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不動産価格サイクルの先行的指標(2016年)~大半の指標がピークアウトを示唆~
増宮 守
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6.海外市場動向
また、香港の不動産投資市場も世界での注目度が高く、オフィス賃料や取引価格はともに世界最高水準にある(図表-14)。アジアのベンチマーク市場と認識されており、シンガポールや東京の不動産に投資する際、香港との相対評価に基づいて判断する海外投資家も多い。香港のコンドミニアムや区分所有オフィスは、個人投資家や中小企業による投機的な売買対象にもなっており、取引の流動性が高く、ロンドンと並んで世界で最も不動産価格サイクルの周期が早い、あるいは短い市場と認識されている。実際、2009年上期の回復局面をみると、香港セントラルのグレードAオフィス価格は、ロンドン中心部のオフィス価格よりも早期に回復していた(図表-13)。
このように、世界のベンチマーク市場にはある程度の先行性があり、さらに、オフィスなどの取引価格指数が公表されていることから、日本市場の参考にすることができる。
2016年第2四半期時点、高値圏にあるロンドン中心部のオフィス価格は、既に小幅な下落を示していた(図表-13)。また、今後はBrexitの影響が表れることから、かなりの価格下落が予想される。
一方、香港セントラルのグレードAオフィス価格をみると、2013年以降は上値が重くなったものの、堅調を維持している(図表-13)。ただし、香港景気は低迷しており、香港証券取引所と上海証券取引所の相互接続によって中国本土企業の香港進出が活発化した4という特需がオフィス市場を支えてきた面がある。中国をはじめアジア地域全体の景気見通しが芳しくないことから、今後のさらなる価格上昇は難しいと思われる。
4 ご参考、増宮守「オフィス市場におけるインバウンドの影響~教育関連施設やアジア系企業の拡大などに期待~」ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2016年6月30日
7.おわりに
一方、今後の不動産価格の下落リスクについては、各指標が示すとおり、サイクルに従った下落局面が予想される。当面は低金利の継続を前提に大幅な価格下落は想像し難いものの、低金利によって高騰してきた不動産価格は、マイナス金利の国債と同様、長期の金利上昇リスクを抱えている。最近、日銀の買い取りを見込んだ短期の国債投資を傍目に、機関投資家が長期の国債投資を縮小している。流動性が低く、売買コストも高い不動産は、長期投資向きの資産であり、ましてや、日銀が直接買い取ってくれるものでもない。国債バブルといえる現在の不動産投資に際しては、長期の視点から、改めて将来の金利上昇局面での対応を検討しておきたい。
(2016年10月13日「不動産投資レポート」)
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