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景気ウォッチャー調査(17年3月)~停滞感強まり、人手不足、仕入れ価格の上昇は先行きの不安材料に~
白波瀨 康雄
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1.景気の現状判断DI(季節調整値):3ヵ月連続の悪化
今回の調査では、家計動向関連は、引き続きインバウンド需要が好調だが、飲食関連や住宅関連の業種で消費に慎重な姿勢がみられ、景況感を押し下げた。新型車投入の効果から乗用車・自動車備品販売店の景況感は高水準を維持しているものの、円安・株高の流れが年初から一服していることを受けて消費意欲が低下している可能性がある。企業部門においては、仕入れ価格の上昇による採算悪化や人手不足感の高まりが景況感を押し下げた。
2.インバウンドは好調も、国内客の消費は冴えない
コメントをみると、家計動向関連では「インバウンド売上はどの月も前年を上回っており、免税手続きのカウンターは常に行列となっている」(近畿・百貨店)など、引き続きインバウンド需要は好調だ。特に、化粧品や雑貨の売上が好調で、「インバウンドは、都心店で前月同様に化粧品需要が大きく伸びており、堅調である」(南関東・百貨店)といったコメントが目立った。他にも、「競合他社の状況をみると、各社とも売上が伸びてきている。新型車の効果が市場の伸びにつながってきている」(北海道・乗用車販売店)など、新型車の販売が好調であり、乗用車・自動車備品販売店のDI(原数値)は節目となる50を5ヵ月連続で上回っている。一方、「送別会の利用が例年並みに推移している。卒業祝いや合格祝い等の家族のイベントが、例年より若干単価が低い。個人客の先行きを不安視している様子がうかがえる」(北陸・高級レストラン)や「客は二次会には行かず一次会で済ます合理化傾向がみられる」(中国・一般レストラン)など、消費者の節約志向の強まりを警戒するコメントが飲食店を中心にみられた。また、住宅関連でも、「年度内に契約に至らなかったものが多く、住宅を買う動きが鈍い」(九州・住宅販売会社)や「戸建住宅を中心に、全体的に低調である。賃貸住宅も前年割れが出始めており、安定感が損なわれつつある。ユーザーの慎重さは変わらず、商談に時間がかかっている」(南関東・住宅販売会社)とのコメントのように、二の足を踏む住宅購入者が増えているようだ。企業動向関連では、製造業(前月差▲1.1ポイント)、非製造業(同▲2.3ポイント)ともに3ヵ月連続で悪化した。コメントをみると、製造業では「受注・売上量が減少し、受注・販売価格も低下傾向にある。さらに主要材料のスクラップ価格が上昇しており、採算は悪化している」(四国・鉄鋼業)などのように、原材料価格の高騰による収益悪化が景況感を押し下げたようだ。非製造業では、「物量は、前年並みからプラスで推移しているが、人手不足や軽油価格の上昇で、コストも増加している」(東海・輸送業)や「最近、小規模の同業他社の廃業が数社続いている。技術者不足等をお金をつぎ込んで解消しようとするほどは、当地方の景気が良くないためではないか」(建設業・南関東)といったように、一部業種において人手不足が事業に支障をきたしているとのコメントが目立った。
雇用関連では、「人材確保が難しくなっているため、派遣採用時の時給もやや上昇している」(東海・人材派遣会社)や「派遣先の企業による利用が、派遣社員から契約社員や正社員にシフトする動きが活発化してきている」(近畿・人材派遣会社)など、人手不足感が高まる中、人材を確保するために待遇改善を進めているようだ。
(2017年04月11日「経済・金融フラッシュ」)
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