2014年08月01日

金融市場の動き(8月号)~円安再開のエンジンと落とし穴

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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  1. (為替) ドル円レートについては年末にかけて円安が再開するとみている。そのメインエンジンとなるのは米長期金利だ。直近1年間の53週について米長期金利とドル円レートの関係性を調べると、方向性に強い関係が確認できる。今後は米利上げの足音が意識されやすくなることなどから米金利が徐々に上昇することで円安を促すだろう。また、本邦貿易赤字拡大や国内投資家の内外証券投資活発化、日銀の追加緩和観測再台頭なども円安再開をサポートする“補助エンジン”になり得る。一方で円安再開を阻害するリスク、すなわち “落とし穴”も結構ある。とりわけ、米長期金利低下と米株価下落が同時発生するときのドル円下落の確度はかなり高い。この同時発生を起こすシナリオとしては、地政学リスクの超緊迫化や米景気の失速、新興国経済の失速といったものが考えられる。また、米利上げ観測が米景気の腰折れや投資環境への不安、新興国からの資金流出懸念などを誘発すれば、たとえ米金利が上昇したとしても、ドル円の上昇は阻害されるだろう。国内要因ではアベノミクスへの期待剥落という円高リスクもある。従って、円安再開の蓋然性は高いと考えているが、なかなか一筋縄には行きそうにない。一時的にはドル円が不安定な展開になることを覚悟しておく必要がありそうだ。
  2. (日米欧金融政策) 7月の金融政策は、日欧が現状維持、FRB が量的緩和の追加縮小を決定した。当面は日銀とECBが様子見スタンス、FRBは粛々と量的緩和縮小を進める方針とみられ、サプライズが起き難いが、引き続きFRBの出口戦略に注目が集まる。
  3. (金融市場の動き) 7月は円安ドル高、ユーロドルは急落、長期金利もやや低下した。ドル円は引き続きドルのじり高を予想するが、ユーロドルは方向感が出なさそう。本邦長期金利は横ばい圏内の膠着した展開が続くと見る。

ドル円の上昇回数(直近1年の週次ベース)/ドル円の下落回数(直近1年の週次ベース)

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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