2018年01月15日

景気ウォッチャー調査(17年12月)~現状は高水準を維持も、先行き懸念高まる~

白波瀨 康雄

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3.景気の先行き判断DI(季節調整値):家計・企業・雇用関連の全分野で悪化

先行き判断DI(季節調整値)は52.7(前月差▲0.7ポイント)と2ヵ月連続で悪化した。DIの内訳をみると、家計動向関連(前月差+▲0.6ポイント)、企業動向関連(同▲0.6ポイント)、雇用関連(同▲1.1ポイント)と全ての分野で悪化した。
景気の先行き判断DI(季節調整値)/景気の先行き判断DI(分野別、季節調整値)
家計動向関連では、「客単価、購入点数の底堅い動きが続いている。また、高単価商材にも動きがあることから、消費者に若干の余裕が生まれているのではないか」(東北・コンビニ)など消費者の購買意欲の高まりに期待するコメントがみられた。一方、「ガソリン、灯油などの冬の暖房関連の価格上昇に加えて、青果物、水産物の価格上昇もあり、この冬の家計を圧迫する要因が強まっている。このため、今後の消費が上向くような状況にはない」(北海道・スーパー)など、エネルギー代や生鮮食品の価格上昇による消費の落ち込みが懸念されている。また、「中間層の需要の伸び悩みが懸念される。インバウンド需要、高額品の動きはみられるものの、ボリュームゾーンである中間層の購買が盛り上がりに欠ける。現在の景気が一過性のものに支えられている状況に鑑みると、今後の伸びは期待できず、厳しい状況が続く」(南関東・百貨店)など、消費の二極化が進んでいると指摘するコメントが目立った。

企業動向関連では、「欧州市場向けと東南アジア市場向けを中心に、オートバイ関連の受注が依然として堅調に推移している。当面は現状ベースの受注量となる見込みである。国内においても、産業機械分野からの受注が堅調であり、国内投資の好調さがうかがえる」(北陸・一般機械器具製造業)など、今後も好調な受注や設備投資の増加を見込む企業が目立った。一方で、「包装資材や小麦等原材料の値上がりを製品価格に転嫁することができず利益を圧迫すると推測する」(四国・食料品製造業)や「人手不足によってトラック配送の手配が難しく、他の運送会社への依頼費用も増えている。さらに、軽油価格も上昇しているため、厳しい状況に向かっている」(北陸・輸送業)など、コストの増加により収益が圧迫することを懸念するコメントが幅広い業種でみられた。また、「ますますトラック不足の影響が出てくると思われる。受注してもデリバリーの状況が悪ければ、今後の失注につながる」(近畿・金属製品製造業)や「売上が若干ではあるが増加傾向にあり、受注案件も増えているので出荷量は増加する。問題は搬送のトレーラー不足、特に運転手不足であり、出荷に影響が出る」(九州・鉄鋼業)など、輸送業の人手不足は、製造業の出荷が滞る原因にもなってきているようだ。

雇用関連では、「人手不足の改善傾向がみられないなか、賃金上昇に伴う人件費の増加と求人に掛かる経費の増加で求人意欲が低下している業種があり、今後の企業活動への影響が懸念される」(北海道・求人情報誌製作会社)と、採用活動や雇用後のコスト増加を懸念して求人活動に消極的になっている企業が存在するようだ。一方、「先行きの状況が大きく改善することは期待できない。ただし、以前から視野を広げて、高卒を含む新卒や、シニア、女性などの採用を模索する地場企業も少しずつ増えてきており、成果も出てきている」(東北・人材派遣会社)など、労働力確保のため採用に当たって門戸を広く開いている企業もみられる。


景況感は高水準で推移しているが、先行きは2ヵ月連続で悪化し、物価上昇に伴う消費の落ち込みやコスト上昇による収益悪化など、懸念が高まっている。企業の受注は好調だが、人手不足により十分に対応できない状況が続いている。特に、輸送業の人手不足は、製造業の出荷にも悪影響を与えている。雇用環境は改善しており、企業活動も活発なことから、景況感のD.I.が50を下回るほど悪化する可能性は低いが、一段と景況感が改善するハードルは高く、今後は横ばい圏での推移が続きそうだ。
 
 

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白波瀨 康雄

研究・専門分野

(2018年01月15日「経済・金融フラッシュ」)

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