- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 保険 >
- 保険商品 >
- 明治から昭和戦前の主力商品-終身保険から養老保険へ
4――簡易保険による小口保険の発売
非営利、経費の節約などが官営保険実施の理由とされ、民間との競争を避けるためにこうした官営による簡易保険は政府の独占事業とされた。
生命保険協会をはじめとした民間保険会社による反対運動も展開されたが、1916年10月、最高保険金額を当初政府原案の300円から250円に引き下げた上で、当時の逓信省により簡易保険が創設された10。
無診査・小口・保険料月払という簡易保険の特色や、全国7000を超える郵便局を通じた販売などにより、販売件数は販売初年度の1916年には半年で26万7千件と、当初想定の2倍を超えた。
販売件数は順調に推移し、1921年には115万8千件と100万件を突破、1925年には250万件と200万件を超え、1926年(昭和元年)以降、昭和はじめの販売件数は毎年200~300万件の水準で推移した。
そして、1937年には簡易保険の加入者は国民の3分の1を超えるに至った。
最高保険金額も1922年9月に350円、1926年5月に450円、1938年10月に700円など、逐次引き上げられた。
販売保険種類は終身保険および養老保険であり、創業当初は終身保険の販売件数が5割を超えていたが、民間生命保険と同様、養老保険へのシフトが進んだ11。
10 『生命保険協会70年史』110~111ページ、生命保険協会、1978年12月。
11 『創業50周年記念 簡易生命保険郵便年金事業史』43~47ページ、316ページ、322~323ページ、統計第1表年度別新契約状況、第3表新契約保険種類別加入割合(件数)、第5表年度末現在契約状況、簡易保険加入者協会、1966年10月。
5――おわりに
民間生命保険は大口(1928年の養老保険の平均保険金額は1734円)で有診査、年払中心、簡易保険は小口(同じく1928年の養老保険、終身保険の平均保険金額は148円)で無診査、月払といった相違はあるものの、養老保険中心の販売にとなったのは、いずれもわが国特有の貯蓄指向によるものと考えられる。
戦後は、定期付養老保険、定期付終身保険の主力商品化を経て、現在の販売保険商品は医療保険、がん保険などの第三分野商品も含め各社各様、多様性に富むが、こうした経緯についても後日紹介することとしたい。
このレポートの関連カテゴリ
小林 雅史
研究・専門分野
(2016年04月26日「保険・年金フォーカス」)
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年05月01日
ユーロ圏消費者物価(24年4月)-総合指数は横ばい、コア指数は低下 -
2024年05月01日
ユーロ圏GDP(2024年1-3月期)-前期比0.3%、プラス成長に転じる -
2024年05月01日
宿泊旅行統計調査2024年3月~物価高が逆風となり日本人延べ宿泊者数(前年比)は3ヵ月ぶりのマイナス~ -
2024年04月30日
ドイツのリースター年金改革案に思う-終身性と安定性なくして年金制度の手本たりうるか- -
2024年04月30日
2024年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.4%(年率▲1.6%)を予測~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
【明治から昭和戦前の主力商品-終身保険から養老保険へ】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
明治から昭和戦前の主力商品-終身保険から養老保険へのレポート Topへ