2015年03月06日

北陸新幹線で地方創生の優等生に-北陸新幹線開業で注目を浴びる「小京都・金沢」、「きてきて富山きときと富山」

薮内 哲

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1――「小京都・金沢」とよく呼称されるが

広辞苑によると「小京都」とは、「古い街並みが残り、京都のような趣を持つ小都市」とある。また、「全国京都会議」という組織体があり、京都に似た自然と景観があることや歴史的つながりがあるなどの要件を満たせば小京都として当会に加盟できる。加盟都市は全国に49ヶ所あり、金沢も1988年に加盟している。ただ城下町として武家文化が栄えた金沢は、公家文化の京都とは異なる面があるとして2009年に脱会している。
   現在金沢市は、国から歴史都市の認定を受けており「城下町・金沢」としての魅力を発信している。つまり、より適切には「小京都だった金沢」というのが正確な表現だろう。
   しかし、「小京都・金沢」という呼称に違和感を覚える方は少ないようだ。
   実際、2014年11月に発売された「日経消費インサイト」では、2015年日経ヒット商品・サービス予想ランキングの中で、「京都vs小京都・金沢」が第12位にランクインしている。ヒット予想にこのような形でランクインするのも驚きだが、やはり金沢には小京都というイメージが残ったままのようだ。
   「京都vs小京都・金沢」と話題にあがるのは2015年3月14日に北陸新幹線(東京-金沢間)が開業するからだ。開業すれば東京-金沢間は、現在の路線と比べ、料金が12,750円から14,120円と1,370円高くはなるが、所要時間は約3時間50分から2時間28分と約1時間22分短縮される。その結果、金沢は東京-京都間と料金と時間で同等の条件を手にするのだ[図表1]。
   ちなみに先の予想ランキングでは「北陸新幹線」が1位にランクインしており、既に駅周辺は開業を見越した開発が進んでいる。沿線各都市の地価は上昇に転じ、中でも金沢駅周辺の商業地は、対前年で全国第1位に躍り出ている。




2――チャンス到来で地方創生の優等生になれるか

安倍政権は、重要課題として「東京一極集中の是正」「地方活性化」と、いわゆる地方創生を掲げ、各地域がそれぞれの個性を活かした自律的で持続的な社会作りを目指している。
   こうした中で北陸新幹線の開業は、金沢や沿線都市にとって千載一遇のチャンスだ。北陸新幹線の年間席数は約1800万席と、小松-羽田間の航空便年間約300万席の6倍に相当し、輸送能力も飛躍的に拡大する。これを活かすには、まずは観光客を取り込むことだ。
   金沢では京都とは異なる文化で形作られた日本らしい古都の街並み、近江町市場の鮮魚はもちろん金沢の郷土料理など、独自の魅力を存分に堪能できる。加えて、少し足を延ばせば日本有数の温泉を楽しめる。
   また足元の円安などが追い風となり、日本を訪れる外国人が増加している。2014年は過去最高の1,300万人を突破しており、大半は成田・羽田空港を経由して東京を訪れる。外国人延べ宿泊者数の3分の1を東京が占める。つまり、新幹線開業は東京から国内外の人を取り込む絶好の機会と言える。
   北陸新幹線(長野ー金沢間)の総工費は、約1兆7800億円と概算されている。金沢に限らず北陸新幹線の沿線都市は、このインフラを最大限活かし地方活性化につなげていかなければならない。金沢は、小京都から完全に卒業した「Kanazawa」のブランドを確立できるかがカギとなる。
   金沢だけではない。北陸新幹線停車駅を3駅もつ富山県もチャンスだ。観光産業のテコ入れはもちろん、日本海側屈指の工業集積県であることから東京との距離が縮まることを活かし、企業誘致などさらなる産業の活性化を目指すことができる。
   地方創生の目標は、中長期的には産業の活性化を通じて、地方に職を増やし定住人口を増やすことにある。北陸新幹線沿線都市は、北陸新幹線を使い倒すことで地方創生に勢いをつけることができよう。


 

 
 1 北陸新幹線富山県開業を全国へ発信するために作成されたキャッチフレーズ。「きときと」は富山の方言で「新鮮な」という意味。
 2 全国京都会議加盟市町のHPによる。全国京都会議加盟自治体以外でも、小京都と自称、他称されている都市はある。金沢市も自称はしていないが、他称されている都市の一つであると考えられる。
 3 料金は、執筆時点で公表されていた運賃、特急料金(大人、普通車指定席、通常期)による。
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