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- 約款の数字 1から1095まで-第4回 「5」について(保険給付の履行期)
第4回のテーマとして、「4」という数字はほとんどの生保会社の約款にないので、「5」について。
「5」については、保険金や給付金などの保険給付がいつ支払われるかという重要な条項、すなわち保険給付の履行期(支払期限)である、顧客からの請求書類が会社に到着してから「5営業日以内」を取り上げたい。
この条項は、保険法施行(2010年4月)により、顧客にとってよりわかりやすい方向で大きな変更が行われている。
保険法施行前は、「事実の確認のためとくに時日を要する場合のほか、顧客からの請求書類が会社に到着してから5営業日以内に支払う」(損保では「事故の原因や発生状況の確認、損害額の算定など、損害調査に時間を要するという事情から」130日と設定)という規定であった。
しかしながら、保険法の検討過程で、事実の確認のための調査の名目で保険給付の支払いが遅延しているケースがあるとの指摘もあり、迅速な保険給付支払いを実現するため、保険法に保険給付の履行期に関する条項が新設された。新たな条項により、「保険事故、保険者が免責される事由その他の保険給付を行うために確認をすることが生命保険契約上必要とされる事項の確認をするための相当の期間」の明示が求められた。
これを受けて、生保会社は、従来の約款の「事実の確認のためとくに時日を要する場合」を具体化・明確化するため、各社の保険金支払実務などにもとづき、つぎのように規定を変更した(各社の保険金支払実務などにもとづいているので、会社により規定内容は異なっている)。
(1)顧客からの請求書類が会社に到着してから5営業日以内に支払う(原則)
(2)顧客からの請求書類だけでは、保険給付の支払事由発生の有無や、免責事由に該当する可能性などが確認できず、確認を行う場合 会社により、25日~60日
(3)さらに特別な照会などを行う場合はつぎの日数[ただし、(2)と合わせて最長180日]
(a)医療機関または医師への照会 会社により、45日~90日
(b)弁護士法その他の法令にもとづく照会 会社により、60日~180日
(c)研究機関等の専門機関による特別の調査、分析または鑑定 会社により、90日~180日
(d)保険金受取人などの捜査が開始された場合の捜査機関への照会 会社により、70日~180日
(e)日本国外における調査 会社により、90日~180日
(f)災害救助法が適用された地域における調査 会社により、60日~180日2
(2)の確認や(3)の特別な照会を行う場合は、請求者にその旨が通知される。
(3)の特別な照会は、保険給付についてのモラルリスク(保険金殺人や診断書の偽造など)が疑われる事案((b)の弁護士を通じた照会や(d)の捜査機関への照会)などに限定されている(会社によっては、(3)の特別な照会を、(b)、(d)および(e)の日本国外における調査に限定するケースもある)。
こうした支払期限を経過した場合、保険給付に「遅延利息」が付加される。
当然のことながら、保険会社が保険金などを支払うために必要な確認をする際に、保険金受取人などが正当な理由なくその確認を妨げたり、確認に応じなかった場合などは、その期間については、遅延利息は付与されない。
この「正当な理由」については、「保険者からの問い合わせに対し、『個人情報である』とか、『調査・確認が必要であるとは聞いていない』といった理由で回答しない場合には、『正当な理由』があるとは言い難いように思われる」3とされている。
さて、(3)の特別な照会のうち、(f)の災害救助法が適用された地域における調査は、一部の生保会社で規定されているが、先の東日本大震災もこれに該当することとなった。約款の文言上は、60日~180日の調査期間を要するとしながらも、生保各社はより迅速な保険給付支払いに努めた。
具体的には、生保各社は顧客からの請求書類の省略(震災で紛失した保険証券の提出不要、診断書の取寄せができない場合の病院などが発行した領収証での代替など)や、顧客の安否確認活動、生保契約への加入状況が確認できる「災害地域生保契約照会制度」の創設などを通じて、保険給付支払いの迅速化を図った4。
なお、海外においては、ドイツでは保険給付の履行期(支払期限)として、保険会社による、保険給付の範囲の確定に必要な確認が終了したときとされている。また、顧客からの申し出後1か月経過してもこの確認が終了していない場合は、顧客は、保険会社が最低限支払わなければならない金額を限度として一部支払いを請求することができることなどがあわせて定められている5。
(2015年07月06日「研究員の眼」)
小林 雅史
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