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IASBによる新たな保険契約会計基準(IFRS第17号)への反応と今後の課題-生命保険会社はどのような影響を受け、どう対応していくことになるのか-
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IASBは、IFRS第17号保険契約の適用を支援するために、通常の会計基準と同様の「結論の根拠(Basis for Conclusions)」に加えて、「例証(Illustrative Examples)」、さらには、特定の領域に焦点を当てて新しい基準を紹介するウェブキャスト等の「教育マニュアル(Educational material)」を準備している。さらに加えて、以下の枠組みを提供している。
(1) TRG(移行リソースグループ)の設立
IASBは、IFRS第17号の履行を支援するためにTRG(Transition Resource Group:移行リソースグループ)を設立している。これは、新しい基準が、保険契約を発行している殆どの企業にとって、既存の実務の根本的な変更を求めることになり、従って、大変な努力が必要となることが予想されることによる。
TRGは、IFRS第17号の新しい会計要件について、利害関係者からの質問を議論する。
TRGの目的は、以下のとおりである。
1) 実施に際して提起される質問の議論をフォローするために利害関係者に対してパブリックフォーラムを提供する。
2)審議会がこれらの質問に対処するために何が必要かを決定するのを助けるために審議会に通知する。可能な措置には、ウェビナー(Webinar)等の支援資料の提供、ケーススタディおよび/または審議会または解釈委員会への参照が含まれる。
(2) IFRS第17号の実施支援ページの設定
IASBは、さらに、IFRS第17号の発行と併せて、IFRS第17号の実施支援ページを設定5している。5月18日にIFRS第17号と併せて発行された資料に加えて、技術的な問い合わせおよび実施上の問題に関する連絡先の詳細と提出情報も記載されている。IASBは、IFRS第17号の全実施プロセスを通じて実施支援ページを利用可能にし、利用可能な追加情報を引き続き追加していく予定である、としている。
3―関係団体の反応
保険業界の団体からは、「いくつかの重要な懸念が残されたままであり、これまでにない新しい要件が課されているが、これに対しての業界や市場の適切な評価ができていない。」とし、さらには、「実施のコスト及び労力は相当なものとなる。」とのコメントが出されている。
また、会計事務所やコンサルタント会社等もコメントを発表しているが、ここではKPMGとWillis Towers Watsonのプレス・リリースの一部を報告する。
1|Insurance Europe(欧州保険協会)
Insurance Europeは、2017年5月18日に、以下のプレス・リリース6を行っている。
これによれば、Insurance Europeは「ビジネスモデルの重要な側面、特に保険の長期的な性質とリスクのプーリングに対する基盤が十分に反映されていない懸念を表明した。IASBは、業界が提起した重要な問題の一部を認識したが、重要な懸念が残されたままである。」として、さらに「IFRS第17号は非常に重要な変更を表しており、実施のコスト及び労力は相当なものとなるであろう。」と述べている。加えて、「新しい要件の重要な側面は最近開発されたばかりであり、最終的なテキストの主要部分はごくわずかの保険会社にしか見られてこなかった。したがって、これまで業界が適切な評価を下すことはできなかった。」と述べている。
2017年5月18日
IASB、保険契約会計の新たなグローバル基盤を発表
国際会計基準審議会(IASB)による保険契約に関する国際財務報告基準(IFRS第17号)が本日発行されたことを受けて、Insurance Europeの副事務局長であるOlav Jones氏は次のようにコメントしている。
「Insurance Europeは、保険契約の現在の暫定IFRSの置き換えの開発を支援する。IFRS第17号の開発中、欧州の保険会社はIASBと緊密に協力し、ビジネスモデルの重要な側面、特に保険の長期的な性質とリスクのプーリングに対する基盤が十分に反映されていない懸念を表明した。IASBは、業界が提起した重要な問題の一部を認識したが、重要な懸念が残されたままである。」
「IFRS第17号は非常に重要な変更を表しており、実施のコスト及び労力は相当なものとなるであろう。しかし、IASBレベルでの基準のテストと評価は非常に限られてきた。事実、新しい要件の重要な側面は最近開発されたばかりであり、最終的なテキストの主要部分はごくわずかの保険会社にしか見られてこなかった。したがって、これまで業界が適切な評価を下すことはできなかった。我々は、この基準が欧州の保険会社に適していることを保証する必要があり、この目的のために、Insurance EuropeはEUの承認プロセスに完全に関与していく。」
ABIも、同じく2017年5月18日に、以下のプレス・リリース7を行っている。
これによれば、Insurance Europeと同様に、「限定された運用テストしか行われておらず、市場との適切なコミュニケーションをサポートするかどうかについては、いまだ評価されてきていない。いくつかの重要な要件が最近開発され、保険会社はこれまでに満たされていない懸念を伝えてきた。さらに、ソルベンシーIIにおける業界の最近の経験が示すように、実施のコストと労力は大幅に増加する可能性がある。」と述べている。
2017年5月18日
新しい会計基準IFRS第17号に関するABIのコメント
ABIの規制ディレクターであるHugh Savill氏は、国際会計基準審議会(IASB)が今朝発表した新しい会計基準IFRS第17号「保険契約」について、次のようにコメントしている。
「IASBは、新しい会計基準IFRS第17号「保険契約」を公表した。これにより、保険会社が2021年からの財務結果をどのように報告するかが大きく変わることになる。しかしながら、限定された運用テストしか行われておらず、市場との適切なコミュニケーションをサポートするかどうかについては、いまだ評価されてきていない。いくつかの重要な要件が最近開発され、保険会社はこれまでに満たされていない懸念を伝えてきた。さらに、ソルベンシーIIにおける業界の最近の経験が示すように、実施のコストと労力は大幅に増加する可能性がある。」
「将来に向けて、業界は、EUにおけるIFRS第17号の使用のための承認プロセスの中心となる、コスト便益/公的評価に従事していくことになる。EUを離脱すると、英国でも同様に堅実な承認プロセスが必要となる。」
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