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- 米国のスワップと保険の規制を巡る論議動向-CFTCとSEC共同のスワップ定義規則を中心として
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■見出し
1――米国の金融危機とスワップ規制
2――委員会(CFTC、SEC)のスワップ定義規則と保険商品との関係
3――生保業界から見た本規則の特徴および課題
■introduction
2008年秋に発生したリーマン・ショックにより、大規模金融機関の経営危機による金融システムの機能不全という新たなリスクが問題視されるようになった。
この結果、システミック・リスクを回避すると同時に、消費者保護を図るという観点から、米国では大規模な金融規制改革が行われ、その集大成として2010年7月にドッド・フランク法(Dodd Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act)が成立することとなった。
今回の金融危機では、一種の債務保証的な機能を有するいわゆるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を中心とする店頭デリバティブの規制が行われておらず、市場の混乱を増幅させたとの認識から、CDSを含むデリバティブ商品をスワップとして法令上厳格に定義するとともに、商品先物取引を所管する商品先物取引委員会(CFTC)と証券取引を所管する証券取引委員会(SEC)とが共管(以下「委員会」とする)で、これらスワップ取引を規制することとなった。
具体的には、スワップ(金利スワップや商品スワップ等)をCFTCが、証券派生スワップをSECが、双方の性質を持つ混合スワップを双方がそれぞれ担当することにより、スワップ商品およびその取引業者を規制することとなった。
これらを通じて、スワップ市場の透明性の確保と適正な取引の実現が期待されることになった。
一方、これまで州が専管的に規制を行ってきた保険については、今回の金融危機においても監督上大きな問題がなかったこともあり、引き続き州による保険に対する一般的な監督権限が留保されることとなった。
したがって、ドッド・フランク法においても基本的には、スワップは連邦監督当局(委員会)が、保険は州(保険局)がそれぞれ縦割り方式で監督するというすみわけがなされることとなった。
ドッド・フランク法では基本的に保険商品はスワップとして規制しない旨の考え方が示されているが、一方でその定義の仕方のひとつとして、「スワップとは、不確定な金融・経済事象が発生するか否か、または不確実な事象の発生程度に依存して、売る、買うまたは支払義務が生じる契約である」旨の幅広な書き方がされているために、保険を明確に除外するための規則の制定が求められることとなった。
このような中で、ドッド・フランク法上スワップの詳細な定義を規則で定めるよう求められていた委員会では、規制逃れを避けるとともに、保険商品等のスワップ規制上の取り扱い(適用除外)を明確にするための規則制定に着手し、検討を重ねた結果、2012年8月に保険商品の適用除外を含めたスワップの定義に関する規則を公表し、保険商品の取り使いを明らかにした。そこで、以下ではその概要を紹介することとする。
(2012年12月03日「保険・年金フォーカス」)
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