2017年02月06日

EIOPAによる2016年度保険ストレステストの結果について(4)-EIOPAの報告書の概要報告-

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5―まとめ

以上、これまでの4回のレポートで、EIOPAの保険ストレステスト2016の結果に関する報告書に基づいて、欧州保険会社の脆弱性と耐性力について、その概要を報告してきた。

ストレステストの結果については、前回のレポートで述べた通り、「今回のストレスシナリオに対して、多くの会社は耐性力を有しているが、一部の会社は大きな影響を受けて、十分な資本を確保できない状況も想定されることが示されている。さらには、ストレスシナリオにおいて会社が適切な資本を維持するために、LTG及び移行措置に大きく依存している国や会社がある実態も明らかにされている。」となっている。

今回のレポートでは、それを受けた監督当局の対応についての勧告が述べられている。

まずは、昨今の市場環境下で、リスク管理の重要性が一層増してきており、こうした市場環境やそれに対するリスク管理での対応可能性等を踏まえて、各社のビジネスモデルの持続可能性を再検討し、再評価していくことが求められている。

さらには、実際のストレスシナリオに対する量的評価において、解約や技術的準備金の最良推計の算出に使用されるモデリングの重要性が再認識され、これらのレビューや評価が求められている。

最後に、今回のストレステストではカバーされなかったグループレベルでのソルベンシー評価やストレスシナリオで示された脆弱性についてのグループレベルでの対応についての課題意識が提起されている。

昨今の厳しいボラタイルな市場環境下で、監督当局においては、より迅速かつ詳細に、保険会社の実態を把握し、必要に応じて、早期に適切な対応を講じていくことが求められてきている。

EIOPAや各国の監督当局レベルで、今後継続的に検討されていく対応策等については、日本にも参考になるものがあると考えられることから、欧州の保険会社や保険監督を巡る動きについて、引き続き注視していくこととしたい。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2017年02月06日「保険・年金フォーカス」)

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