2017年02月24日

大阪オフィス市場の現況と見通し(2017年)

竹内 一雅

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1. はじめに

大阪では5年連続でオフィス需要の大幅な増加が続いている。2016年は賃貸ビルの新規供給がなかったためオフィス市況はさらに大きく改善した。今後も2017年から2019年の新規供給量がさほど大きくないため、空室率の低下傾向が続くと思われる。本稿では、大阪のオフィス市場の現況把握とともに、2023年までの賃料予測を行う1
 
1 過去の大阪オフィス市況の見通しに関するレポートとしては、竹内一雅「需給環境の改善が続く大阪オフィス市場-活発な需要に加え新規供給の少なさが市況改善に貢献」(2016.11.7)ニッセイ基礎研究所、竹内一雅「大阪オフィス市場の現況と見通し(2016年)」(2016.3.4)ニッセイ基礎研究所などを参照のこと。
 

2. 大阪のオフィス空室率・賃料動向

2. 大阪のオフィス空室率・賃料動向

大阪のオフィス市場は堅調な需要拡大に加え、2016年に新築の賃貸オフィスビルの供給がなかったことから市況の改善が続いている。需要面では、事務所の新設や市外・自社ビルからの移転、市内からの拡張移転、建替えに伴う移転、館内増床などが多く見られたことに加え、解約が少なかったことも市況にプラスとなった。三幸エステートによると、2017年2月の空室率は5.96%で、昨年初め(2016年1月)の8.66%から大幅な改善となった(図表-1)。

成約賃料(オフィスレント・インデックス)も、空室率の改善にあわせて上昇傾向にある(図表-2)。2016年下期の賃料上昇率は前期比で+5.9%、前年同期比で+3.0%の上昇で、リーマンショック後の底値(2012年下期)からの上昇率は43.7%となった。
図表-1 主要都市のオフィス空室率/図表-2 主要都市のオフィス成約賃料(オフィスレント・インデックス)
空室率は全てのビル規模2で低下傾向が続いている(図表-3)。すでに小型~大型ビルでは、ファンドバブル期(2006年~2008年頃)の空室率を下回っているが、大規模ビル(同200坪以上)でも3.42%と、当時の最低値(3.19%:2008年2月~3月)に迫る水準となっている。

三鬼商事によると、大阪ビジネス地区3の空室面積は10万6千坪(2010年末の42.2%の水準)まで減少し、ファンドバブル期のボトム(2007年末の9万4千坪)に近づいている(図表-4)。
図表-3 大阪の規模別空室率/図表-4 大阪ビジネス地区の賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積
 
2 三幸エステートの定義による。大規模ビルは基準階面積200坪以上、大型は同100~200坪未満、中型は同50~100坪未満、小型は同20~50坪未満。
3 三鬼商事の定義による。大阪の主要6地区(梅田、南森町、淀屋橋・本町、船場、心斎橋・難波、新大阪地区)からなり、空室率等の調査対象はこの地区に立地する延床面積1千坪以上の主要賃貸事務所ビル。
 

3. 大阪のオフィス需給と地区別動向

3. 大阪のオフィス需給と地区別動向

大阪ビジネス地区では、6年連続で賃貸面積(稼動面積)は増加している(図表-5)。2015年と2016年は二年連続で4万坪以上の賃貸需要の増加があり、2011年以降の6年間の賃貸面積の増加は20万7千坪と、ファンドバブル期を含む2003年~2007年の19万坪を上回った。2016年の一年間に、賃貸可能面積は▲7千坪の減少、賃貸面積は4万2千坪の増加、空室面積は▲4万9千坪の減少だった。月次データによると、毎月、着実な賃貸面積の増加がみられることから、大阪のオフィス需要は特定の大規模需要への依存ではなく全体的な底上げに支えられているようだ。
図表-5 大阪ビジネス地区の賃貸オフィスの需給面積増加分
大阪市では、2016年に新規の賃貸ビル供給がなかったことを含め、2014年以降は過去と比べて低水準の供給が続いている(図表-6)。そのため、大阪ビジネス地区の賃貸面積の増加を、新築ビルと既存ビルに分けてみると、2014年~2016年における新築ビルによる需要吸収は賃貸需要増加分全体の1/4にすぎず、2016年は需要増加の全てが既存ビルとなった(図表-7)。

三幸エステートのネット・アブソープション4(吸収需要)の調査でも、5年連続で6万坪を上回る高水準が続いており、最近の大阪でのオフィス需要の強さが示されている(図表-8)。
図表-6 主要都市の新規供給面積/図表-7 大阪ビジネス地区の新築・既存ビル別賃貸面積増分
大阪ビジネス地区では、ほとんどの地区で2016年の空室率の改善は顕著である(図表-9)。特に改善幅が大きかったのが淀屋橋・本町地区で、2015年末の8.27%から5.31%へと大きく改善した。淀屋橋・本町地区では2015年に大規模な自社ビルの竣工が続いたことでテナントの大量転出が発生し、2016春までに空室率が大幅に上昇したが、その後、需要の増加で空室率は低下が続いている(図表-10左図)。同様に梅田地区や船場地区でも2016年を通じて空室率は着実に改善している。

募集賃料(月次)は、梅田地区で上昇傾向にあるが、空室率の低下が顕著な淀屋橋・本町地区や船場地区でも、まだ募集賃料は底打ちしたといえる状況にはない(図表-10右図)。
図表-8 大阪の新規供給とネットアブソープション/図表-9 大阪ビジネス地区の地区別オフィス空室率(年次)
図表-10 大阪ビジネス地区の地区別空室率・募集賃料の推移(月次)
大阪ビジネス地区で、2016年末現在、最も賃貸可能面積が集積しているのが梅田地区(全体の33.7%)で、次いで淀屋橋・本町地区(同31.7%)、船場地区(同15.1%)、新大阪地区(同9.7%)、南森町地区(同5.1%)、心斎橋・難波地区(同4.7%)の順となっている(図表-11)。

2016年は新規供給がなかった一方、賃貸面積は淀屋橋・本町地区で+1万7千坪の増加、梅田地区で+1万3千坪の増加、船場地区で8千坪の増加など、南森町地区以外の全地区で需要の増加が見られた(図表-12)。その結果、空室面積は、淀屋橋・本町地区で▲2万1千坪、梅田地区で▲1万5千坪の大幅な減少となった。
図表-11 大阪ビジネス地区の地区別オフィス面積構成比(2016年)/図表-12 大阪ビジネス地区の地区別オフィス需給面積増分(2016年)
 
4 ネット・アブソープションとは調査期間内のオフィス需要(稼動面積)の増減のことであり、「期初竣工済みビル募集面積」+「新規供給面積」-「期末竣工済みビル募集面積」で算出している。
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