2014年06月13日

インドと中国~中国経済の新たな脅威に浮上してきたモディノミクス

三尾 幸吉郎

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■要旨

1―モディノミクスの核心

インドでは5月26日に人民党(BJP)のナレンドラ・モディ氏が新首相に就任した。政権公約を見ると前政権の路線と大きな変わりはないようにも見えるが、外国資本の誘致については、複数ブランドの小売分野に消極姿勢を示す一方、製造業には極めて積極的である。小売業は後に回し、製造業への外国資本の誘致を先に進めることで、政権内の対立を最小限に抑えて構造改革を進めるというのがモディノミクスの核心だろう。


2―インドと中国、両国が抱えた事情

インドが経済発展のスピードを加速するためには、既に育った第三次産業に研きをかけるとともに、製造業の育成に注力する必要がある。一方、中国では既存の成長モデルが限界に達し経済成長率はじりじりと低下、高付加価値型の製造業の育成を急ぐとともに、既にシェアを獲得している低付加価値型の製造業の流出ペースをできる限り遅らせて、雇用不安を招かずに構造改革を進めることがポイントとなる。


3―中国経済を脅かすモディノミクス

モディノミクスが本格的に動き出すと中国経済にとっては新たな脅威になる。巨大な労働力を抱えるインドへと、中国から急激に工場が流出すると、中国で雇用不安が起きる恐れがあるからだ。もちろん、インドが製造業を育成しようとしても進まない可能性もある。但し、「寺院よりもトイレ」と誤解を恐れず発言するモディ首相には、これまでのインドの停滞を打破できるのではないかと思わせるところがある。


来7月上旬には、インドのモディ首相が主要国で最初の外遊先として日本を訪問する可能性が高い。モディ首相の熱意が伝われば、潜在的に大きなビジネスチャンスを抱えているインドだけに、リスクを覚悟の上で新たに進出しようとする日本企業もでてくるだろう。それはまた、中国経済にとって大きな脅威ともなるのだろう。

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(2014年06月13日「基礎研レター」)

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