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中国経済見通し~構造改革の本格化で成長率鈍化も、財政の発動で景気失速は回避へ

三尾 幸吉郎
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投資が大きく減速した2015年だが、消費は堅調だった。個人消費の代表指標である小売売上高は前年比10.7%増と前年の同12.0%増を1.3ポイント下回ることとなった。但し、商品販売価格指数の上昇率が鈍化したことから、価格要因を除いた実質で見ると前年比10.6%増(当研究所推定)と前年の同10.9%増から0.3ポイントのわずかな鈍化に留まったと思われる(図表-9)。
2016年以降を考えると、中国政府は引き続き最低賃金の引き上げなどを通じて“投資から消費への構造転換”を図ると見られることから、企業利益が冴えない割には個人所得の伸びが高止まりしやすい。昨年の状況を見ても工業企業利益は前年割れに落ち込んだものの、一人当たり可処分所得(都市部)は高い伸びを維持していた(図表-10)。
しかし、個人所得の伸びが底堅いとはいえ、企業利益が低迷すれば賃金への悪影響は避けられない。また、世界経済が回復するに連れて資源価格の下落も止まり消費者物価が底打ちすれば、インフレ率が高まる分だけ実質所得が目減りして、消費にはマイナス効果となる。従って、2016年以降については、引き続き消費は景気の牽引役となるものの、賃金の伸び鈍化と実質所得の目減りによって、実質GDP成長率へのプラス寄与は2015年よりも縮小すると見ている。
4.経済見通し

一方、下方リスクとしては、“雇用不安”、“金融不安”、“消費失速”の3つのリスクに注意したい。何故なら構造改革の推進は大きなリスクを伴うからである。第一に挙げた“雇用不安”に関しては、構造改革で過剰設備の解消が本格化すれば、失業者が増える可能性がある。雇用の受け皿として、戦略的新興産業や消費サービス関連企業が発展してバトンタッチできれば良いが、バトンを落とすようなリスクは残る。第二に挙げた“金融不安”に関しては、構造改革の過程では経営破綻は避けられないため、銀行の不良債権が増えて金融不安に陥るリスクも高まる。特に過剰生産設備を抱える製造業と電子商取引(EC)の隆盛の余波を受ける卸小売業には注意したい(図表-15)。第三に挙げた“消費失速”に関しては、昨年は輸出・投資の減速を消費の堅調が支えて目標達成に漕ぎ着けた。特に(1)ECの隆盛(図表-16)、(2)住宅販売(家具など)の持ち直し、(3)自動車販売の復調が3つの柱となった。今年もECはセキュリティ不安でも浮上しない限り好調と見られるが、自動車販売は株価下落の影響が懸念され、在庫を抱えた住宅販売にも陰りが見え始めている。
現下局面で構造改革を推進するという方針は正しいと評価しているが、“雇用不安”、“金融不安”、“消費失速”の3つのリスクを伴うだけに、中国政府には極めて難しい舵を取りが求められる。
(2016年02月26日「Weekly エコノミスト・レター」)
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