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EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットについてのCPを公表(1)-欧州委員会に対する助言内容-
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(1)欧州委員会からの助言要求内容
委任法は、標準式の中で、多くの計算に対して簡素化を提供しているが、例えば、損害解約リスクサブモジュールと損害カタストロフィリスクサブモジュールについては、簡素化は提供されていない。
EIOPAは次のことを求められる:
・既存の簡素化の現在の使用に関する情報、及び必要に応じて、これらの簡素化が使用されない理由についての情報を提供する。
・要件の比例的適用を強化する必要性を念頭に置いて、全ての標準式の計算に、簡単で容易に適用できる方法を提供するために、既存の簡素化の改善を提案し、さらなる簡素化のための方法と基準を探索し提案する。
また、カウンターパーティデフォルトリスクモジュール及び損害カタストロフィリスクサブモジュールは、複雑な計算を必要とする。
EIOPAは次のことを求められる:
・これらのモジュールに関連する資本要件の相対的重要性に関する情報を提供する。
・この複雑さが、特に中小会社の場合に、リスクの性質、規模及び複雑さに比例するかどうかを評価する。
・必要に応じて、既存のスコープを尊重しながら、これらのモジュールのより簡単な構造の提案を作成する。
(2)EIOPAの助言
健康カタストロフィリスクに関しては、「10年続く障害」シナリオの適用が困難なため、このシナリオを削除することを提案している。結果として、大量事故リスクと集中リスクは、災害死亡、永久障害、1年間の障害、医療費の4つのシナリオにのみ依存することになる。
これらの4つのシナリオの較正については変更しないことが提案された。
4.5.3.EIOPAの助言
大量事故のリスク
282.「10年続く障害」シナリオの適用に関する困難さのため、このシナリオを削除することが提案される。結果として、大量事故リスクと集中リスクは、災害死亡、永久障害、1年間の障害、医療費の4つのシナリオにのみ依存する。
283. 10年障害シナリオを削除し、初期データと以前のCEIOPS較正との整合性を保つため、以下が提案される。
・10%の災害死亡シナリオと30%の医療費シナリオを変更しない。
・簡素化のために完全永久障害のみがモデル化される場合であっても、世界貿易センターのデータと整合的であるように見える恒久的な障害シナリオについては3.5%を維持する。
・グローバルな60%の負傷者前提に固執するため、一時的(1年)の障害シナリオでは16.5%を維持する。
284.結果は、以前の較正において10年の障害シナリオの影響を受けていた人々は、今や1年の障害シナリオ(多数派)又は永久障害(少数派)の対象となっている。
285.次の表はこの新しい較正を要約したものである。
(1)欧州委員会からの助言要求内容
この項目に対する要求内容は、「4|健康カタストロフィリスク」に対するものと同一であるため、ここでは省略する。
(2)EIOPAの助言
人為的なカタストロフィリスクについて、EIOPAは簡素化された方法が利用可能であるべきであることに同意した。
火事リスクサブモジュールに関しては、既存アプローチが適切なアプローチであるとして、これがデフォルトのままであることを勧告している。ただし、既存の方法には多くの困難が存在しているとして、エクスポジャーアドレスを中心とした半径200m以内の最大のリスク集中を識別し、簡素化された計算として、少なくとも考慮すべき建物の数を、最小限のリスクタイプごとの上位5つのエクスポジャー(住宅、商業、工業)に減らすことを可能にすることを勧告している。
海上リスクサブモジュールに関して、EIOPAは、「タンカー」のシナリオを「船舶」に変更して、あらゆる発生源に起因するリスクを認めることを提案している。
なお、自動車損害賠償責任リスクのサブモジュールについては、今回EIOPAは変更を勧告していない。
EIOPAは、海上、火災及び航空リスクのサブモジュール内での最大のリスクエクスポジャーの特定化は、その再保険のカバーが、エクスポジャーの大きさに基づいて、会社のポートフォリオ内のエクスポジャーの相対ランキングを変更する場合に再保険後で行われるように変更する、ことを勧告している。
5.4.火事リスクサブモジュール
5.4.2.3.EIOPAの助言
306. EIOPAは、既存の方法が適切なアプローチであると考えており、これがデフォルトのままであることを勧告している。
307.しかし、現在の方法には多くの困難が存在することも認識されているため、EIOPAは委任規則第88条の枠組みの下で簡素化された計算を利用可能にすべきであると勧告している。
308.この点に関して、EIOPAは、エクスポジャー住所周辺の半径200m以内の最大のリスクを特定するために、簡素化された計算として、考慮すべき建物の数を最小限-リスクタイプ毎(住宅、商業、工業)に上位5つのエクスポジャー-に減少させることを認めることを勧告している。
5.5.海上リスクサブモジュール
5.5.2.3.EIOPAの助言
320. EIOPAは、SCRがあらゆる供給源、バルカー(ばら積み貨物船)、コンテナ船、RO-RO船、クルーズ船、漁船から発生することを認めるために、「タンカー」シナリオを「船舶」タイプに置き換えるため、委任規則第130条の下での変更を提案する。これは、グローバルな船舶に保険をしていない中小会社のニーズに、より良く適合する。
321.タンカー特有のシナリオから任意の船種への変更は、式に複雑さを加えることなく、海上事業を行う全ての保険会社が含まれる。
322.導入された臨界値(保証された最大船体価値が100,000ユーロ未満の場合、SCRvesselに関して何らの考慮も計算される必要がない)は、プレジャーボートや複合艇(RIB)などの非常に低いエクスポジャーが 海上リスクSCRに入り込むのを防ぐ。
323.全ての船舶は公害責任エクスポジャーの可能性があるため、タンカー以外の式を変更する必要はない。
5.7.再保険後ベースリスクサブモジュールの総額に対する最大人為的カタストロフィエクスポージャーの特定
5.7.2.3.EIOPAの助言
352. SCRレビューテスト中に議論された全ての側面を考慮した上で、EIOPAは、海上、火災及び航空リスクのサブモジュール内での最大のリスクエクスポジャーの識別が、エクスポジャーの規模に基づいて、再保険カバーが会社のポートフォリオ内のエクスポジャーの相対ランキングを変更する場合の再保険後で行われるように変更されることを勧告する。例えば、任意保障。
353. EIOPAは、これがリスク感応度の増加と標準式の複雑さとの間の適切なバランスを取ると考えている。EIOPAは、これにより、大部分のケースでSCR計算内の歪みが除去されると期待している。
354.しかし、歪みが持続する再保険プログラムの例が存在する可能性があることに留意する。これらの場合、会社は、総エクスポジャー量に基づいて、海上、火災及び航空リスクのサブモジュール内で最大のエクスポジャーの識別を行う。会社は、ORSA(リスクとソルベンシーの自己評価)を通じてそれぞれの問題を強調し、責任のある監督当局と調整して、原則の一貫性と調和のとれた適用を確実にしなければならない。
(2017年12月12日「基礎研レポート」)
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