2017年11月14日

IAISがICS(保険資本基準)に関する今後の実施計画を公表-ICS Version 2.0は2段階方式で実施へ-

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3|合算法(Aggregation Method)の検討
IAISは、連結法(Consolidated Method)ではなくて、米国が主張する合算法5について検討することにしている。

米国において、NAIC(全米保険監督官協会)とFRB(連邦準備制度理事会)は、FIO(連邦保険局)の支援を得て、グループ資本計算のための合算法を開発している。これを受けて、IAISは、これはICS Version 2.0の一部ではないが、この開発の意義を高く評価し、合算法の開発を支援する「関心のある管轄区域」からのデータを収集する、こととしている。

このアプローチを通じて、IAISは、モニタリング期間の終わりまでに、合算法がICSに匹敵する、すなわち実質的に同じ(最終目標の意味で)結果を提供するかどうかを評価することを目指す、としている。結果的にそのように評価されれば、それはPCRとしてICSを実施するための結果同等のアプローチと考えられることになる。
 
5 連結法は連結ベースの貸借対照表等に基づいて算出するのに対して、合算法はグループを構成する単体のSCRや自己資本を合算することで算出する。
4|各国監督当局のコメント(IAISのプレスリリースに基づく)
NAIC(全米保険監督官協会)会長であるTed Nickel氏は、この合意を「多くのギブ・アンド・テークによって達成された顕著な成果」と呼んだ。

日本の金融庁国際政策管理官である太田浩氏は、「メンバーは時には異なる意見を表明しているが、前を向きつつ、保険市場がより安定的で弾性的であることを助けるという私たちの目標は同じであった。」と述べた。

EIOPA(欧州保険年金監督局)議長であるGabriel Bernardino氏は、この合意は「この合意は、我々が前進するために必要としていた明快さを達成している。最終目標に達した時に、クアラルンプールで締結された協定をICSの開発における重大な分岐点の瞬間として振り返ることになる。」と述べた。
5|IAISのプレスリリースの内容 
IAISのプレスリリースの具体的内容は、以下の通りである3

2017年11月2日
IAISはICS Version 2.0のコンバージェンスへの統一された道筋を発表
実施計画に同意する。次は究極の目標に向かって進む。

クアラルンプール、マレーシア - 保険監督者国際機構(IAIS)は、単一のICSの最終目標を促進するために、グループの資本基準のコンバージェンスへの統一された道筋を発表した。この重要な合意は、実際にICS Version 2.0の導入が意味することをより明確にするために、加盟国及び利害関係者からの要請に応えている。IAIS執行委員会の議長であるVicky Saporta氏は、次のように述べている。「IAISは、この合意に達することによって、グループソルベンシーの監督上の議論のための共通言語の作成を目指している。私たちは、メンバーの優先事項を反映し、最終目標を達成するために大きな進展を遂げた。」

IAISは、ICS Version 2.0の実施が2つの段階、すなわち5年のモニタリング段階とそれに続く実施段階に分かれて実施されることに合意した。ICS Version 2.0の実施にも、同様に重要な2つの構成要素がある。第1は、全てのIAIGsによる参照ICSの義務的な機密報告である。第2は、グループ全体の監督者のオプションによる追加の報告である。IAISは、さらに、米国のメンバーからの合算ベースのグループ資本計算の開発の発表に続いて、合算法(Aggregation Method)がICSに対して同等の結果をもたらすかどうかをモニタリング期間の終わりまでに評価するために、データを収集することに同意した。

ウィスコンシン州(米国)保険コミッショナーで全米保険監督官協会(NAIC)会長のTed Nickel氏は、次のように述べている。「これは多くのギブ・アンド・テークによって達成された顕著な成果である。夜明け前が常に最も暗いと言われているが、Version 2.0でこの道を進むことで、私たちは夜明けを迎える。今後の重要な作業の一部であり続けることを楽しみにしている。」

日本の金融庁国際政策管理官でIAIS執行委員会の副委員長である太田浩氏は、次のように述べている。「異なる経済や社会から来ているにもかかわらず、今回の合意により、私たちは再び我々のメンバーが偉大なことを成し遂げるためにいかに一体となることができるのかを示した。 メンバーは時には異なる意見を表明しているが、前を向きつつ、保険市場がより安定的で弾性的であることを助けるという私たちの目標は同じであった。」

欧州保険年金監督局(EIOPA)の議長であるGabriel Bernardino氏は、次のように述べている。「この合意は、我々が前進するために必要としていた明快さを達成している。最終目標に達した時に、クアラルンプールで締結された協定をICSの開発における重大な分岐点の瞬間として振り返ることになる。」

クアラルンプール合意の詳細を含むさらなる情報については、IAISのウェブサイト又はこちらをクリックのこと。

6|IAISのICS Version 2.0の実施に関する資料の内容 
IAISのICS Version 2.0の実施に関する資料の具体的内容は、以下の通りである3

2017年11月2日
ICS Version 2.0の実施

拡大フィールドテストのための保険資本基準(ICS)Version 1.0の開発とそれに先立つフィールドテストの年に、IAISは、国際的に活動する保険グループ(IAIGs)の本社が所在する管轄区域にわたるソルベンシー・レジームの共通点と相違点を学び評価する機会を得た。ICSが規制資本要件(PCR)として実施されるためには、考慮すべき多くの実務的な実施問題がある。IAISは、利害関係者が2019年のフィールドテストの完了後にICSの実施が実際に何を意味するかをより明確にするよう求めている、ことを認識している。

IAISは、ICS Version 2.0の実施が2つの段階で行われることに合意した。

1.「モニタリング期間」と呼ばれる第1段階では、グループ全体の監督者への機密情報の報告と、監督カレッジにおける議論に、ICS Version 2.0が使用される。この段階では、ICSはPCRとして使用されない(つまり、ICSの結果は監督上の処分のトリガーとして使用されない)。これにより、グループ全体の監督者及びホスト監督者は、既存のグループ資本基準又は開発中の計算と比較して、ICSを議論し評価することが可能になる。モニタリング期間は5年間続く。

2.第2段階は、「グループ全体のPCRとしてのICSの実施」である。

IAISは、グループ資本基準間のグローバルなコンバージェンスを強化するために、グループソルベンシーの監督上の議論のための共通言語を作成するためのICSの開発に着手した。ICS(Version 1.0、Version 2.0及び最終目標)の開発の目標を設定することは、このコンバージェンスプロセスに対して慎重に検討された段階的アプローチを取る必要があることを示した。ICS Version 2.0の実施に2段階のアプローチをとるという決定は、この段階的なコンバージェンスプロセスのさらなる実証である。

ICS Version 2.0の実施には、同様に重要な構成要素が2つある。

・全てのIAIGsによる、市場調整評価(MAV)、資本要件の標準式及び適格資本リソースのための収束基準に基づく参照ICS(reference ICS)の義務的な機密報告、そして

・グループ全体の監督当局のオプションによる、GAAP plus評価及び/又は内部モデルに基づく資本要件計算に基づくICSの追加報告

参照ICSは、モニタリング期間中、時間をかけて、IAIGs間の比較のための基礎を提供する。参照ICSには、解決できない問題に対する限られた数の国の裁量が含まれている。国の裁量が使用される場合、これらの国の裁量の影響は調和可能でなければならない。

参照ICSと、ICS Version 2.0内のグループ全体の監督者のオプションによる追加報告は、同様に重要な構成要素である。GAAP Plusと内部モデルの両方は、モニタリング期間の終わりまでにICSに含めることが検討される実行可能なオプションである。GAAP Plusの評価は、管轄区域に適用される異なるGAAPに基づいており、それらのいくつかは翌年には変更される可能性がある。参照ICSのためのMAVの選択は、IAISが開発した安定した比較可能な評価基準としての構築によるものである。

同時に、米国は規制レジームにおいて重要かつ意味のある発展を公表している。NAICと連邦準備制度理事会はどちらも、連邦保険局の支援を得て、グループ資本計算のための合算法を開発している。IAISは、合算法がまだ開発の初期段階にあることを認識している。IAISは、合算法の開発に関連する関係管轄区域からのデータを収集することに合意した。これはICS Version 2.0の一部ではないが、IAISはこの開発の意義を高く評価し、合算法の開発を支援する関係管轄区域からのデータを収集する。このアプローチを通じて、IAISは、モニタリング期間の終わりまでに、合算法がICSに匹敵する、すなわち実質的に(最終目標の意味で)同じ結果を提供するかどうかを評価するポジションにあることを目指している。そうであれば、それはPCRとしてICSを実施するための結果同等のアプローチと考えられる。

全体として、この段階的なアプローチは、世界中のIAIGsのグループ全体の監督のための比較可能な結果を提供するという最終目標への共同対応を可能にする。

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中村 亮一

研究・専門分野

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