2014年07月30日

鉱工業生産14年6月~4-6月期は6四半期ぶりの減産、7-9月期の増産も微妙

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・6月の生産は市場予想から下振れ、大幅な低下
・輸送機械は減産が続く
・在庫積の積み上がりが懸念材料

■要旨

経済産業省が7月30日に公表した鉱工業指数によると、14年6月の鉱工業生産指数は前月比▲3.3%と2ヵ月ぶりの低下となり、先月時点の予測指数の伸び(前月比▲0.7%)、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲1.1%、当社予想は同▲2.2%)をともに大きく下回った。出荷指数は前月比▲1.9%と5ヵ月連続の低下、在庫指数は前月比1.9%と2ヵ月連続の上昇となった。6月の生産は輸送機械(前月比▲3.4%)、はん用・生産用・業務用機械(前月比▲3.0%)など、主力産業が軒並み大きく落ち込み、速報段階で公表される15業種中、14業種が前月比で低下した(1業種が横這い)。14年4-6月期の生産は前期比▲3.7%(1-3月期:同2.9%)と6四半期ぶりの低下となった。

製造工業生産予測指数は、14年7月が前月比2.5%、8月が同1.1%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(6月)、予測修正率(7月)はそれぞれ▲2.3%、▲1.3%となった。
予測指数を業種別に見ると、鉄鋼、化学といった素材関連は強めの計画となっているが、輸送機械が6月速報の前月比▲3.4%に続き、7月(同▲1.8%)、8月(同▲4.8%)も減産計画となっている。輸送機械は在庫が大きく積み上がっているため、生産がさらに下振れするリスクがあるだろう。

14年6月の生産指数を7月、8月の予測指数で先延ばし(9月は横ばいと仮定)すると、14年7-9月期は前期比1.2%となる。ただし、生産計画が下方修正される傾向が強まっていることを考えれば、2四半期ぶりの増産が実現するかは微妙な状況と言える。
生産の先行きを占う上では、在庫の積み上がり幅がここにきて拡大していることが懸念材料だ。輸送機械の在庫指数は5月の前月比27.3%に続き、6月も同25.0%となり、この2ヵ月で50%以上上昇している。輸出向けの船待ちという一時的な要因も考えられるが、2ヵ月連続で急上昇するのは異例だ。国内販売や輸出の落ち込みが企業の想定を超えていることも在庫積み上がりの要因となっている可能性がある。また、出荷が生産以上に落ち込むことによって在庫が積み上がる傾向は輸送機械以外の業種でも幅広く見られる。4-6月期の生産指数は前期比▲3.7%だが、出荷指数は同▲6.8%とこれを大きく下回る。このことは消費増税後の最終需要の落ち込みが企業の想定以上となっている可能性を示唆している。
今回は消費増税前の段階から企業が在庫の抑制を図ってきたため、今のところ在庫水準自体はそれほど高いとはいえない。ただし、意図せざる在庫がさらに積み上がるようであれば、現時点では比較的堅調な生産計画が下方修正され、生産調整が本格化するリスクが高まるだろう。

(2014年07月30日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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