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- 都市力アップが期待される仙台の開発動向
仙台では現在複数の復興事業が進展中だ。滞っていた不動産開発も再開あるいは既に着手して竣工し、地域経済の底上げに繋がることが期待されている。特にJR仙台駅付近や新規開業予定の地下鉄東西線沿線での不動産開発では中心市街地に新たな商業・業務や生活の拠点が形成されようとしている。そのような中、オフィス開発はまだ抑制気味で、地域経済をさらに牽引する仕掛けも必要といえる。外国人観光客の増加も視野に行政も動きだす中、仙台の街がどのように変化しつつあるのかを概観する。
1│JR仙台駅と周辺の大規模開発
JR仙台駅を降りて、けやき並木やアーケード街といった旧来の仙台中心地へ出る玄関は、西口のペデストリアンデッキ(歩行者回廊)である[写真1左]。司馬遼太郎は「街道をゆく」で当時竣工2年後のペデストリアンデッキの利便性を綴った。1970年代当時は、駅前広場の代替案として駅の東西を同じ階層でつなぐペデストリアンデッキが採用されたとのことだ。元々広大な空間整備を目指していただけに、このペデストリアンデッキは国内最大規模を誇る。
それから30年を経て、仙台駅は再び大改造に着手、地下鉄東西線新規開業(後述)に合わせての整備を目指している。大改造のメインは駅東西を繋ぐ2階自由通路の拡幅で、その幅員は16メートルと現在の2.5倍になる予定だ。また、JR線路上空と駅東側のJR所有地を活用した商業・宿泊施設棟の工事も始まっている[写真1右]。さらに駅東地区では、ヨドバシカメラが新たに店舗棟と駐車場棟を建設予定で2015年3月着工に向けて準備中だ。各施設は2016年春から2017年春に竣工する予定で、既に開業しているヨドバシ第2ビルとは渡り廊下で繋がれる。
JR仙台駅西口では、パルコが駅至近の駐車場だった区画で商業施設の開発に着手した。パルコの店舗は2008年に仙台駅西口の北寄りの敷地で竣工した「仙台マークワン」の低層階で既に開業しているが、新しい開発用地は駅西口の南寄りで2016年の開業を目指している。駅前の一等地でようやく開発が始まった背景には、計画地が開業予定の地下鉄東西線の新駅至近だったことも挙げられる。
仙台では2007年から2010年にオフィスの竣工ラッシュがあった。その際に大量に供給されたオフィス床が、復興特需でようやく消化されつつあり空室率は低下してきている。しかし、他の政令指定都市に比べると空室率が高めの築古小規模ビルも少なくない。また、人手不足による建設コストの上昇も相対的に賃料単価が低い地方都市では影響が大きい。西口には着工が延期されたまま再開していないオフィスビル計画もあり、今のところ新規供給は抑制されている。特に、東京オリンピック開催が決定してからは、施工業者が首都圏に流れているとのことであり、新規着工が進まない要因の一つとなっている。
2│地下鉄東西線開業と沿線開発
仙台中心部には既に地下鉄南北線があるが、東西を繋ぐ交通はこれまでバスに依存してきた。現在工事が進められている地下鉄東西線は、西は青葉山を越えて八木山動物園まで、東は工業団地を経て終点荒井までの約14キロを繋ぐ新たな東西交通軸となる[図表1]。開業は当初の2015年度内から前倒しの2015年内を目指し、各駅で沿線開発も進行している。
中心地の「青葉通一番町駅」予定地周辺では駅直結の商業施設「シリウス一番町」が2014年3月に開業した。青葉通りでは、多車線道路の車線を減少させ歩行者、自転車の移動環境の改善を目指して路面の工事にも着手している。
青葉通りを西に進み仙台城址方面に向かって広瀬川を渡ると仙台市博物館が所在する文化エリアで、ここには「国際センター駅」が開業する予定だ。国際センターは大ホールやレセプション会場を備えた既存の施設だが、現在これに隣接した新展示施設を建設中で[図表2]、竣工後の2015年3月に開催される国連防災世界会議の会場となる。既存施設の利用状況や採算性から新設には賛否があったようだが、仙台市では今後国際会議を誘致していく方針を示している。
3│広域拠点の開発「あすと長町」
仙台市の都市計画マスタープランでは、土地利用に関して「市街地の拡大抑制」とともに「都心・広域拠点・都市軸などの交通利便性の高い地域への都市機能の集約」を掲げている。これら3種のエリアに集中的に都市基盤投資を行う政策で、コンパクトシティ化を促すものといえる。仙台駅周辺開発は「都心」に、東西線沿線開発は「都市軸」に該当する。「広域拠点」については、「泉中央地区」「長町地区」の2地区が特定されている。「泉中央地区」は先行して開発が行われ、既に広域拠点として稼動している。一方、「長町地区」で97年からUR(独立行政法人都市再生機構)が整備をしてきた「あすと長町」では保留地の販売が段階的に行われ、ようやく仮設住宅として使用されている区画以外のすべての保留地が販売完了した。2014年7月には北端の街区に市民病院が新築移転した。さらにJR長町駅至近の区画に家具・インテリア系の商業施設「イケア」が開業し[写真2]、ファミリー層を中心に集客は好調のようだ。これらの施設が稼動し、広域拠点としての機能が高まりつつある。
4│外国人観光客増加への取り組み
宮城県の外国人観光客数は、宿泊延人数で年間3万2千人(2013年)と東北各県では岩手に続いて2位であるものの、数値が公表されている42都道府県のうち22位で、上位というわけではない。また仙台市の外国人宿泊客数は、2011年の大幅な落ち込みから2012年以降はやや回復したものの震災以前のレベルには戻っていない[図表3]。
2013年は全国で外国人旅行者数が年間1,000万人を達成し、2020年には2,000万人とする目標に掲げられているが、仙台市も招致事業の実施など外国人観光客誘致プロモーションを行っている。前述したように、2015年3月には国連防災世界会議が予定され、また、仙台空港は国際化を視野に現在国土交通省が民営化のための運営事業者を公募選定中だ。
内外問わず入込客数を増やす方策に、商業施設の拡充がある。冒頭のJR仙台駅周辺での大型商業施設開発やイケアの開業は、市の商業インフラの底上げとなる。既に開業している2箇所のアウトレットモールはバスツアーに組み込まれることも多い。また、北仙台駅方面にある東北大学雨宮キャンパスの青葉山への移転にともない、2014年1月には跡地をイオンモールが約220億円で落札した。場所は仙台中心地に近く、都心型店舗を含んだ複合開発が予定されている。
本格的な復興のためにも現在進行中の開発によって魅力ある施設や都市基盤が整備されることが求められる。海外や他県からも多くの人を呼び寄せる都市力アップに期待したい。
(2015年01月09日「基礎研マンスリー」)
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