- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 不動産 >
- 都市計画 >
- 社会インフラ更新費 50年で190兆円
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
衆議院選挙は自民党が大勝した。自民党が掲げた10年で200兆円の国土強靭化基本法や笹子トンネル事故など、今改めて社会資本ストックのあり方にスポットが当たっている。
日本は1960-70年代の高度経済成長期に道路、上下水道、港湾、学校施設などの社会インフラを急激に整備してきた。過去に建設した多くの構造物は、老朽化し寿命(コンクリートの耐用年数)とみなされる50年を迎えようとしている。2011年度から今後50年間に必要な更新費用は約190兆円iにもなる見通しだ。これを同期間の推計人口で割れば1人当たり年間3.4万円の負担になる。4人家族で年間15.6万円と考えると、フローベースでこれ以上の新設は控えてもらいたいと思う。社会資本更新の費用負担に関するアンケート調査iによると、「負担が増えるなら全ての施設を更新する必要はない」が24.5%と少数意見で、大半がインフラの更新を求めているようだ。
この巨額の更新費をどう賄っていくのか。最も危機感を持っているのは地方自治体だ。インフラ更新計画を立てるなど本腰を入れている自治体もある。インフラの補修による長寿化、別の用途への有効利用、複数のインフラの維持管理・更新を民間企業へ包括的・長期的に委託するといった節約策が検討されているが、現実問題として全ての施設を更新することは不可能だ。図表2のとおり人口減少が激しく、1人あたりの資本ストックが大きい自治体は財政負担が大きすぎる。
一方向的に拡大してきた街づくりを今後コンパクト化していくとなれば近隣住民の反発は間違いなく起こるだろう。自治体が住民の理解を得る上で必要なのは、(近隣住民への配慮の施策は当然としても)受益と負担の関係を明確化することだ。例えば、廃棄を検討している図書館を維持・更新するには地域住民1人あたりいくら税金を負担しなければならないか、そして塵も積もれば山となるというイメージのしやすい情報を提供することが必要だ。
新政権では国土強靭化基本法により、多くの資本ストックの新設が予想される。自治体は国からお金が降りてくるからといっても、既存ストックの利活用では済まないのか、また将来の維持管理や更新に伴うコストがいくら掛かるのかといった長期的な視点を忘れてはならない。
(2012年12月21日「研究員の眼」)

03-3512-1780
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/07/15 | インド消費者物価(25年7月)~6月のCPI上昇率は+2.1%、食品価格の下落で6年ぶりの低水準に | 斉藤 誠 | 経済・金融フラッシュ |
2025/07/07 | ベトナム経済:25年4-6月期の成長率は前年同期比7.96%増~駆け込み輸出により製造業が好調 | 斉藤 誠 | 経済・金融フラッシュ |
2025/06/23 | 東南アジア経済の見通し~政策対応で内需は底堅いが、外需は不透明感増し、景気減速へ | 斉藤 誠 | Weekly エコノミスト・レター |
2025/06/13 | インド消費者物価(25年5月)~5月のCPI上昇率は+2.8%、食品価格の低下が続いて6年ぶりの低水準に | 斉藤 誠 | 経済・金融フラッシュ |
新着記事
-
2025年07月15日
インド消費者物価(25年7月)~6月のCPI上昇率は+2.1%、食品価格の下落で6年ぶりの低水準に -
2025年07月15日
民間医療保険の健全性強化を図るインドネシア-医療保険規制は医療制度の課題を示す- -
2025年07月15日
「SDGs疲れ」の空気から考える、本当のサステナビリティ-「検索データ」から見る、日・米・欧のSDGsギャップ -
2025年07月15日
今週のレポート・コラムまとめ【7/8-7/14発行分】 -
2025年07月14日
ニッセイ基礎研所報 2025(Vol.69)
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【社会インフラ更新費 50年で190兆円】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
社会インフラ更新費 50年で190兆円のレポート Topへ