コラム
2013年10月15日

「もったいない」から「おもてなし」へ ~ひとりひとりが「敬意」と「尊敬」の念をもって~

山田 善志夫

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2020年東京オリンピック開催が決定したIOC総会での最終プレゼンテーションで、「おもてなし」という言葉が一躍世界的に有名になった。プレゼンテーションの中で、滝川クリステルさんは『「おもてなし」という言葉は、いかに日本人が互いに助けあい、お迎えするお客様のことを大切にするかを示しています』とスピーチした。

ちょうど同じ時期に日本で、顔に伝統的な入れ墨のあるニュージーランドの先住民族マオリの女性が温泉施設への入館を拒否されるという出来事が起こった。この出来事に関して、菅官房長官は記者会見で、『2020年の東京オリンピック開催にあたり、さまざまな国の人がわが国に来ることが予想される。外国の文化に対して敬意を払い、理解をおし進めることが大事だ』と述べた。

さて、今から8年前の2005年、「おもてなし」よりも先に、「もったいない」という言葉が世界的に広がっていった。ケニア出身の環境保護活動家で、2004年に環境分野で初めてノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんが「もったいない」という言葉に感銘を受け、その後、「MOTTAINAI」として世界に広めたのである。

マータイさんは、「もったいない」が自分の取り組む環境保護活動の3R、Reduce(ゴミ削減)、Reuse(再利用)、Recycle(再資源化)を一言で表す言葉であり、さらに自然や物に対するRespect(尊敬の念)の概念も込められていることを知り、「もったいない」という言葉に深く感銘を受けたのである。そして、環境を守るための世界共通の言葉「MOTTAINAI」として世界に広げていくことを決意した。マータイさんは、2011年9月、惜しまれつつ71歳で亡くなったが、遺言に基づき、棺は環境に配慮して木材を使わず、骨組みにマータイさんが植えた少量の竹を使い、ヒアシンスとパピルスで作られたという。

「もったいない」と「おもてなし」に共通するのは、「敬意」と「尊敬」の概念が言葉に込められていることであり、それは英語の“wasteful”や“service”とは異なるニュアンスをもつ日本語特有の言葉である。2020年に向けて日本は、世界に約束した、この日本特有の「おもてなし」を実践し、実現していかなければならない。そのためには、まず、私たちひとりひとりが、マータイさんをお手本に、自分に何ができるかを考え、「敬意」と「尊敬」の念をもってひとりひとりの「おもてなし」を実践していくことが必要ではないだろうか。

(2013年10月15日「研究員の眼」)

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山田 善志夫

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