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- 土地開発公社の清算と第三セクター等改革推進債
24日に公表された「土地開発公社事業実績調査結果概要」によると、2013年4月1日時点の現存土地開発公社数は865であり、ピークだった1999年度初の1597からは45%も総数が減っている。市町村合併が一巡したのが2005年度末であることを考慮して、2006年度以降の期間に限定しても、7年間だけで262もの土地開発公社が解散している。
土地開発公社は広義の第三セクター法人に分類されるが、一般の第三セククター法人と異なるのは、地方公共団体(都道府県・市町村)による出資割合が100%であること、多くの場合は単独の都道府県か市町村が設立していること、すなわち、設立母体の"別働隊"としての性格が強いことである。その基本的な使命は、地方公共団体の公共事業実施に先立って土地の先行取得を担うことであり、土地取得のための資金調達に際しては、母体の地方公共団体が債務保証を付けることで、民間金融機関から巨額の借入れを実現してきた。
しかし、経済社会の成熟化、高齢化と人口減少が進むなか、地方公共団体が行う公共事業や社会資本整備に求められる役割も変質し、新たに土地を取得して開発を行うことよりも、既存公有地の再整備や転用、既存施設の維持・更新など保有ストックを有効利用することの方が重要になっている。そうした中で土地開発公社が先行取得した後に未利用の土地を保有し続ければ、金利負担分が住民の便益向上につながらないまま失われてしまう。万一、返済期限の到来した借入金の借入更新が拒否されたり、債務保証契約の履行が求められたりして、設立母体が弁済する事態に陥れば、地方公共団体本来の予算執行にも支障が生じかねない。
土地開発公社の解散は、これらの問題へ対処する過程で、設立した土地開発公社を存続させる意義が乏しいと判断した地方公共団体が、清算を行った結果だと考えられる。解散のペースが近年増しているのは、その判断を後押しするような様々な施策を国が講じてきたからであろう。
特記されるのは、2009年8月に総務省から通知された「土地開発公社の抜本的改革について」において、事実上の債務超過状態にある土地開発公社を念頭に置いて、存続の必要性が乏しい公社に対して解散の勧奨がなされたことである。それに先だって、公社保有土地の評価基準が変更されており、地方公共団体が土地開発公社に取得依頼をした土地(「依頼土地」と呼ばれる)以外の土地に対しては既に低価法が原則適用され、時価評価がなされるようになっていたが、依頼土地については原価法に基づいて取得価額で評価するという経理基準は現在も維持されている。地方公共団体によって計画通りに依頼土地が取得価額で買い戻されれば、公社に含み損が実現することはないからであろう。
しかし、全国の土地開発公社が保有する土地は保有期間5年以上が79.7%、10年以上が72.5%もあるという現実は、地方公共団体の事業計画自体が変わってしまった可能性を強く示唆している。解散勧奨は、これらの実態も踏まえたうえでのものであろう。
もちろん、巨額の借入金を手持資金で即時弁済できる地方公共団体ばかりではない。そこで、清算のための資金確保とキャッシュフローの平準化を支援する目的で、2013年度までの時限措置として、総務省が地方公共団体に対して発行を許可することになったのが「第三セクター等改革推進債」である。「第三セクター等改革推進債」は、地方公共団体が出資している第三セクター法人全般の事業清算や公営企業の廃止・独立行政法人化に際して許可されるものであり、元利利償還時に利子の一部が特別交付税として地方公共団体に補填措置される。
他方、元金部分に対する財源補填が国から行われることはない。清算に伴う保有資産売却によって得られる収入は起債額を下回ることになるから、差額部分の償還財源となり得るのは、今後の行財政改革や歳出合理化によって、地方公共団体が一般会計の中で自ら生み出すべき黒字(「実質収支」の黒字)である。したがって、当事者である地方公共団体が強い改革意思を持たない限り、「第三セクター等改革推進債」の許可申請自体が行われないはずである。
現実には、土地開発公社清算に向けた起債許可件数は、2009年度ゼロ、2010年度16件、2011年度6件にとどまっていたが、2012年度は27件へと増加し、2013年度は許可実績の第1次集計が行われた7月時点で51件に達している。
土地開発公社の清算・解散の必要などない状況が理想的であるし、解散が必要な状況ならば、地方公共団体が「第三セクター等改革推進債」を発行しなくても即時清算できるほど十分な余裕資金があることが望まれる。しかし、十分な余裕資金がない場合には、「第三セクター等改革推進債」の利用は、おそらく、地方公共団体にとって最善の選択である。少なくとも、より良い未来を得るための選択として捉えられる。債務保証契約履行に伴って地方公共団体から巨額の資金が突然流出するリスク(「財政再生団体」に転落するリスク)は完全に解消されるし、含み損など見えにくかった真の負担が債務として可視化されることで、住民によるモニタリングも機能しやすくなる。
最悪なのは、「第三セクター等改革推進債」の発行によって土地開発公社の清算が望まれる状況であるにもかかわらず、地方公共団体が何もせず現状放置するという選択である。
だからこそ、「第三セクター等改革推進債」の起債ラッシュは、良い現象として受け止めるべきであろう。
(2013年12月27日「研究員の眼」)
石川 達哉
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