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公的年金の特徴の一つは、死亡するまで年金が受け取れる「終身年金」であることです。もし、自分だけで老後のお金を貯めているとすれば、予想以上に長生きした場合にお金を使い果たしてしまうかもしれません。これに対して、終身年金であれば長生きリスクに対応できます。
このようなありがたい仕組みである終身年金ですが、その価値はどのように考えられているのでしょうか。図表1は、公的年金が終身年金であることついてどのように思うか、筆者らが独自に実施したアンケート調査の結果です。数値が大きいほど終身年金であることを高く評価していることを表します。1は全く評価しない、6は非常に高く評価するに相当します。図表1を見ると、評価しないとする人は少ないのですが、非常に高く評価する人も、それほどは多くはないようです。
終身年金であれば、長生きするほど年金を多く受け取れます。そのため、自分が長生きすると考えている人ほど、その価値を高く評価するはずです。そこで、長生きと終身年金の関係を調べてみました。まず、図表1の終身年金の価値について、相対的に低く評価した1~3を終身年金「消極的」グループ、これに対して4~6を「積極的」グループとします。この2つのグループで、「自分が85歳まで生きる確率」を比較したのが図表2です。
図表2の横軸は自分が「85歳まで生きる確率」を表しています。右に行くほど自分が長生きすると考えている人です。縦軸は回答した人の割合(頻度)です。公的年金に「積極的」と「消極的」を比較すると、見た目では「85歳まで生きる確率」は変わらないようです。ただし統計学的には2つのグループには差があります。特に赤い丸印の「85歳まで生きる確率はほとんどない」と考える人では、終身年金に「消極的」な人の割合が高くなっています。
よほど「自分は長生きしない」と考えている以外では、長生きするかと終身年金の価値については、目に見えてはっきりした関係はないように思われます。水の価値は水不足になってはじめてわかります。存在があたりまえのものに対しては高い評価が与えられない傾向があるようです。終身年金の価値もそのようなものかもしれません。
しかし、終身年金である公的年金は、本来であれば非常に高い価値があるはずです。今のところ公的年金以外で同様な終身年金を得ることはできません。人々がその価値を理解していないのだとしたら宣伝不足も要因の一つかもしれません。
(2014年04月01日「研究員の眼」)
北村 智紀
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