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- マネー統計(16年7月分)~住宅ローンが勢いを増す、普通預金が急増
2016年08月09日
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1.貸出動向: 伸び率は実態として堅調に推移
日銀が8月8日に発表した貸出・預金動向(速報)によると、7月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.1%で前月(前年比2.0%)から上昇した。伸び率の上昇は3ヵ月ぶりとなる。業態別では、都銀等が前年比0.7%(前月は0.6%)、地銀が3.3%(前月も同じ)と、都銀等の上昇が寄与した(図表1・2)。
なお、ここ数ヵ月、見た目の伸び率は低下ぎみだが、為替変動等の影響を調整した「特殊要因調整後」の伸び率(図表1)1は堅調に推移しており、直近判明分である6月の伸び率は前年比2.55%と2009年7月以来の高水準を更新している。これは、円高の進行に伴って外貨建て貸出の円換算額が減少し、見た目の伸び率の押し下げに働いているためである。ただし、本来円高による円換算額の減少は貸出の実勢とは何ら関係がない。
なお、ここ数ヵ月、見た目の伸び率は低下ぎみだが、為替変動等の影響を調整した「特殊要因調整後」の伸び率(図表1)1は堅調に推移しており、直近判明分である6月の伸び率は前年比2.55%と2009年7月以来の高水準を更新している。これは、円高の進行に伴って外貨建て貸出の円換算額が減少し、見た目の伸び率の押し下げに働いているためである。ただし、本来円高による円換算額の減少は貸出の実勢とは何ら関係がない。
7月についても、ドル円レートの前年比が▲15.7%と6月(▲14.8%)からマイナス幅をやや広げており(図表3)、その分、見た目の伸び率がさらに押し下げられていると考えられる。6月から7月の伸び率の上昇幅は、円高の影響を除いた実勢では、若干ではあるが見た目よりも拡大している可能性が高い。
円高の影響を除いた貸出実勢のトレンドは、大きく勢いを増しているわけではないものの、見た目の伸び率ほど低迷しているわけではない。
円高の影響を除いた貸出実勢のトレンドは、大きく勢いを増しているわけではないものの、見た目の伸び率ほど低迷しているわけではない。
2.主要銀行貸出動向アンケート調査: 住宅ローンが勢いを増す
日銀が7月20日に発表した主要銀行貸出動向アンケート調査によれば、2016年4-6月期の(銀行から見た)企業の資金需要増減を示す企業向け資金需要判断D.I.は4と前回の5から若干低下した。D.I.はプラス、すなわち「増加」が優勢な状況ではあるが、勢いとしてはわずかながら鈍化したようだ(図表6)。
企業規模別では、大企業向けが-2(前回は5)と減少に転じた一方で、中小企業向けが5(前回は4)とやや増勢が強まっている(図表7)。大企業では製造業・非製造業ともに資金需要が減少に転じている一方、中小企業では非製造業でやや勢いが強まっていることが寄与した。
中小企業向け資金需要が増加したとする先に、その要因を尋ねた問いに対しては、「設備投資の拡大」を挙げた先が最多であった。
一方、個人向け資金需要判断D.I.は14と、前回の9からさらに上昇しており、資金需要の増勢が明確に強まっている。主力の住宅ローンが大きく上昇したためであり、その要因としては、「貸出金利の低下」を挙げる先が最多となっている。
企業規模別では、大企業向けが-2(前回は5)と減少に転じた一方で、中小企業向けが5(前回は4)とやや増勢が強まっている(図表7)。大企業では製造業・非製造業ともに資金需要が減少に転じている一方、中小企業では非製造業でやや勢いが強まっていることが寄与した。
中小企業向け資金需要が増加したとする先に、その要因を尋ねた問いに対しては、「設備投資の拡大」を挙げた先が最多であった。
一方、個人向け資金需要判断D.I.は14と、前回の9からさらに上昇しており、資金需要の増勢が明確に強まっている。主力の住宅ローンが大きく上昇したためであり、その要因としては、「貸出金利の低下」を挙げる先が最多となっている。
個人向け資金需要判断D.I.は1-3月期と4-6月期で15ポイントも上昇しており(この間、企業向けは4ポイント低下)、住宅投資には直結しない借り換えも多分に含まれている点には留意が必要なものの、マイナス金利政策導入以降に住宅ローンの固定金利が大きく下がった効果が現れているとみられる。
今後3ヵ月の資金需要については、企業向けが4(4-6月期実績比横ばい)、個人向けが3(同11ポイント低下)となっている。どちらも引き続き増勢が続く見通しだが、個人向けD.I.は大きく低下しており、金融機関の間では「先行きは鈍化する」との慎重な見方が強い(図表6)。
今後3ヵ月の資金需要については、企業向けが4(4-6月期実績比横ばい)、個人向けが3(同11ポイント低下)となっている。どちらも引き続き増勢が続く見通しだが、個人向けD.I.は大きく低下しており、金融機関の間では「先行きは鈍化する」との慎重な見方が強い(図表6)。
(2016年08月09日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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