2017年11月07日

EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第1の助言セットを欧州委員会に提出

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6|会社及びグループ固有のパラメータ(Undertaking Specific Parameter USP & Group Specific Parameter GSP)の適用状況の評価等
監督上の承認が与えられる前に満たされなければならない、使用されるデータの完全性、正確性及び妥当性に関する基準、さらには、引受リスクモジュールの追加パラメータを置き換えるための標準化された方法については、現在の基準や方法が適切であり、修正する必要はない、としている。

一方で、EIOPAは、ストップ・ロス条約の場合に適用される非比例再保険のための調整係数の計算のための新しい標準化された方法を助言している。

また、EIOPAは、解約リスクに関するUSPに対して利害関係者が提案した方法論をさらに検討し、2018年2月までに最終的な助言を提供する予定である、としている。

さらに、特定のパラメータに基づいて構築されたGSPを計算する追加的方法の評価については、USPの標準化された方法はリスクの標準偏差を提供するので、グループレベルのリスクプロファイルを反映しないため、USPを用いてGSPを構築することは適切ではない、としている。

なお、NSAs(国家監督当局)によって承認されたUSPの数は、以下の通りとなっている。
(1)損害保険保険料リスクの標準偏差    47
(2)損害保険責任準備金リスクの標準偏差  34
(3)非比例再保険の調査ファクター      2

また、GSPに関しては、6つのグループが承認を受けている。

保険会社及び(再)保険会社によるUSPの使用に関する情報
299. 以下の表は、NSAsによって承認されたUSPの概要を提供している。
  (表は省略)

300. GSPに関しては、GSPが承認された6つのグループがある。そのうちの2つについては、医療費、自動車責任及びその他の自動車保険の保険料リスクと責任準備金リスクの標準的なパラメータの両方が、グループ固有のパラメータに置き換えられた。残りのグループについては、保険料リスクと医療費に対するGSPが承認された。もう1つは援助事業のための保険料リスクのGSPが承認された。他の2つは、異なるビジネスラインで保険料リスクと責任準備金リスクに対して9つのGSPが承認された。

監督上の承認が与えられる前に満たされなければならない、使用されるデータの完全性、正確性及び妥当性に関する基準の評価
301. EIOPAはデータ基準を適切と見なし、欧州委員会にそれらの修正を助言するものではない。

引受リスクモジュールの追加パラメータを置き換えるための標準化された方法の評価
302. EIOPAは現在の標準化された方法を適切と見なし、欧州委員会に修正するよう助言するものではない。

303.新しいリスクのための標準化された方法を開発する可能性に関して、一部のステークホルダーは、死亡率、長寿及び解約リスクのためのそのような方法の開発を提案している。EIOPAは、解約リスクに関するUSPに対して利害関係者が提案した方法論をさらに検討し、2018年2月までに最終的な助言を提供する予定である(CP:ステークホルダーから提案された方法は、EIOPAによって適切でないと評価されているため、この段階では、欧州委員会に助言される新しい標準化された方法は提案されていない)。

非比例再保険のための具体的なパラメータの計算のための代替方法
304.EIOPAは、非比例再保険のための調整係数の計算のための新しい標準化された方法を助言する。

305.この新しい標準化された方法は、ストップ・ロス条約の場合に適用される。方法の詳細については第307項を参照のこと。

特定のパラメータに基づいて構築されたグループ固有のパラメータを計算する追加的方法の評価
306.USPの標準化された方法はリスクの標準偏差を提供するので、グループレベルのリスクプロファイルを反映しないため、USPを用いてGSPを構築することは適切ではない。

7|繰延税金の損失吸収能力(LAC DT)の現状分析
この項目への助言要求に対する第1の助言セットにおける回答では、EIOPAは欧州委員会からの情報要求に対応しているだけである。

EIOPAは、監督当局のコンバージェンスに取り組み続け、必要があると認められる場合には、助言要求に対する第2の助言セットの回答において、委任規則の変更等について助言するとしている。

なお、以前のレポートでも述べたが、LAC DTに関しては、報告書の中で、その実態等に関する詳細な現状分析が行われている。

4―まとめ

4―まとめ

以上、EIOPAが欧州委員会に提出した「ソルベンシーII委任規則の特定項目のレビューに関する第1の助言セット」について、その概要を報告してきた。

保険年金フォーカス「EIOPAのソルベンシーIIレビューに関するCPに対する反応-欧州保険業界団体からの意見-」(2017.9.11)で報告したとおり、CPに対しては保険業界団体Insurance Europeから、かなり批判的な意見も提出されていたが、今回の報告書では、これらの意見を踏まえて、一部修正が行われている。ただし、それでも保険業界団体からの基本的なニーズには十分には応えきれていないものとなっている。今回の報告書の公表を受けて、このレポートの作成時点(2017.11.7)において、Insurance Europeからの声明は出されていない。

今後、欧州委員会等での議論が行われ、最終的には2018年2月末までに助言内容が確定していくことが予定されている。さらに、EIOPAの第2の助言セットは、2018年2月までに欧州委員会に提出される予定である。

以前のレポート「EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第1の助言セットについてのCPを公表(2)-政策オプションの影響評価-」(2017.8.22)で述べたように、保険会社の観点からは、これらの第2の助言セットで取り扱われる項目に関する助言内容に、より関心が高いように想定される。

ソルベンシーIIのレビューを巡る動向については、今後の国際的な保険資本規制の検討等にも影響を与えていくことも想定されることから、引き続き注視していくこととしたい。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2017年11月07日「基礎研レポート」)

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レポート紹介

【EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第1の助言セットを欧州委員会に提出】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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