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急増する訪日外国人のホテル需要と消費支出-2014年の訪日外国人旅行者数は前年比+29%増、外国人延べ宿泊者数は同+34%増、消費額は同+43%増で2兆円を突破

竹内 一雅
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リーマンショックおよび東日本大震災などの影響により、ホテルの着工件数は落ち込み、現在はまだ回復途上にある。2014年の宿泊業用建築着工件数は867件(前年比▲0.7減)、着工床面積は74万㎡(+8.9%増)だった(図表-32)。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けた外国人旅行客の増加を期待して、現在、多くのホテル建設計画が動き始めている。週刊ホテルレストランの調査から、竣工年と客室数が明らかになっているホテルチェーンのプロジェクトを集計すると、2015年の開業予定は全国で54軒、1万2千室で、2016年も24軒、5千室の計画があった。2015年から2018年までの開業予定を合計すると2万室を上回る(図表-33)。
また、日本政策投資銀行によると、東京におけるホテルの延べ宿泊需要は2012年の4千8百万人泊から2020年には5千7百万人泊へと+18.9%の増加が見込まれており、特に外国人は8百万人泊から1千9百万人泊に+138.9%の増加が予測されている(図表-36)。なお2014年の外国人の東京都での延べ宿泊者数は1千345万人泊だった。
6――おわりに
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、訪日外国人旅行者数はさらなる増加が見込まれる。そうした中で、今後のホテル市場において懸念される問題のひとつが、ホテル従業員の人手不足と給与問題と思われる。賃金構造基本統計調査によると、宿泊業の所定内給与額は主要産業の中で最も低い業種のひとつである(図表-35)。現在、宿泊業を含む業種(宿泊業と持ち帰り・配達飲食サービス業の合計)の求人増加率は全体平均と同程度であるが(図表-36)、今後、訪日外国人観光客の増加、日本経済のさらなるグローバル化やMICE開催の増加等による外国人ビジネス客の増加、所得の回復と円安による日本人の国内旅行の増加などに伴う国内ホテル宿泊需要の増加に加え、新規ホテルの開業増加などから、ホテル従業員の需要はさらに高まり、その不足感が強まることが確実である。特に、都心部の高級ホテルなどでは、質の高い従業員の確保と育成のためには給与の上昇は欠かせないと思われる。また、過疎化が進む地方のリゾート地などでは、従業員確保にいっそうの問題が発生することが懸念される。
2020年に向けて訪日外国人旅行者数を2千万人へと増加させるために、インフラ整備などを含めた対策が次々にとられているが21、訪日した外国人に対して満足度の高い「おもてなし」を提供するための最低限の従業員の確保や質の維持も解決すべき最重要課題のひとつといえるだろう。
20 週刊ダイヤモンド2015.4.18号「国内外からレジャー客急増で“ビジネスホテル難民”が続出」、FujiSankei Business i.
2015.4.3「花見客大挙、中国人「爆宿」で客室不足 強気のホテル業界」、ITmedia ビジネスオンライン2015.5.12「“外国人びいき”反省し始めた大阪のホテルも-ビジネス客のしっぺ返しが怖い」などを参照のこと。
21 訪日外国人旅行者数拡大のための課題については、国土交通省や観光庁、日本政府観光局(JNTO)のビジット・ジャパン事業などで検討と対策が進められている。観光庁の国際観光に関する政策のウェブサイトなどを参照のこと。
(2016年07月12日「ニッセイ基礎研所報」)
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