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- 盛り上がる高齢者の消費~高品質なサービスへの高まるニーズ
団塊の世代を中心とする高齢者の間で高価格帯の旅行が大変な人気を博している。JR九州が主催している高級寝台列車「ななつ星in九州」(3泊で約40万円)は来年6月まで予約で埋まっており、高級クルーズ旅行への申し込みも例年に比べ大幅に増加している。全国約700万人にも及ぶ団塊の世代が次々と定年退職している上に、他の年代と比べ圧倒的に旅行へ支出していることが背景にあり、 団塊の世代は従来の高齢者と比較すると活動的な側面が強い。そこで、消費の牽引役となっている最近の高齢者の消費の特徴を確認してみよう。
内閣府「高齢者の経済生活に関する意識調査」(平成23年度)によると、優先的にお金を使いたいものとして「健康維持や医療介護のための支出」が42.8%と最も多いが、「旅行」も38.2%と高い水準になっている(図表1)。加えて、総務省「家計消費状況調査」(平成24年)においても、高齢者(60歳以上)の旅行への支出額は他の年代と比べ多くなっている(図表2)。既に生活する上で必要な「モノ」を保有している高齢者は、健康維持・増進や精神的な満足が得られるレジャーなど「サービス」を重視している傾向が窺える。さらに、高齢者の旅行は国内外問わずパック旅行のウェイトが高いが、一昔前に比べ自由旅行へのニーズが高まるなど選択の自由を楽しむ傾向もあるようだ1。
また、「シニア・高齢者の嗜好性と購買行動に関する調査」((株)ジー・エフ)によると、「多少金額が高くても、納得した商品を購入することが多い」と答えた割合は、高齢者が他の年代より高くなったのに対し、「価格を重視することが多い」と答えた割合は、逆に高齢者が他の年代より低くなっている。高齢者の消費では、価格よりも品質へのこだわりが強いという傾向がみられる。
このように、消費の牽引役となっている高齢者の消費には、(1)「モノ」より「サービス」を重視する、(2)価格よりも品質にこだわる、(3)選択の自由を楽しむ、などの特徴があり、少子高齢化が進展している日本では、今後更に高品質で自由度の高いサービスへのニーズが高まっていくことが予想される。
一方、日本は世界で最も少子高齢化が進展している割には、米国や英国などに比べサービス産業比率(GDPに占めるサービス産業の割合)は低く、高齢者の間で顕著な医療介護や旅行などサービス業への高い潜在ニーズを未だ十分には活かしきれていないと考えられる(図表3)。そのような潜在ニーズを顕在化させていくためにも、高齢者の消費の特徴を的確に捉え、医療介護や旅行などの分野を中心に高品質で自由度の高いサービスのラインアップをより一層拡充していく必要があるだろう。また、それには高齢者を単なる消費者として捉えるのではなく、新たなサービスの作り手として参加してもらうことが重要ではなかろうか。
今後、高齢者の求める高品質で自由度の高いサービスの拡充を通じて、高齢者の消費がより一層盛り上がり、個人消費を中心とした内需が景気を牽引していくことに期待したい。
(2013年11月20日「研究員の眼」)
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押久保 直也 (おしくぼ なおや)
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日本経済、財政
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