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不幸にして地震や津波で死亡した場合、民間保険会社が提供している傷害保険や傷害特約の(災害)死亡保険金は支払われるのか? この問いに答えるのは実は簡単ではない。
そもそも傷害保険は「「急激・偶然・外来の事故」によりケガをした結果、入院・通院したり死亡した場合などに保険金が支払われる保険」(損害保険協会ホームページ)であり、現在は損害保険会社だけが販売している。一方、傷害特約は「不慮の事故で死亡したとき、主契約の死亡保険金に上乗せして、災害死亡保険金が受け取れます」(生命保険文化センターホームページ)とされており、終身死亡保険や定期死亡保険などの主契約に付加する形で、生命保険会社のみが販売している。
地震や津波は「急激・偶然・外来の事故」「不慮の事故」に該当すると考えられるので、当然に保険金が支払われるように読めるが、実はそうではない。損害保険の世界では、地震や津波は免責事由(保険会社が保険金支払いの責任を免れる事由)とされており、(地震保険を付加しない)火災保険や自動車保険と同様に、傷害保険の保険金は支払われない(今回の東日本大震災でも支払われなかった)。
これは、地震や津波の発生確率や被害規模などの想定が難しく、保険料率の算定にも反映されていないためだが、この点、生命保険会社の販売する傷害特約においては、約款上、(保険料の)計算基礎に重大な影響を及ぼさない限り災害死亡保険金を全額支払うとされており、今回の東日本大震災においても、全社が全額を支払った(過去の災害で支払われなかった事例はない)。
両者の差異については、歴史的な経緯の相違や、地震・津波の損保会社、生保会社への影響度の違いといった事情はあろうが、傷害特約では支払われるが傷害保険では支払われないということが消費者の目から見て分かりにくいことは否めない。
この領域が「第三分野」として生損保の乗り合い領域となった現在では、生命保険会社が(特約ではない単品の)傷害保険を販売することも可能であり、仮に売り出された場合には、両者の差異はさらに説明しにくいものとなろう。消費者の目から見て分かりやすい保険商品であってほしいものである。
(2012年12月28日「研究員の眼」)
明田 裕
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