2017年11月07日

EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第1の助言セットを欧州委員会に提出

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4|リスク軽減技術の評価とそれに対する考え方の明確化
EIOPAは、保険会社が新たなリスク軽減契約を締結し、その契約を(完全又は部分的に)解消するか又はヘッジポジションの変動を反映するために相殺契約を締結する「エクスポージャー調整」について、例えば、以下の考え方を明確化している。

・リスク軽減技術の週1回のエクスポージャー調整は、SCR標準式におけるリスク軽減技術の認識を妨げてはならない。

・あらかじめ定義された例外的なエクスポージャー調整を補完する可能性があるべきである。

・SCR標準式計算で認識される取引所で取引される先物及びその他の金融商品に対しては、少なくとも月次契約を使用しなければならない。

・取引所で取引されていない金融商品については、契約開始時の満期は少なくとも1ヶ月でなければならない。

・再保険契約又は特別目的ビークルの開始時の満期は、少なくとも3ヶ月でなければならない。

さらには、SCRに違反している再保険会社との再保険の認識に関する取扱の考え方を示している。

ローリングヘッジ
(CPにおける以下の317項は削除)
(317.以下、「エクスポージャー調整」という用語は、保険会社が新たなリスク軽減契約を締結し、その契約を(完全又は部分的に)解消するか、又はヘッジポジションの変動を反映するために相殺契約を締結する状況を意味する(例えば、より多くの株式Xが購入されたため、株式Xに対する追加の短期の先物契約を結ぶこと)。)

221.委任規則第211条及び第212条に規定されているリスク軽減技術の週1回のエクスポージャー調整は、SCR標準式におけるリスク軽減技術の認識を妨げてはならない。新しい事実が現れない限り、EIOPAはより頻繁な調整が可能ではないと考えている。

222.また、あらかじめ定義された例外的なエクスポージャー調整を補完する可能性があるべきである(例えば、為替レートの5%を超える日々の変化の場合)。

223. EIOPAは、2018年2月の最終的な助言において、エクスポジャー調整を構成するものについてさらに明確にする。

224. SCR標準式計算で認識される取引所で取引される先物及びその他の金融商品に対しては、少なくとも月次契約を使用しなければならない。

225.取引所で取引されていない金融商品については、契約開始時の満期は少なくとも1ヶ月でなければならない。

226.再保険契約又は特別目的ビークルの開始時の満期は、少なくとも3ヶ月でなければならない。

227.委任規則第211条及び第212条に含まれるリスク軽減手法については、異なる満期の契約に変更しても、第320項から第322項に記載されている満期に関する要件が満たされている限り、SCR標準式における認識を妨げてはならない。

委任規則第2条第2項(3)(現実的な再建計画)
228.会社は、SCR標準式の計算において、以下に規定されている期間に対するさらなる条件なしに、委任規則第211条第3項に規定された減額要因を用いてSCRに違反している再保険会社との再保険を認識することが認められるべきである。MCRに違反した場合には、何らの認識も認められない。

229.第326項及び第327項に規定されているさらなる制限に従うことを条件に、認識はSCR違反が開示されてから最長で6ヶ月間認められるべきである。

230.再保険会社がSCRを再び遵守していることが第325項で述べられている期間の終了前に明らかな場合、当該規定はもはや適用されず、再保険は完全に再認識される。

231. 第320項で言及された期間が終了する前に、再保険会社が現実的な再建計画を提出しなかったか、又はSCR違反発生後6ヶ月以内に遵守を回復できないことが明らかになった場合、再保険は認識されるべきでない。

232.遵守不履行の開示後の遅くとも6ヶ月で、SCR違反が発生した後6ヶ月以内に遵守が回復したのかどうかが明確になる。SCRへの遵守が回復した場合、特別な規則は必要ない。それ以外の場合は、再保険は認識されない。

(CPにおける以下の329項は削除)
(329.再保険会社がSCR違反の日付を開示し、この日付が開示日前にある場合には、第325項で定義されている部分認識の期間が短縮されるべきかどうかはさらに検討される。)

不利な進展のカバー
233. EIOPAは、特定のタイプの非比例再保険である不利な進展のカバーについてのさらなる分析を実施する予定である。 EIOPAは、2018年2月までに委員会への最終的な助言の中で、これらのカバーが標準式で認識されるべきかどうか、もしそうであれば、どのように、についてのスタンスを決める。

5|ルックスルー・アプローチの適用拡大
「投資ビークル」への投資については、「形式よりも実質」の原則が適用されるべきとの考え方に基づき、ルックスルー・アプローチの適用は、一定の条件を満たす「投資関連会社」にまで拡大すべきであり、これは、より低いSCRを決定する可能性があるかどうかにかかわらず、必須であるべきである、としている。

なお、関連会社は、保有資産に対する投資ビークルを代表したり、親保険会社のための保有資産の支配目的のために設立されているケースがあるが、いくつかの国では、これらの投資ストラクチャーが一部の保険会社において総投資額の50%まで占めている。関連会社が上場されていない場合、49%の株式ショックとシンメトリック調整(+/-10%)が必要となる。関連会社が貸借対照表の重要な部分を占め、関連会社が未評価の場合、集中サブモジュールの下での資本チャージが不均衡に高くなり、通常は高度に分散化している関連会社の投資ポートフォリオを反映しなくなる。投資の実体を見渡し、それに基づく資本チャージとして、「リスクをより適切に把握する」必要がある、としている。

262.実質的に「投資ファンド」である「関連会社」(すなわち「投資ビークル」)への投資については、「形式よりも実質」の原則が適用されるべきである。ルックスルー・アプローチはリスクをより適切に把握すべきである。

263.したがって、ルックスルー・アプローチの適用は、「投資関連会社」にまで拡大すべきである。「投資関連会社」は、(ソルベンシーII指令第212条(1)(b)に定義されているように)以下の条件を満たす関連会社として定義されるべきである。
・その目的は、(親)保険会社に代わって資産を保有していること。
・定義された(正確な)投資命令に従い、投資活動に関連する保険会社の運営を支援する。
・親会社のために投資する以外の事業を営むことはない(純粋な投資事業体)。

264.「投資関連会社」へのルックスルー・アプローチの適用は、より低いSCRを決定する可能性があるかどうかにかかわらず、必須であるべきである。これは、原資産に起因するSCRが株式リスクチャージを適用して得られるSCRよりも低い場合に発生する可能性がある。そのような場合、企業はよりリスクに敏感なルックスルー・アプローチを適用すべきである。

265. 上記のパラグラフの条件を満たさないために投資目的として設立されていない「関連会社」は、 依然として委任規則第84条第4項の対象となる。

266.委任規則第84条第3項によれば、第84条(1)のルックス・スルー・アプローチの適用が不可能な場合、会社は、結果的に生じるSCRがリスクの慎重な評価となることを条件に、第84条(3)に含まれる簡素化されたアプローチか、 代わりに委任規則第168条の第2タイプのリスクを適用する。委任規則のいくつかの項目のレビューの助言の第2セットでは、EIOPAは、委任規則第84条(3)の簡素化されたアプローチにいくつかの細分化を提案する。 その点で、EIOPAは、簡素化されたアプローチの適用がSCRの保守的な計算を決定することを確実にするためのいくつかの追加規定を提案する。

例:ルックスルー・アプローチは、契約上のファンド又は変動資本を有する投資会社(SICAV)11の形で、オープンエンドな集団投資スキームに適用されるべきである。

 
 
11 SICAVはsociété d’investissment à capital variableの略称で、ルクセンブルグ、イタリア、スイス、フランスなど欧州で一般的なオープン・エンド型の投資信託のこと
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中村 亮一

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