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- ゴルフと「ネット社会」-フェアな社会競争基盤の整備を!
ゴルフをする人はよくご存知だろうが、ゴルフには実際の打数である「グロススコア」と、そこからハンディキャップを減じた「ネットスコア」があり、競技会(コンペ)ではネットスコアで順位を争う。そして最も打数の少なかったプレイヤーには、「ベストグロス賞」が贈られることもある。私は以前からこの最も打数が少ない賞をなぜ「ベストグロス」と呼ぶのか分からなかった。「グロス」とは「総体」を、「ネット」は「正味」を意味することから、実際の打数を「ネットスコア」だと思っていたからだ。
私はゴルフに造詣が深いわけではないので単なる個人的推測に過ぎないが、上記の誤解の理由は、スコアを自己申告するなどフェアプレイを最も重視するゴルフでは、実際の技術的巧拙にかかわらず、ハンディキャップを設けて同じ条件で競技することを基本理念にしているからではないだろうか*。つまりゴルフ競技会は、各人の現在の状況を基準にハンディキャップを定め、そこからどれだけの成果を挙げたかを競うものと考えると、ハンディキャップを差し引いたスコアが「ネットスコア」だと理解できる。それがフェアプレイ精神に基づくゴルフ競技の意味する『ネット社会』なのかもしれない。
一方、インターネットが普及した今日の「ネット社会」の現状はどうだろう。今や我々の仕事や日常生活は、ネット環境なくしては成立しない。日々の連絡はもとより、仕事に関する各種情報やデータの入手、事務手続きや決済業務、更に日常生活における通販や旅行予約などもネット環境が不可欠だ。
しかし、我々が今日暮らす社会には大きなネット環境格差が生じており、その不平等条件下で競争を強いられる人もいる。学生の就職活動や中高年層の転職、個人的な婚活でもネットは社会インフラとなり、それが個人の本来の能力と関係なく、人生の成功・失敗の機会を支配することもある。それだけにネット環境を持たない人やそこへのアクセスが難しい人は大きな不利益を被ることになり、デジタルデバイドの解消は、もはや個人の問題ではなく、社会問題として対応しなければならないのだ。
現代社会にはネット環境以外にも性別や年齢、障がいの有無など様々なハンディキャップがあり、規制緩和や自由競争を促す以上、そのギャップを考慮した「フェアな社会競争基盤」の整備が必要だ。また、生活保護費の不正受給が社会問題となっているように、格差是正のためにはフェアプレイ精神のゴルフ競技と同様に、公正なハンディキャップの査定が不可欠である。不正なハンディキャップの申請は許されてはならない。積極的に社会格差を是正し、誰もがフェアな環境で競争できる社会こそ、文字通り『ネット社会』と言えるのではないだろうか。
土堤内 昭雄
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