2017年09月21日

2016年少額短期保険決算-各社のディスクローズ資料などより

小林 雅史

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3――各社決算の概要

ディスクロージャー資料、貸借対照表・損益計算書ともにホームページで公開していない会社を除く79社について、貸借対照表・損益計算書記載項目を分析するとつぎのとおりである。

なお、ほか3社は、決算公告として貸借対照表の要旨のみを開示しているが、収入保険料や経常利益が不明のため分析の対象外とした(会社法における株式会社の決算公告の基準としては、資本金5億円未満の会社は貸借対照表を開示することとされているが、先のレポートで述べたとおり、保険業法第272条の17の規定により、貸借対照表・損益計算書記載項目を含む適正な情報開示は少額短期保険会社の義務である)。
 
1資本金
79社の会社形態をみると、株式会社が78社、非営利活動法人が1法人となっている。

株式会社である少額短期保険会社の最低資本金は、保険業法第272条の4第1項第2号および保険業法施行規則第38条の3の規定により、1000万円とされているが、実際の資本金は、最低3000万円、最高17億4487万円である。

なお、保険業法第272条の4第1項第1号イおよび保険業法施行規則第38条の3の規定により、会計監査人の監査を必要とする会社は資本金3億円以上の株式会社となっているが、該当する会社は14社あり、比較的規模の大きい会社も一定数存在する(なお、会社法上、会計監査人の監査を必要とする会社は資本金5億円以上の株式会社で、大会社とされているが、該当する会社は8社ある)。
 
2総資産
保険会社の規模を図る指標のひとつとして総資産があるが、10億円以上は22社ある。

総資産第1位は全管協共済会で約63億6924万円、第2位はあすか少額短期で約42億816万円、第3位は東京海上ミレア少額短期で約36億816万円、第4位は宅建ファミリー共済で約35億1945万円、第5位はエタニティー少額短期で約34億9721万円となっている。
 
3経常利益
企業の収益力に関する基本的な指標である経常利益を見ると、29社が赤字で、50社が黒字となっている。

経常利益第1位はさくら少額短期で約7億5598万円、第2位はメモリード・ライフで約3億6038万円、第3位は全管協共済会で約3億1109万円、第4位はあすか少額短期で約2億9881万円、第5位はエタニティー少額短期で約2億9478万円となっている。
 
4収入保険料
年間収受保険料50億円以下という少額短期保険会社の制限は、損保系商品を販売する会社が多いことから、損保会社の概念である正味収入保険料(収入保険料から保険契約者に払い戻した解約返戻金などを控除し、さらにリスクの分散のための再保険料収支を加減したもの)で計算される(前記の業界全体の収入保険料も正味収入保険料ベース)。

しかしながら、生保系商品を販売する会社もあることから、顧客から実際に収入した保険料ベース(再保険収支などを加味しない)で見ると、第1位は全管協共済会で約65億4011万円(正味収入保険料は約4億2624万円)、第2位はエタニティー少額短期で約64億310万円(同約4億1710万円)、第3位は東京海上ミレア少額短期で約59億1728万円(同5512万円)、第4位は日本少額短期で約49億2588万円(同約2億2889万円)、第5位は宅建ファミリー共済で約45億5593万円(同約4億2046万円)となっている。
 

4――おわりに

4――おわりに

少額短期保険業の保有契約、収入保険料とも安定的な成長が続いている。

一方、既報の2016年2月から新規契約の募集および満期契約の更新を停止した会社(ウィズネット少額短期)は2017年2月28日に解散したが、新たに販売中の入院保障保険、無告知がん診断一時金保険の販売を、2017年5月に停止した会社もある。

また、2015年1月には、少額短期保険会社に対して初の行政処分(業務改善命令)が発出された。

少額短期保険業は、一般の保険業と同様、さまざまなリスクに対する相互扶助という公共性の高い事業であり、一般の事業会社より厳しい規制下にある(前述の会計監査人の監査を必要とする会社の設定要件など)。

法令順守体制のさらなる整備やディスクローズの一層の充実など、今後の少額短期保険業界の健全な発展を心から期待したい。
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小林 雅史

研究・専門分野

(2017年09月21日「保険・年金フォーカス」)

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