- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 米国経済 >
- 【4月米FOMC】会合は波乱なく通過、中期の金融政策議論が浮上する兆しも
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
【要旨】
金融政策の概要
米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が4月29-30日(現地時間)に開催され、資産購入ペースの縮小(100億ドル/月の減額)が決定された。資産購入額の減額は事前の市場予想の通りだった。また、声明文に関しても、実質的には大きな変更はなかったと言える。フォワードガイダンスなどは修正されず、景気の現状判断に関する部分のみの修正であり、また、今後の経済見通し、金融政策を左右するものではなかった(声明の詳細はPDFを参照)。
金融政策の評価
今回のFOMCは、特にサプライズとなる内容はなく、無難に消化されたと言えるだろう。
会合と同時期に公表された米国の1-3月期の実質GDP成長率+0.1%と市場予想(+1.2%)を大幅に下回るものであったが、声明文では、「経済は上向いており、今後も順調に改善する」と記載された。これにより、淡々とテーパリングを続けるというこれまでのメインシナリオを修正する必要が薄れ、市場には、むしろ安心感を与える内容であったと言える。
資産購入策(いわゆるQE3)については、予想通り、5月以降の購入額が月間450億ドルとなることが決まった。市場のコンセンサスによれば、今後もFOMCごとに100億ドル/月ずつ購入額が減額され、あと4回のFOMCでQE3による新規資産購入は終了する(4回目は150億ドルの減額)。今後のFOMCは6月、7月、9月、10月に開催が予定されており、10月に資産購入策の終了が決定されることになる。
資産購入策の終了が近づき、今後は、利上げ時期を含む出口戦略を何らかの形でフォワードガイダンスに盛り込むことが求められるだろう。利上げ時期に関して、現在の声明文では「ゼロ金利政策を続ける期間は、雇用の最大化および2%のインフレ率という目標に対する進捗状況を実績と予測の双方の点から評価し、決定する」との表現にとどまっている。
一方、前回(3月)のFOMC後の記者会見では、イエレンFRB議長の発言によって、資産購入策終了から利上げまでの期間が6カ月程度(今年10月に資産購入策が終了、利上げは来年4月ごろ)との見方が急浮上した。ただし、その後はイエレン氏自身が、講演でハト派的な発言を繰り返していることなどから、利上げ時期はより遅れ、2015年の後半との見方が優勢と見られる。
しかし、少なくともイエレン氏のわずかな発言で市場が動揺するなど、定着した見方があるわけではない。それだけに、今後はより踏み込んだ内容をガイダンスに盛り込むことが必要だろう。
一方、FRBでは、今回の会合直前に中期の金融政策をテーマとした会合を実施しており、そこでは、出口戦略の修正や準備預金付利の引き上げについての議論がなされたとの見方もある。内容は不明だが、時期を鑑みれば、具体的な出口戦略の議論がされたと考えることは自然だろう。その意味では、FOMCでも出口戦略について踏み込んだ議論がされている可能性があり、今回のFOMCの議事録(5月21日公表)は注目と言える。
また、FOMC後の記者会見が設定されている6月と9月の会合も注目である。実際にフォワードガイダンスの修正や出口戦略が声明文に反映されなくても、記者会見において利上げ時期や出口戦略に関するFOMCの認識を知る重要な機会となるだろう。
(2014年05月01日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1818
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
高山 武士のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/07/07 | トランプ関税前後の貿易状況 | 高山 武士 | 基礎研レター |
2025/07/03 | ユーロ圏失業率(2025年5月)-失業率はやや上昇したが、依然低位安定 | 高山 武士 | 経済・金融フラッシュ |
2025/07/02 | ユーロ圏消費者物価(25年6月)-総合指数の前年比2%水準が継続 | 高山 武士 | 経済・金融フラッシュ |
2025/06/20 | 英国金融政策(6月MPC公表)-金利据え置きで従来の利下げペースを維持 | 高山 武士 | 経済・金融フラッシュ |
新着記事
-
2025年07月11日
トランプ関税の日本経済への波及経路-実質GDPよりも実質GDIの悪化に注意 -
2025年07月10日
企業物価指数2025年6月~ガソリン補助金の影響などで、国内企業物価は前年比3%を割り込む~ -
2025年07月10日
ドイツの生命保険監督を巡る動向(2)-BaFinの2024年Annual ReportやGDVの公表資料からの抜粋報告(生命保険会社等の監督及び業績等の状況)- -
2025年07月09日
バランスシート調整の日中比較(後編)-不良債権処理で後手に回った日本と先手を打ってきた中国 -
2025年07月09日
貸出・マネタリー統計(25年6月)~銀行貸出の伸びが回復、マネタリーベースは前年割れが定着
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【【4月米FOMC】会合は波乱なく通過、中期の金融政策議論が浮上する兆しも】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
【4月米FOMC】会合は波乱なく通過、中期の金融政策議論が浮上する兆しものレポート Topへ