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米国財務省がノンバンクSIFIの指定プロセスに関する覚書を公表-ノンバンクSIFI指定プロセスの改善方法を勧告-
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1―はじめに
今回、米国財務省は、この報告書も踏まえて、2017年11月17日に「FSOC(金融安定監督評議会)のノンバンク金融会社及び金融市場ユーティリティ2の指定プロセスに関する大統領への覚書」(以下、「大統領宛覚書」又は「覚書」という)4を公表1し、ノンバンクSIFIの指定プロセスを改善する方法を勧告した。
今回のレポートでは、このノンバンクSIFIの指定に関する大統領宛覚書の内容について報告する。
1 https://www.treasury.gov/press-center/press-releases/Documents/A-Financial-System-That-Creates-Economic-Opportunities-Asset_Management-Insurance.pdf
2 金融市場ユーティリティ(Financial Market Utilities:FMUs)は、金融機関間又は金融機関とそれらのシステムの間の移転、決済及び支払設定、有価証券及びその他の金融取引に不可欠なインフラストラクチャーを提供する多国間システムである。
3 なお、この覚書のタイトルは「米国大統領への報告書 2017年4月21日発行の大統領覚書に従って FSOC(金融安定監督評議会)指定」となっている。
4 https://www.treasury.gov/press-center/press-releases/Pages/sm0218.aspx
2―今回の大統領宛覚書の概要
1|今回の覚書の位置付け
今回の覚書は、財務省に対してFSOCの指定手続きの評価と勧告を指示した2017年4月21日に発行された大統領覚書(Presidential Memorandum)に対応している。財務省は、この大統領覚書に応えて、ノンバンク金融会社と金融市場ユーティリティの両方についてFSOCのプロセスを改善する方法を勧告している。
Steven T. Mnuchin財務長官は、「私たちの勧告では、ノンバンクや金融市場ユーティリティを指定するためのFSOCのプロセスを改善するためのいくつかの方法を特定している。」、「私たちの勧告には、FSOCの分析プロセスの強化、コストベネフィット分析の実施、透明性の向上が含まれる。」と述べている。
財務省は、FSOCの指定プロセスによって達成されるべき政策目標として、以下の5つを特定している。
(1) 主たる金融規制機関の専門知識の活用
(2) 市場規律の促進
(3) 会社間の平等な競争の場の維持
(4) 負担を最小限にするための適切な調整
(5) FSOCの指定分析の厳密性・明確性・透明性
ノンバンク金融会社の指定については、財務省は、「FSOCが活動ベース又は業界全体のアプローチを重視するプロセスを通じて、金融安定性に対するリスクに対処するその取組みを優先する」ことを勧告している。
財務省は、FSOCが、以下の3つのステップが含まれる、金融の安定性に対する潜在的なリスクを評価し対処するプロセスを実施する、ことを勧告している。
(1) 活動と商品からの金融安定性に対する潜在的なリスクをレビュー
(2) 金融安定性に対する特定された潜在的なリスクに対処するために関係規制当局と協力
(3) 関係規制当局との協議の後にのみ、特定の会社の指定を検討
具体的には、ノンバンク金融会社指定プロセスの分析プロセス、関与、透明性を強化するために、FSOCに対して、以下の勧告を行っている。
(1) 分析の一環として、FSOCが会社の重大な財務的苦境の可能性を評価するようガイダンスを改訂すべき
(2) 分析の一環として、FSOCがコストベネフィット分析を実施するようガイダンスを改訂すべきであり、予想される金融上のベネフィットが指定のコストを上回る場合にのみ会社を指定すべき
(3) レビュー中のノンバンク金融会社及び主たる金融規制当局とのコミュニケーションを強化すべき
(4) 指定されたノンバンク金融会社に対して、明確な「オフランプ(出口車線)」を提供し、毎年の再評価のためのより強固で透明なプロセスを採用すべき
金融市場ユーティリティ(FMU)の指定については、以下の点を勧告している。
(1) FSOCが分析の厳格さ、関与、プロセスの透明性を改善し、指定プロセスが個別化され、適切に調整されることを確実にするために、重要な強化を加えるべき
(2) FSOCは、FMUの運営、指定、破綻処理に関連する重要な問題について引き続き検討すべき
(3) FSOCはコストベネフィット分析をFMU評価プロセスに組み込むことを検討すべき
財務省のプレスリリース資料は、以下の通りである。
2017年11月17日
財務省は、FSOCのノンバンク金融会社及び金融市場ユーティリティの指定プロセスに関する大統領宛の覚書を発表
ワシントン - 米国財務省は本日、金融安定監督評議会(FSOC)の指定プロセスの見直しに関する覚書を大統領に提出した。財務省は、2017年4月21日の大統領覚書に応えて、ノンバンク金融会社と金融市場ユーティリティの両方についてFSOCのプロセスを改善する方法を勧告している。本日発表された覚書は、財務省に対し、FSOCの指定プロセスの評価と勧告を指示した2017年4月21日に発行された大統領覚書に対応している。
「私たちの勧告では、ノンバンクや金融市場ユーティリティを指定するためのFSOCのプロセスを改善するためのいくつかの方法を特定している。」とSteven T. Mnuchin財務長官は述べている。「私たちの勧告には、FSOCの分析プロセスの強化、コストベネフィット分析の実施、透明性の向上が含まれる。」
財務省は、FSOCの指定プロセスによって達成されるべき5つの政策目標を特定している。これには、主たる金融規制機関の専門知識を活用すること、市場規律を促進すること、会社間の平等な競争の場を維持すること、負担を最小限にするための適切な調整、FSOCの指定分析が厳密かつ明確で透明であることを確実にすること、が含まれている。
ノンバンク金融会社の指定については、財務省は、FSOCが活動ベース又は業界全体のアプローチを重視するプロセスを通じて、金融安定性に対するリスクに対処するその取組みを優先する、ことを勧告している。財務省は、FSOCが3つのステップが含まれる金融の安定性に対する潜在的なリスクを評価し対処するプロセスを実施することを勧告している。これらは、活動と商品からの金融安定性に対する潜在的なリスクをレビューすること、金融安定性に対する特定された潜在的なリスクに対処するために関係規制当局と協力すること、そして関係規制当局との協議の後にのみ、特定の会社の指定を検討すること、である。
財務省は、FSOCのノンバンク金融会社指定プロセスの分析プロセス、関与、透明性を強化するために、以下の勧告を行う。
・FSOCは、分析の一環としてFSOCが会社の重大な財務的苦境の可能性を評価するようガイダンスを改訂すべきである。
・FSOCは、分析の一環としてFSOCがコストベネフィット分析を実施するようガイダンスを改訂すべきであり、FSOCは、予想される金融上のベネフィットが指定のコストを上回る場合にのみ会社を指定すべきである。
・FSOCは、レビュー中のノンバンク金融会社及び主たる金融規制当局とのコミュニケーションを強化すべきである。
・FSOCは、指定されたノンバンク金融会社に対して、明確な「オフランプ(出口車線)」を提供し、毎年の再評価のためのより強固で透明なプロセスを採用すべきである。
金融市場ユーティリティ(FMU)に関して、財務省は、FSOCが分析の厳格さ、関与、プロセスの透明性を改善し、指定プロセスが個別化され、適切に調整されることを確実にするために、重要な強化を加えることを勧告している。さらに、FSOCは、FMUの運営、指定、破綻処理に関連する重要な問題について引き続き検討すべきである。財務省は、FSOCがコストベネフィット分析をFMU評価プロセスに組み込むことも検討することを勧告している。
(2017年12月04日「保険・年金フォーカス」)
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