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2018年02月13日
EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(5)-EIOPAの報告書2017の概要報告-
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1―はじめに
これまでの4回のレポートでは、EIOPA(欧州保険年金監督局)が2017年12月21日に公表した「長期保証措置と株式リスク措置に関する報告書2017(Report on long-term guarantees measures and measures on equity risk 2017)」1に基づいて、EU(欧州連合)のソルベンシーIIにおける長期保証(Long-Term Guarantees:LTG)措置及び株式リスク措置に関しての保険会社の適用状況やその財務状況に及ぼす影響について、全体的な状況及び措置毎、国別、会社毎の状況の概要、及びLTG措置や株式リスク措置が直接的に会社の財務状況に与える影響以外の項目、具体的には、保険契約者保護、保険会社の投資、消費者及び商品、EU保険市場における競争と公平な競争の場、金融安定性に与える影響について報告してきた。
今回のレポートでは、報告書の第4のセクションに毎回のテーマ別の情報として記載されている項目である「LTG措置及び株式リスク措置に関する公衆開示」について報告する。
1 News https://eiopa.europa.eu/Pages/News/EIOPA-publishes-its-annual-analysis-on-the-use-of-long-term-guarantees-measures-and-measures-on-equity-risk-20-12-2017.aspx
報告書 https://eiopa.europa.eu/Publications/Reports/2017-12-20%20LTG%20Report%202017.pdf
今回のレポートでは、報告書の第4のセクションに毎回のテーマ別の情報として記載されている項目である「LTG措置及び株式リスク措置に関する公衆開示」について報告する。
1 News https://eiopa.europa.eu/Pages/News/EIOPA-publishes-its-annual-analysis-on-the-use-of-long-term-guarantees-measures-and-measures-on-equity-risk-20-12-2017.aspx
報告書 https://eiopa.europa.eu/Publications/Reports/2017-12-20%20LTG%20Report%202017.pdf
2―公衆開示の内容
1|調査概要
ソルベンシーIIは、MA(マッチング調整)、VA(ボラティリティ調整)、TRFR(リスクフリー金利に関する移行措置)、TTP(技術的準備金に関する移行措置)2を適用する保険及び再保険会社に、特に、措置の非適用の場合の財務状況に関する情報を公衆開示することを要求している。2017年5月、保険及び再保険会社は、SFCR(ソルベンシー財務状況報告書)の発行の一部として、初めてこれらの開示を行わなければならなかった。
EIOPAは、2017年の報告書のテーマとして、開示された情報の妥当性、理解可能性及び完全性、会社間の比較における有用性について評価した。この評価は、特にNSAs(National Supervisory Authorities:国家監督当局)に対し、最初の公衆開示についてのアンケートと、アナリスト、格付け機関、ジャーナリスト、消費者保護団体などの一般公開の主な受信者であるステークホルダーとのワークショップに基づいて行われた。
2 LTG措置や株式リスク措置の具体的説明については、「EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(1)-EIOPAの報告書2017の概要報告-」を参照していただきたい。
ソルベンシーIIは、MA(マッチング調整)、VA(ボラティリティ調整)、TRFR(リスクフリー金利に関する移行措置)、TTP(技術的準備金に関する移行措置)2を適用する保険及び再保険会社に、特に、措置の非適用の場合の財務状況に関する情報を公衆開示することを要求している。2017年5月、保険及び再保険会社は、SFCR(ソルベンシー財務状況報告書)の発行の一部として、初めてこれらの開示を行わなければならなかった。
EIOPAは、2017年の報告書のテーマとして、開示された情報の妥当性、理解可能性及び完全性、会社間の比較における有用性について評価した。この評価は、特にNSAs(National Supervisory Authorities:国家監督当局)に対し、最初の公衆開示についてのアンケートと、アナリスト、格付け機関、ジャーナリスト、消費者保護団体などの一般公開の主な受信者であるステークホルダーとのワークショップに基づいて行われた。
2 LTG措置や株式リスク措置の具体的説明については、「EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(1)-EIOPAの報告書2017の概要報告-」を参照していただきたい。
2|強制的な公衆開示内容に対するNSAsによる評価
(1)全体的な評価
NSAsは、公衆開示に関するこのテーマに焦点を当てる目的のために、詳細なアンケートに答えた。このアンケートに記載された質問に答えるために、NSAsは、市場における代表的な会社サンプルに基づいてSFCRを分析し、LTG措置又は株式リスク措置を用いている会社に焦点を置いた。
1つの例外を除いて、NSAsは、会社によって開示された情報の完全性と、そのソルベンシー目的で報告された情報との整合性に広く満足していた。
(2)情報の不整合性と不完全性
不整合又は不完全な情報に関する具体的なケースは10のNSAsによって観測された。ソルベンシー目的で報告された情報と開示された情報との間の不整合は、5つのNSAsで確認されたが、小規模の会社グループにおいてのみであった。不完全な情報もまた5つの NSAsによって確認された。
NSAsが、措置がSFCRの物語部分に記載されている方法の質に満足していない場合の具体的な考慮事項は、以下のとおりである。
・提供される情報の詳細レベルは、会社によって異なる。いくつかの会社は定量的な情報のみに焦点を当てていたが、他の会社はLTG措置の背景を含むさらなる質的情報を提供した。LTG措置の記述は、場合によっては非常に簡潔であることが観察され、措置の有効性のより良い理解を確実にするために、より包括的であるかもしれない。これには、措置の影響の提示が定量的な情報に限定された場合も含まれる。いくつかのNSAsによって、数値の詳細な説明なしにQRT S.22.01の量的情報のみを開示することが、否定的な例として特定された。
・個々のケースでは、2016年末に再び要件を満たす場合で、TTP無しで2016年第3四半期末のソルベンシー資本要件を満たしていないという事実について、会社が報告していなかった。これは、関連するNSAによって不十分と考えられた。別のケースでは、監督者がTTPの影響に関するより詳細な情報と説明を得ることができなかった。
・SFCRの要約は、1つのNSAのケースで、措置の適用及び影響に対処する上で、完全で十分であるとはみなされなかった。
(3)その他の観測事項
前回のレポートで報告したように、以下の状況が観測されている。
NSAsからのフィードバックは、LTG措置又は株式リスク措置の適用により、会社に対する過度の資本救済が観察された具体的な事例はまだない、としている。LTG措置と株式リスク措置が保険契約者保護に与える肯定的又は否定的な影響の具体的な観察はなかった。さらに、措置の適用が、NSAsが保険契約者保護に望ましいと考える監督措置を取ることを妨げた具体的なケースも、NSAsによって特定されなかった。
(1)全体的な評価
NSAsは、公衆開示に関するこのテーマに焦点を当てる目的のために、詳細なアンケートに答えた。このアンケートに記載された質問に答えるために、NSAsは、市場における代表的な会社サンプルに基づいてSFCRを分析し、LTG措置又は株式リスク措置を用いている会社に焦点を置いた。
1つの例外を除いて、NSAsは、会社によって開示された情報の完全性と、そのソルベンシー目的で報告された情報との整合性に広く満足していた。
(2)情報の不整合性と不完全性
不整合又は不完全な情報に関する具体的なケースは10のNSAsによって観測された。ソルベンシー目的で報告された情報と開示された情報との間の不整合は、5つのNSAsで確認されたが、小規模の会社グループにおいてのみであった。不完全な情報もまた5つの NSAsによって確認された。
NSAsが、措置がSFCRの物語部分に記載されている方法の質に満足していない場合の具体的な考慮事項は、以下のとおりである。
・提供される情報の詳細レベルは、会社によって異なる。いくつかの会社は定量的な情報のみに焦点を当てていたが、他の会社はLTG措置の背景を含むさらなる質的情報を提供した。LTG措置の記述は、場合によっては非常に簡潔であることが観察され、措置の有効性のより良い理解を確実にするために、より包括的であるかもしれない。これには、措置の影響の提示が定量的な情報に限定された場合も含まれる。いくつかのNSAsによって、数値の詳細な説明なしにQRT S.22.01の量的情報のみを開示することが、否定的な例として特定された。
・個々のケースでは、2016年末に再び要件を満たす場合で、TTP無しで2016年第3四半期末のソルベンシー資本要件を満たしていないという事実について、会社が報告していなかった。これは、関連するNSAによって不十分と考えられた。別のケースでは、監督者がTTPの影響に関するより詳細な情報と説明を得ることができなかった。
・SFCRの要約は、1つのNSAのケースで、措置の適用及び影響に対処する上で、完全で十分であるとはみなされなかった。
(3)その他の観測事項
前回のレポートで報告したように、以下の状況が観測されている。
NSAsからのフィードバックは、LTG措置又は株式リスク措置の適用により、会社に対する過度の資本救済が観察された具体的な事例はまだない、としている。LTG措置と株式リスク措置が保険契約者保護に与える肯定的又は否定的な影響の具体的な観察はなかった。さらに、措置の適用が、NSAsが保険契約者保護に望ましいと考える監督措置を取ることを妨げた具体的なケースも、NSAsによって特定されなかった。
3|提供される追加情報
(1)NSAs の期待
どのNSAも、ソルベンシーII委任規則第296条(2)の書簡d-g及び第297条(3)で要求された情報に加えて、LTG措置及び株式リスク措置に関するさらなる情報開示の具体的な期待については報告しなかった。しかし、いくつかのNSAsは、アンケートを回答した時点では、依然として提出物の質に関する評価を確定している過程にあったと述べた。したがって、措置に関する物語部分のさらなる情報の必要性に関する最終的な結論は、その後にしか得られないとした。このように、公衆開示の初年度として、2017年には何らの特別な期待は設定されていなかったが、これは将来NSAsによって再検討される可能性がある。
(2)NSAsによる分析
NSAsは、企業がLTG措置及び株式リスク措置に関して、実際に追加情報を開示したかどうかを分析した。
少数のNSAsだけが、流動性計画に関する情報、VAがゼロに設定された場合の措置、投資行動に対するVAの影響又は引受け契約に関する情報のような、VAに関する追加情報を特定した。個々の会社は、例えば、VAがビジネスライン毎の最良推定値に与える影響、VAの規模の変化がソルベンシー・ポジションに与える影響又は承認プロセスの詳細のような、さらなる情報を提供した。
移行措置が適用される加盟国のうちの半分において、NSAsは、計画の詳細、その措置への依存の記述、移行期のランオフに関する情報又は承認プロセスの詳細など、措置に関するさらなる情報を確認した。1つのNSAだけがMAに関する追加情報を特定した。会社がMAに関する詳細情報を提供した場合、技術的準備金、自己資本、SCR(ソルベンシー資本要件)などの貸借対照表項目への定量的影響を与えた後、MAの定量化についての説明を提供した。
補外に関しては、多くのNSAsが、異なるUFRをソルベンシー・ポジションに適用した場合の影響に対処する会社を特定した。
(1)NSAs の期待
どのNSAも、ソルベンシーII委任規則第296条(2)の書簡d-g及び第297条(3)で要求された情報に加えて、LTG措置及び株式リスク措置に関するさらなる情報開示の具体的な期待については報告しなかった。しかし、いくつかのNSAsは、アンケートを回答した時点では、依然として提出物の質に関する評価を確定している過程にあったと述べた。したがって、措置に関する物語部分のさらなる情報の必要性に関する最終的な結論は、その後にしか得られないとした。このように、公衆開示の初年度として、2017年には何らの特別な期待は設定されていなかったが、これは将来NSAsによって再検討される可能性がある。
(2)NSAsによる分析
NSAsは、企業がLTG措置及び株式リスク措置に関して、実際に追加情報を開示したかどうかを分析した。
少数のNSAsだけが、流動性計画に関する情報、VAがゼロに設定された場合の措置、投資行動に対するVAの影響又は引受け契約に関する情報のような、VAに関する追加情報を特定した。個々の会社は、例えば、VAがビジネスライン毎の最良推定値に与える影響、VAの規模の変化がソルベンシー・ポジションに与える影響又は承認プロセスの詳細のような、さらなる情報を提供した。
移行措置が適用される加盟国のうちの半分において、NSAsは、計画の詳細、その措置への依存の記述、移行期のランオフに関する情報又は承認プロセスの詳細など、措置に関するさらなる情報を確認した。1つのNSAだけがMAに関する追加情報を特定した。会社がMAに関する詳細情報を提供した場合、技術的準備金、自己資本、SCR(ソルベンシー資本要件)などの貸借対照表項目への定量的影響を与えた後、MAの定量化についての説明を提供した。
補外に関しては、多くのNSAsが、異なるUFRをソルベンシー・ポジションに適用した場合の影響に対処する会社を特定した。
4|措置の相対的影響についての情報
プロジェクトグループは、LTG措置と株式リスク措置を適用した会社が、当該措置の相対的な影響を開示しているかどうかに特に関心を示した。「LTG措置の適用なしでSCRはx%だけ変化する」などの情報を提供していた。
観察は国によって異なる。13のNSAs(措置が適用されていない国を含む)は、相対的な影響を開示している会社を観察しなかったのに対し、他のNSAsは、相対的な影響を概説する少数の会社を観察している。5つのNSAsは、市場の大きなシェア(を有する会社)が措置の相対的な影響を公表していたと報告した。
会社が措置の相対的な影響に対処した場合、典型的には、SCRやソルベンシー比率、そして時には自己資本と技術的準備金に対する措置の相対的な影響に言及していた。
プロジェクトグループは、LTG措置と株式リスク措置を適用した会社が、当該措置の相対的な影響を開示しているかどうかに特に関心を示した。「LTG措置の適用なしでSCRはx%だけ変化する」などの情報を提供していた。
観察は国によって異なる。13のNSAs(措置が適用されていない国を含む)は、相対的な影響を開示している会社を観察しなかったのに対し、他のNSAsは、相対的な影響を概説する少数の会社を観察している。5つのNSAsは、市場の大きなシェア(を有する会社)が措置の相対的な影響を公表していたと報告した。
会社が措置の相対的な影響に対処した場合、典型的には、SCRやソルベンシー比率、そして時には自己資本と技術的準備金に対する措置の相対的な影響に言及していた。
5|SFCRの要約についての情報
NSAsはまた、SFCRの要約(ソルベンシーII委任規則第292条)に、適用された措置への言及とその措置の影響に関する情報が含まれているかどうかについての情報を提供した。
移行措置を適用する会社は、殆どの場合、SFCRの要約において措置の適用について報告している。
VAに関しては、状況はあまり均一ではない。VAを適用している会社の約半数は、SFCRの要約でVAの適用について言及している。少数の会社しかVAを適用していない国では、VAは一般的に要約に記載されている。対照的に、VAの適用が一般的な国では、いくつかのケースで、要約ではVAの適用についてのみ言及されている。
MAが適用されている国でも実務は異なっている。ある国では、全てのMA適用会社が要約で措置の適用について言及しているが、他の国では、一部の会社のみが要約でMAの適用について言及している。
SFCRの要約において措置の適用に関する情報を提供した会社は、措置の影響に関する情報を必ずしも提供しなかった。全ての措置について、NSAsは、いくつかのケースにおいてのみ措置の影響についての言及を観測した。
NSAsはまた、SFCRの要約(ソルベンシーII委任規則第292条)に、適用された措置への言及とその措置の影響に関する情報が含まれているかどうかについての情報を提供した。
移行措置を適用する会社は、殆どの場合、SFCRの要約において措置の適用について報告している。
VAに関しては、状況はあまり均一ではない。VAを適用している会社の約半数は、SFCRの要約でVAの適用について言及している。少数の会社しかVAを適用していない国では、VAは一般的に要約に記載されている。対照的に、VAの適用が一般的な国では、いくつかのケースで、要約ではVAの適用についてのみ言及されている。
MAが適用されている国でも実務は異なっている。ある国では、全てのMA適用会社が要約で措置の適用について言及しているが、他の国では、一部の会社のみが要約でMAの適用について言及している。
SFCRの要約において措置の適用に関する情報を提供した会社は、措置の影響に関する情報を必ずしも提供しなかった。全ての措置について、NSAsは、いくつかのケースにおいてのみ措置の影響についての言及を観測した。
(2018年02月13日「保険・年金フォーカス」)
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経歴
中村 亮一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/02/06 | PRA(英国)やACPR(フランス)が2025年の監督・政策上の優先事項や作業プログラムを公表 | 中村 亮一 | 保険・年金フォーカス |
2025/02/03 | ドイツの責任準備金評価用最高予定利率を巡る動き-2025年から1.00%に引き上げられるとともにDAVは2026年の1.00%の水準維持を推奨- | 中村 亮一 | 保険・年金フォーカス |
2025/01/30 | EIOPAによる2024年保険ストレステストについて-EIOPAの結果報告書の概要- | 中村 亮一 | 保険・年金フォーカス |
2025/01/21 | EUにおけるソルベンシーIIのレビューを巡る動向2024-ソルベンシーIIの改正指令が最終化- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
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