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トラブル発生の「民泊」をホテル不足の救いの手へ-法整備で観光立国・日本の確立を
基礎研REPORT(冊子版) 2016年2月号

竹内 一雅
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ただ、ここにきて民泊に関する規制の方向性が固まってきたようです。
自由民主党や厚生労働省、IT総合戦略本部などで民泊の規制に関する検討が活発に進められてきており、全体的には「民泊」を旅館業法の簡易宿所と位置づけて許可要件を緩和して届出制にするとともに、民泊仲介業者も許可制にして監視しオーナーや宿泊者の情報把握等の義務を課し、近隣トラブルの防止や消防・安全対策を講じさせるという方向のようです。
これらの規制により、これまで全く分からなかった民泊の実態が把握できるようになるとともに、民泊が法律で適切に位置づけられることで、宿泊者(消費者)保護の制度が整い、防災・衛生等への対応や周辺トラブルへの対策、民泊事業者の所得把握、違法民泊業への取締りなどが大きく進むことが期待されます。
期待と不安を含めて数多く報道されてきた民泊ですが、一部では異なる「民泊」が区別されずに報道されてきたようにも感じています。これまでの報道や規制緩和の議論をみると、現在、5つの「民泊」が存在していると思われ、これらを区別することが問題を考える上で重要ではないかと感じます。
それは、(1)国家戦略特区内(東京都や大阪府など)でのみ認められた「民泊条例」の民泊、(2)農業漁業体験などができる農林漁業体験民宿、(3)お祭りやコンサートなどのイベント等の開催期間のみ認められる期間限定の「イベント民泊」、(4)遊休期間の別荘貸出し、(5)インターネットのマッチングサイトを通じた「ネット民泊」の五つです。上記のうち、現行制度上、実施可能な「民泊」は、(1)の国家戦略特区内の民泊、(2)の農林漁業体験民宿業、(3)のイベント民泊になります。なお、現在、近隣トラブルなどで議論になっているのは、(5)のマッチングサイトを通じた民泊です。
民泊が広がっている背景には、訪日外国人旅行者のホテル需要の急拡大と日本人の国内旅行の増加に伴う、深刻なホテル不足があります。ホテルの客室料金も上昇しており、一人当たりの料金が比較的安い民泊が好まれているという点もあるでしょう。政府では2020年の訪日外国人旅行者数の目標を2千万人から3千万人に引き上げる方針であるとの報道もなされており、今後もホテル不足は続くと考えられます。逼迫するホテル不足とインターネットの進化により、マッチングサイトを通じた民泊はこれからの日本の宿泊にとって不可欠なインフラとなりつつあり、それが民泊に対する規制緩和および規制の議論を推し進めてきたといえるでしょう。
拡大するインターネットのマッチングサイトを通じた民泊ですが、これまでのホテルや旅館に加え、民泊が日本の法律に位置づけられてしっかり管理されることで、外国人も日本人も安心して民泊に宿泊できるようになるだけでなく、民泊周辺の住民とのトラブルや不安が解消していくことが期待されます。今後、防災や衛生、防犯、都市計画など、多くの細かい議論が進むと思われますが、単に民泊をホテル不足の補完として認めるだけでなく、日本の観光政策等の中での積極的な位置づけや意味(空き家対策を含め)をもたせつつ規制を進めることが、今後の日本の観光立国確立のために重要と感じます。
(2016年02月08日「基礎研マンスリー」)
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