- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 保険 >
- 欧米保険事情 >
- ドイツの責任準備金評価用最高予定利率を巡る最近の動き-財務省が1.25%から0.9%への引き下げを提案-
2016年06月06日
ドイツの責任準備金評価用最高予定利率を巡る最近の動き-財務省が1.25%から0.9%への引き下げを提案-
このレポートの関連カテゴリ
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
GDVは、さらに5月31日にも声明を公表しており、これによれば、再び「今回の引き下げがショート・ノーティス(急な話)である。」ことを指摘し、「保険料の改定とリースター年金等に対する商品情報シートを同時進行的に導入しなければならないが、後者についての明確なガイドラインがいまだ示されていない。」としている。GDV常務理事(Geschäftsführer)のPeter Schwark氏は、財務省に対して、「できる限り早く、新しい商品情報シートのデザインと申請のルールを作成する。」ことを要求している。
4 GDVのポジション・ペーパー
http://www.gdv.de/2016/05/gdv-position-zum-hoechstrechnungszins-2017/
5 リースター年金、リュールップ年金
4 GDVのポジション・ペーパー
http://www.gdv.de/2016/05/gdv-position-zum-hoechstrechnungszins-2017/
5 リースター年金、リュールップ年金
さらに、意見書の中では、「保険会社の負担を軽減する手段として、現在の強制的な追加責任準備金制度であるZZR(Zinszusatzreserve)を見直す(負担軽減を図る)こと」を提案している。
このように、BdVの意見は、その消費者代表団体的な位置付けから、DAVやGDVとは異なり、引き下げ自体に強く反対している。さらに、他の2団体とは異なり、ZZRの見直しについても触れているのが特徴的である。
このように、BdVの意見は、その消費者代表団体的な位置付けから、DAVやGDVとは異なり、引き下げ自体に強く反対している。さらに、他の2団体とは異なり、ZZRの見直しについても触れているのが特徴的である。
6―まとめ
以上、ドイツの責任準備金評価用の最高予定利率を巡る最近の動きについて、述べてきた。
今回の財務省の提案に対して、被保険者団体であるBdVは引き下げ自体に対して、強く反対しているが、一方で、保険業界側の団体であるGDVやDAVは、引き下げの実施及びその水準である0.9%自体については、反対していないようである。ただし、実施時期については、財務省が2017年1月からとしているのに対して、GDV もDAVも早くても2017年7月以降の実施を要望している。
過去の例では、こうした引き下げ時期については、保険料率の改定準備負荷等も考慮する中で、一定程度、業界側の要望が受け入れられてきた模様である。ただし、今回の場合、現在の金利が続けば、来年以降もさらなる引き下げが必要になってくる可能性も高い、という状況にある。「2017年1月~」とした場合と「2017年7月~」とした場合では、その次の引き下げが必要になった場合の実施時期にも影響を与えることになりかねない。業界側の主張に基づけば、水準見直しの決定から、実際の実施までに、かなりのリードタイムが必要になることから、監督官庁としては、こうした点も考慮して、将来の金利動向も見据えた上での水準決定が求められてくることになる。
いずれにしても、責任準備金評価用の最高予定利率については、この1年間いろいろな動きが見られたが、とりあえずは、現行制度に基づく改定(引き下げ)が行われることになる模様である。ただし、前回の基礎研レターで述べたように、「監督ツールとしての最高予定利率は、当分の間(for the time being)、維持される。」が、「2018年の生命保険改革法のレビューの中で、監督手段としての最高予定利率の必要性等については検討されることになる。」模様である、とされている。
さらには、低金利環境が継続する中で、強制的な追加責任準備金積立制度であるZZRも、今後どのようになっていくのかも関心が高い事項である。
従って、今後も、ドイツの責任準備金制度を巡る動向には眼を離せない。引き続き注視していくこととしたい。
今回の財務省の提案に対して、被保険者団体であるBdVは引き下げ自体に対して、強く反対しているが、一方で、保険業界側の団体であるGDVやDAVは、引き下げの実施及びその水準である0.9%自体については、反対していないようである。ただし、実施時期については、財務省が2017年1月からとしているのに対して、GDV もDAVも早くても2017年7月以降の実施を要望している。
過去の例では、こうした引き下げ時期については、保険料率の改定準備負荷等も考慮する中で、一定程度、業界側の要望が受け入れられてきた模様である。ただし、今回の場合、現在の金利が続けば、来年以降もさらなる引き下げが必要になってくる可能性も高い、という状況にある。「2017年1月~」とした場合と「2017年7月~」とした場合では、その次の引き下げが必要になった場合の実施時期にも影響を与えることになりかねない。業界側の主張に基づけば、水準見直しの決定から、実際の実施までに、かなりのリードタイムが必要になることから、監督官庁としては、こうした点も考慮して、将来の金利動向も見据えた上での水準決定が求められてくることになる。
いずれにしても、責任準備金評価用の最高予定利率については、この1年間いろいろな動きが見られたが、とりあえずは、現行制度に基づく改定(引き下げ)が行われることになる模様である。ただし、前回の基礎研レターで述べたように、「監督ツールとしての最高予定利率は、当分の間(for the time being)、維持される。」が、「2018年の生命保険改革法のレビューの中で、監督手段としての最高予定利率の必要性等については検討されることになる。」模様である、とされている。
さらには、低金利環境が継続する中で、強制的な追加責任準備金積立制度であるZZRも、今後どのようになっていくのかも関心が高い事項である。
従って、今後も、ドイツの責任準備金制度を巡る動向には眼を離せない。引き続き注視していくこととしたい。
(2016年06月06日「保険・年金フォーカス」)
このレポートの関連カテゴリ
中村 亮一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/05/02 | 曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- | 中村 亮一 | 研究員の眼 |
2025/04/25 | 欧州大手保険グループの2024年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
2025/04/14 | 欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2024年決算数値等に基づく現状分析- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
2025/04/01 | 欧州大手保険グループの2024年末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
新着記事
-
2025年05月02日
保険型投資商品等の利回りは、良好だったが(~2023 欧州)-4年通算ではインフレ率より低い。(EIOPAの報告書の紹介) -
2025年05月02日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- -
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く -
2025年05月01日
日本を米国車が走りまわる日-掃除機は「でかくてがさつ」から脱却-
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【ドイツの責任準備金評価用最高予定利率を巡る最近の動き-財務省が1.25%から0.9%への引き下げを提案-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
ドイツの責任準備金評価用最高予定利率を巡る最近の動き-財務省が1.25%から0.9%への引き下げを提案-のレポート Topへ