2017年09月21日

2016年少額短期保険決算-各社のディスクローズ資料などより

小林 雅史

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1――はじめに

少額短期保険については、過去2回のレポートで紹介した1が、2016年決算のディスクローズ状況を見ると、情報開示は進展傾向にある。

そこで、各社のディスクローズ資料などをもとに、2016年決算状況やトピックスを報告することとしたい。
 
1 小著「少額短期保険の現状-制度創設から8年間の急成長と課題」『保険・年金フォーカス』、ニッセイ基礎研究所、2014年8月26日、http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=53676?site=nli、「少額短期保険について-制度創設から10年間の成長」『保険・年金フォーカス』、ニッセイ基礎研究所、2016年8月23日、http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=53676?site=nli
 

2――少額短期保険業界全体の状況

2――少額短期保険業界全体の状況

1少額短期保険業者、募集人
少額短期保険業者は、2014年度82社、2015年度85社、2016年度89社と、新規設立による増加が続いている(いずれも3月末時点)。

2017年度も、7月6日リボン少額短期保険、7月12日メディカル少額短期保険の開業が続き、8月29日現在で、少額短期保険業者は91社となった。

91社の内訳を登録先の財務局別に見ると、北海道財務局に2、東北財務局に5、関東財務局に66、東海財務局に1、近畿財務局に9、中国財務局に2、四国財務局に1、福岡財務支局に4、沖縄総合事務局に1となっている。

また、少額短期保険は、少額短期保険募集人によって販売されているが、少額短期保険募集人数も、2014年度149,200人、2015年度165,600人、2016年度189,500人と着実に増加している2
 
2 「少額短期保険業者登録一覧」(2017年8月29日現在)、金融庁ホームページ、「2016年度 少額短期保険業界の決算概況について」、2017年7月15日、日本少額短期保険協会ホームページ。
2|商品別販売状況
生保会社・損保会社においては、同一の会社で生命保険と損害保険は併売できない(子会社方式を除く)が、少額短期保険会社は最高保険金額・保険期間が制限3されているものの、生命保険と損害保険の併売が可能である。

少額短期保険会社が販売する商品は、つぎの4タイプに大別される。

・火災や風水害などによる家財の損失を補償する「家財保険」(損害保険)
・死亡や入院を保障する「生保・医療保険」(生命保険)
・ペットの通院・入院・手術などを補償する「ペット保険」(損害保険)
・地震や遭難などにより発生する費用を補償する「費用・その他保険」(損害保険)

2016年度の少額短期保険会社89社のうち、家財保険を販売する会社が41社、生保・医療保険を販売する会社が32社、ペット保険を販売する会社が9社、費用・その他保険を販売する会社が7社となっている。

2016年度の保有契約件数は687万件(対前年+8%)であり、家財保険が約9割を占めている。
(表1)最近3年間の少額短期保険の保有契約の動向
一方、2016年度の収入保険料は815億円(対前年+12%)であり、家財保険が約7割で、保有契約では5%程度のペット保険、生命・医療保険が1割以上を占める。
(表2)最近3年間の少額短期保険の収入保険料の動向
 
3 最高保険金額は、疾病死亡:300 万円、傷害死亡:600 万円、疾病・傷害による入院給付金等:80 万円、損害保険:1000 万円など、保険期間は、損害保険は2年、生命保険・医療保険は1年。
3情報開示
情報開示は進展傾向にある。

生保会社・損保会社においては、保険業法第111条により、業務および財産の状況に関する説明書類(いわゆるディスクロージャー資料)を作成し、本店や支店などに備え付けて公衆に縦覧させなければならないとされている。

少額短期保険業者に対しても、保険業法第272条の17において、同様のディスクロージャー資料の公衆への縦覧義務が定められている。

生命保険協会や損害保険協会では、法律で定められた開示項目のほか、自主的に開示すべき項目のガイドラインを定めるとともに、各社ともホームページで「○○生命(損保)の現状」などの名称で、各事業年度ごとのディスクロージャー資料を開示しているが、少額短期保険協会では現在のところガイドラインは作成しておらず、各社のディスクロージャーに対する姿勢も区々である。

2015年度末時点の85社中、

  A:ディスクロージャー資料をホームページで公開している会社=31社(36.5%)
  B:ディスクロージャー資料は公開していないが、貸借対照表・損益計算書をホームページで公開している会社=45社(52.9%)
  C:ディスクロージャー資料、貸借対照表・損益計算書ともホームページで公開していない会社=9社 (10.6%)

となっていた。

2016年度末では、89社中、

  A:36社(40.4%)
  B:43社(48.3%)
  C:10社 (11.2%)

であり、Aが増加していることから、ディスクローズについてはやや進展傾向にあるものといえる。
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小林 雅史

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