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インドネシアの首都ジャカルタまでやって来た。
2012年の世界経済は、先進国では成長停滞が続き、BRICsなどの新興国経済も冴えなかった。
そんな中、目立って高い成長を記録したのがASEANの国々だ。特に、インドネシア、タイ、フィリピンでは2012年に6%を超える成長率を記録し、株価も絶好調である。
今回は、こうした国のミクロレベルの経済活動を目にする機会に恵まれた。事実、ジャカルタに着けば高層ビルが建っていることはすぐに見てとれるし、筆者が宿泊したホテル(値段は日本とほぼ同水準で、インドネシアの賃金を考えたら、かなりの高級ホテルということになる)も多くの宿泊客で賑わっていた。ホテルは外国人観光客をターゲットとしていると思われるが、現地人も一定数いるように思われた。また、ホテル近くには、世界に名だたるブランドが並ぶ高級デパートがあり、盛況だ。こうした裕福層向けのデパートはジャカルタにいくつかあるが、海外からの観光客だけではなく、現地の人も多い1。
さらに目立ったのは、若い人が多いということだ。筆者がJKT482の公演を見るために訪れたFXと呼ばれるモールもそうだった。休日にデパートに来て、お昼を食べたり、ショッピングをしたり、カフェでくつろいでいるカップルや友達、そして小さな子供を連れた家族連れを多く目撃したが、こうした休日の過ごし方は、日本と大差がないと言っても良いと思う。
また、日本のアイドルグループであるAKBのジャカルタ版、JKT48の公演は、インドネシア語で行われているだけで、内容は日本の公演と大差なかった。異国情緒は皆無であり、歌の途中でファンが入れる合いの手などそのまま日本から輸出されているようで驚いた。とはいえ、もちろんファンのほとんどは現地人だ。日本から遠く離れた土地でも、日本の公演が再現できるのは、インターネットで情報を共有することが容易になったからだろう3。インターネットで動画を見れば日本でどんな公演が行われているのかが分かるし、ファンはそれを見て合いの手の入れ方を勉強できる4。
こうした姿を見ると、グローバル化が製造業だけでなく、サービス業にまで広がりつつあるのだと改めて感じる。それも飲食業などの基本的な衣食住に関係するサービスだけでなく、幅広い産業まで広がっている。音楽や映像だけでなく、多様な娯楽が受け入れられる余裕が生まれているのだと思う。ただし、こうした娯楽産業の輸出は、グローバルな競争にさらされていくのだろうし、最終的には、どんなコンテンツが受け入れられるのか想像することは難しい。
このように産業の裾野が広がる一方、インドネシアでは所得格差も大きくなっている。路上には雑誌やお菓子の売り子や物乞いを多く見かけるし、交差点で車が止まれば窓を叩いてお金をせびる人もいる。都市部ですらこういう状況であるのだから、農村部は推して知るべしだろう。
JKT48のチケット購入には事前にインターネットで応募して当選することが必要だが、ネットにアクセスして応募できる人はほんのわずかだ。ジャカルタでは抽選に当たる以前に、抽選に応募すること自体が一つのハードルでもあり、劇場まで足を運ぶのがまた一つのハードルなのだ5。日本のように公演を楽しめる人はまだ少数だ。
また、車を使う人が急激に増えたため、道路は頻繁に渋滞し、通勤時間が予想できないなど、住みやすい社会とは言い難い。いわゆるインフラ不足の状態であり、経済基盤・下部構造が十分に成熟している訳ではない。
インドネシアが抱える複雑さは、まさにこういう所にあるのだろう。インドネシアでは裕福層が求める財・サービスが受け入れられる一大市場であると同時に、貧困層の削減やインフラの整備といった経済の底上げが必要な国になっている。おそらく、この問題は人口が多いほど、土地が広いほど、解決に取り組むことが難しくなっていくように思われる。救うべき貧困層は増え、整備すべき土地は広大になる。人口も多く、多数の島からなる広大な土地を有するインドネシアでは、この問題を解決することは一筋縄ではいかないだろう。
現在のところ、インドネシアは、こうした複雑さを抱えつつも外資系資本を呼び込み、インフラの整備に努め、一方で、高級ブランド、飲食、娯楽など総合的なモノ・サービスの消費市場になろうとしている。まさにBRICsに代わり注目されはじめたインドネシアが、今後、どのように発展していくのか、非常に楽しみである。
(2013年03月06日「研究員の眼」)
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03-3512-1818
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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