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九州のインバウンド観光需要-九州における訪日外国人旅行者の特性と需要動向

竹内 一雅
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4. 九州における宿泊施設数とホテル建設計画
九州に立地する宿泊施設数・客室数は全国の11~12%程度を占める12(2015年度)。近年、九州の旅館数は大幅に減少しており、2003年度から2015年度までに旅館数は▲30.0%(▲2,069施設)の、客室数は▲23.2%(▲23,545室)の大幅な減少となっている(図表-26、27)。同時期に施設数を大きく増加させたのがゲストハウスやカプセルホテル・ホステル・民宿・山小屋などの簡易宿所(+2,021施設の増加)であり、客室数を増加させたのがホテル(+26,530室)であった13。
県別にみると、ホテルは施設数・客室数ともに福岡県で最も多い。旅館数は熊本県と大分県で多いが、客室数では長崎県が大分県を上回る規模となっている。また、長崎県は簡易宿所の数の多さでは他県を圧倒している(図表-28、29)。
12 九州7県に立地する宿泊施設の全国に占める比率は(2015年度)、ホテル数で11.5%、旅館数で11.9%、簡易宿所数で15.0%、ホテル客室数で11.8%、旅館客室数で11.1%となっている(衛生行政報告例より)。
13 施設数の増加に伴い、簡易宿所の客室数も増加していると考えられるが、衛生行政報告例では、簡易宿所の施設数のみ開示されており、客室数は開示されていない。ただし、もともと簡易宿所は、宿泊部屋を「多数人で共用する」宿泊施設であるため、客室数の開示は意味をなさない。多くの簡易宿所で定員数が示されているため、今後、簡易宿所の定員数の調査・開示が求められる。なお、宿泊・旅行統計を用いて概算で定員数を求めることは可能ではある。それによると、簡易宿所の定員数は、リゾートホテルの定員に近い規模まで増加しているようだ。
訪日外国人宿泊者数の急増を背景に、九州でもホテル開発が進展している。週刊ホテルレストランによると、2017年以降に九州で計画されているホテル数は32軒(全国の7.1%)、客室数は4,071室(同5.9%)にのぼる。このうち、2017年に1,586室(同5.4%)、2018年に1,590室(同8.8%)のホテルが竣工する予定であり、宿泊施設数の全国構成比(全国の11.5%)から考えると、計画規模は控えめといえるかもしれない(図表-30)。
ホテル開発の進展に加え、ホテル不足解消のための行政による規制緩和も進んでいる。福岡市では2016年12月に高級ホテルを建設する際の容積率を1.5倍に緩和する施策を公表した14。福岡市はまた、同じ2016年12月から、旅館業法施行条例の改正により、マンションなどの共同住宅内での民泊(簡易宿所)の営業を可能とする規制緩和を実施した15。北九州市においても、2017年1月から国家戦略特区で認められた「特区民泊」の営業が可能となった16。
14 福岡市「都心部機能更新誘導方策」(2016年12月改定)を参照のこと。
15 福岡市「福岡市旅館業法施行条例を改正しました」(2016年11月28日)を参照のこと。違法民泊の蔓延に対し、「簡易宿所」の規制緩和により、一定の条件のもとでマンションなどの共同住宅において民泊を旅館業法の施設(簡易宿所)として正式に営業できるようにした。これにより、マンションで操業する違法民泊の取り締まりが大きく進むことになりそうだ。
16 北九州市「特区民泊に関する区域計画の認定及び国家戦略特別区域法施行令の一部を改正する政令の概要について 特区民泊に関する区域計画の認定」(2016年11月17日)を参照のこと。
5. 九州における外国人旅行者の消費動向
爆買いの終了は、全国の百貨店の免税品売上げに大きなダメージを与え、前年比では8ヶ月連続で減少が続いている(図表-34)。ただし、購買客数は前年比増加が続いており、購買単価の下落も底を打ったようだ(図表-35)。このため、今後は全国・九州ともに訪日外国人旅行者数の増加にあわせて免税品販売額は再び増加に転ずる可能性が高いと思われる。
(2017年01月06日「不動産投資レポート」)
竹内 一雅
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