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オフィス賃料は反発も、インバウンド需要のピークアウトが-商業施設、ホテルに影響 不動産クォータリー・レビュー2016年第3四半期
基礎研REPORT(冊子版) 2016年12月号

増宮 守
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1――経済動向と住宅市場
今後も、世界経済の減速から外需に期待しづらくなるものの、雇用所得環境の改善を受けた底堅い個人消費により、プラスの経済成長が続くとみられている。
住宅市場は概ね堅調で、新設住宅着工戸数が前年同月比プラスで推移している。とりわけ、根強い相続税の節税ニーズに加え、金融機関の融資姿勢の積極化や建築コストの落ち着きが貸家着工を加速させている[図表1]。
首都圏の新築分譲マンション販売戸数も9月には10ヶ月ぶりに前年同月比でプラスとなった[図表2]。神奈川県での伸びが大きく、消費増税前の駆け込み需要を想定していた大規模駅近物件などが順調に販売された模様。
マンション価格も上昇を続けており、9月の首都圏中古マンション平均価格(東日本不動産流通機構)は前年同月比+5.7%の3,126万円となり、リピートセールス法による不動研住宅価格指数の上昇も続いている。
2――地価動向
3――不動産サブセクターの動向
商業施設およびホテル市場を牽引してきたインバウンド需要がピークアウトしている。ただし、訪日客の人数自体は、依然として前年同月比約2割増しのペースで増加している[図表7]。
訪日外客数の増加の一方、訪日客の日本国内での1人当たり消費額は、第3四半期に前年同期比-17.1%と大きく落ち込んだ[図表8]。政府主導で贅沢品の消費を抑えている中国人(前年同月比-18.9%)だけでなく、多くの国の訪日客が消費額を縮小している。
インバウンド消費需要が減退する中、商業動態統計による9月の小売業販売額(税込み季節調整済み指数)は、前年同月比-1.9%となった。特に、百貨店の9月の既存店売上は前年同月比-5.0%で7ヶ月連続のマイナス、とりわけ外国人向け免税品売上は-10.1%で6ヶ月連続のマイナスとなった。
店舗売上の頭打ちを受け、高級品店の多い銀座を筆頭に、商業施設賃料もピークアウトしている[図表9]。
ホテル市場でも、8月には国内宿泊施設の延べ宿泊者数が外国人分まで前年同月比マイナスに落ち込んだ[図表10]。訪日客の宿泊需要拡大がホテル市場を牽引する状況は収束しつつある。
ホテル稼働率が前年同月比でマイナスとなる月が増えており、STRグローバルによる全国のホテルのRevPARも8月は前年同月比-1.7%であった。
賃貸物流施設市場では、首都圏に続き、大阪圏でも大量供給が本格化している。CBREによる大型マルチテナント型物流施設の空室率は、第3四半期に首都圏で9.1%(第2四半期8.9%)、近畿圏で6.9%(同1.9%)に上昇した[図表11]。
新規需要は旺盛なものの、都心から離れた圏央道エリアの空室率は2割超に上昇している。首都圏の大量供給は一旦ピークを過ぎ、当面は需給改善が期待されるものの、2017年第2四半期から再び新規供給の増加が見込まれている。
4――J-REIT(不動産投信)・不動産投資市場
J-REITによる第3四半期の物件取得額(引渡しベース)は5,263億円で(前年同期比+39%)であった。
不動産投資市場では、J-REITが前年を上回る活発な取得姿勢をみせた一方、その他の投資家による物件取得は大幅に縮小した。不動産価格サイクルのピークアウト1を視野に取引市場の活力が減退しているといえる。
(2016年12月07日「基礎研マンスリー」)
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