回を含めたこれまでの5回のレポートで、EIOPAの報告書に基づいて、EUのソルベンシーIIにおけるLTG措置や株式リスク措置に関しての保険会社の適用状況やその財務状況に及ぼす影響、さらには、これらの措置が保険契約者保護、保険会社の投資、消費者及び商品、EU保険市場における競争と公平な競争の場、金融安定性に与える影響について、及び今回はトピックとして、これらの措置の公衆開示の状況について報告してきた。
今回のEIOPAによる報告書は、ソルベンシーIIがスタートして1年間を経ての数値や状況に基づいている。2016年の報告書に続く2回目の報告書であることから、より内容の充実が図られ、さらには各種の措置が会社の財務状況に与える影響について、2016年の報告書との比較ができる形となっている。加えて、これらの措置が財務状況以外に与える影響についても、措置適用からの一定の経過を踏まえて、それなりの特徴が表れて、一定の判断に用いることができるものも示されてきている。
ただし、一方で、いまだ、各種措置の適用状況については、審査継続中や各社において適用検討中のケースもあり、逆に既存の措置の適用の見直しや中止を検討するようなケースもあったりして、今後も適用状況等については、さらに変化していく可能性が考えられるものとなっている。
また、今回の報告書においては、各種措置の取扱における各国のNSAsの間での取扱の差異や課題意識等の状況も公表されており、これらを踏まえて、今後各国のNSAsや各(再)保険会社・グループがどのように対応していくのかが注目されるところとなってくる。
さらには、今回のレポートで報告したように、市場やステークホルダーの反応についても調査・分析が行われていることから、これらを踏まえて、どのような対応が図られていくのかも関心が高い事項となってくる。
いずれにしても、EIOPAによるLTG措置や株式リスク措置に関する報告書については、まずは2021年のLTG措置と株式リスク措置のレビューに向けて、毎年、その焦点となるトピックを変化させつつ、公表されていくことになる。報告年数を重ねていく中で、より詳細な情報が収集・蓄積されていくことで、これらをベースにした各国の監督当局やEIOPAによる分析も、より充実した安定的で信頼性のあるものへと高度化されていくことが期待されることになる。
年次の経過とともに、さらには市場環境の変化に対応して、各種措置の適用状況やその影響の程度がどのように変化していくのか、これに対して各(再)保険会社や保険グループ及び各国の監督当局やEIOPAがどのように対応していくのか、そしてこれらを踏まえて、2021年のLTG措置と株式リスク措置のレビューがどのような形で行われていくことになるのかについては、多くの保険ステークホルダーが強い興味関心を持っている。
引き続きこうした状況を観察していくために、EIOPAによるLTG措置や株式リスク措置に関する報告書について継続的に注視していくこととしたい。
今回のEIOPAによる報告書は、ソルベンシーIIがスタートして1年間を経ての数値や状況に基づいている。2016年の報告書に続く2回目の報告書であることから、より内容の充実が図られ、さらには各種の措置が会社の財務状況に与える影響について、2016年の報告書との比較ができる形となっている。加えて、これらの措置が財務状況以外に与える影響についても、措置適用からの一定の経過を踏まえて、それなりの特徴が表れて、一定の判断に用いることができるものも示されてきている。
ただし、一方で、いまだ、各種措置の適用状況については、審査継続中や各社において適用検討中のケースもあり、逆に既存の措置の適用の見直しや中止を検討するようなケースもあったりして、今後も適用状況等については、さらに変化していく可能性が考えられるものとなっている。
また、今回の報告書においては、各種措置の取扱における各国のNSAsの間での取扱の差異や課題意識等の状況も公表されており、これらを踏まえて、今後各国のNSAsや各(再)保険会社・グループがどのように対応していくのかが注目されるところとなってくる。
さらには、今回のレポートで報告したように、市場やステークホルダーの反応についても調査・分析が行われていることから、これらを踏まえて、どのような対応が図られていくのかも関心が高い事項となってくる。
いずれにしても、EIOPAによるLTG措置や株式リスク措置に関する報告書については、まずは2021年のLTG措置と株式リスク措置のレビューに向けて、毎年、その焦点となるトピックを変化させつつ、公表されていくことになる。報告年数を重ねていく中で、より詳細な情報が収集・蓄積されていくことで、これらをベースにした各国の監督当局やEIOPAによる分析も、より充実した安定的で信頼性のあるものへと高度化されていくことが期待されることになる。
年次の経過とともに、さらには市場環境の変化に対応して、各種措置の適用状況やその影響の程度がどのように変化していくのか、これに対して各(再)保険会社や保険グループ及び各国の監督当局やEIOPAがどのように対応していくのか、そしてこれらを踏まえて、2021年のLTG措置と株式リスク措置のレビューがどのような形で行われていくことになるのかについては、多くの保険ステークホルダーが強い興味関心を持っている。
引き続きこうした状況を観察していくために、EIOPAによるLTG措置や株式リスク措置に関する報告書について継続的に注視していくこととしたい。
(2018年02月13日「保険・年金フォーカス」)
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中村 亮一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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