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東京Aクラスビルの成約賃料が再上昇。売り時判断の増加で不動産売買は拡大。~不動産クォータリー・レビュー2017年第2四半期~

竹内 一雅
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6.J -REIT(不動産投信)・不動産投資市場
2017年第2四半期の東証REIT指数(配当除き)は、3月末比▲4.6%下落し1年4カ月ぶりに1,700を下回った。セクター別ではオフィスが▲5.7%、住宅が▲5.1%、商業・物流等が▲3.0%下落した(図表―38)。REIT市場で最大の投資家層であるJリート投信(上場ETFを除く)からの換金売りが続き需給環境が悪化しており、年初からの東証REIT指数の下落率は8.7%に拡大した。6月末時点のバリュエーションは、純資産8.6兆円に保有物件の含み益2.0兆円を加えた10.6兆円に対して時価総額は11.4兆円でNAV倍率は1.1倍、分配金利回りは4.0%(対10年国債利回りスプレッド3.9%)である。
J-REITによる第2四半期の物件取得額(引渡しベース)は2,541億円(前年同期比▲34%)、上半期累計で8,152億円(▲13%)となった(図表―39)。REIT市場が調整色を強めるなか、エクイティ資金の調達を伴う大型取引が手控えられており第2四半期の取得額は大きく鈍化した。
アベノミクスがスタートして以降、REIT市場は日銀の金融緩和に歩調を合わせて上昇してきた。しかし、金融緩和の節目にあたる、(1)異次元緩和スタート(2013年4月)、(2)REIT買い入れ3倍増額(2014年10月)、(3)マイナス金利導入(2016年1月)の各時点と比較した場合、6月末の東証REIT指数は(1)の水準を12%上回っているものの、既に(2)や(3)に並ぶ水準まで下落している(図表-40)。日経平均株価が2万円を回復し10年国債利回りが低位で推移しているのに対して、REIT市場だけが追加緩和の効果を失ったと言える。
一方で足もとのファンダメンタルズは依然として良好である。賃貸市況の回復と金融コストの低下によって1口当たり分配金は異次元緩和スタート時から27%増加し、1口当たりNAV(ネット・アセット・バリュー)も49%増加している。この結果、市場全体の分配金利回りは4.0%に上昇しNAV倍率は1.1倍まで低下しており、バリュエーションの魅力度が高まっている。
日経不動産マーケット情報によると、2017年4-6月の不動産売買高は8,227億円(前年比+29%増)となり、3四半期連続で前年同期の水準を上回った(図表-41)。最近の不動産売買では、利回りの低下、不動産価格の上昇を背景に、東京周辺部や地方圏における取引比率が高まっている。今年に入ってからは、横浜みなとみらい地区や天王洲、品川シーサイド、大阪などでの高額取引が目立っている。また、2016年は不動産取得が進まなかった海外投資家の取得が急増していることも、2017年に入ってからの特徴である(図表-42、43)。
取得額の増加は、利回りの低下などから、現在が市況のピークで売り時と判断する投資家や不動産所有者が増えていることを背景にしている(図表-44、45)。アセットタイプとしては、東京周辺部での大型オフィスビルの取引に加え、ホテル用地や物流施設の取引、住宅のバルクセールなどがみられた。
(ご注意)本稿記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本稿は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
(2017年08月08日「不動産投資レポート」)
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