2012年11月30日

日本の「CSR経営元年」から10年-“日本CSRのDNA”は、いかに形成され、どう変貌するのか

川村 雅彦

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■見出し


1――日本CSRのDNAは、いかに形成されたのか?
2――模索する日本CSR:これまでの10年
3――CSR概念の世界的な統一に向けた動き
4――これからの日本CSRの方向性:世界標準との整合性

■要約

  1. 筆者はニッセイ基礎研REPORT2003年7月号に「2003年は日本の『CSR経営元年』」を執筆した。それから10年経とうとする現在、1956年の経済同友会決議「経営者の社会的責任の自覚と実践」を起点とする日本CSRは、60年近い歴史の中で最も大きな転換期を迎えようとしている。
  2. 欧米CSRとの比較において、日本CSRは「法令遵守+社会貢献+環境対応」と言われる。この“日本CSRのDNA“とも言うべき特徴は、1960年代から1900年代にかけて、日本企業が不祥事と反省・自戒を繰り返すなかで、国内の視点から独自に形成されてきたものである。
  3. ところが、2000年頃から日本企業に対して欧米調査機関からSRI(社会的責任投資)銘柄選定のための膨大なアンケートが届くようになり、日本企業は自分達の考え方とは異なる欧米CSRを知った。この“欧米CSRショック”を契機として日本CSRの模索が始まり、その流れの中で2003年の「CSR経営元年」を迎えたのである。
  4. 2010年代になると、CSRの概念・実践・報告に関する世界的な動きが出てきた。2010年にISO26000(社会的責任の国際規格)が発行され、CSRの基本概念と実践課題が国際的に合意されたのである。翌2011年にはIIRC(国際統合報告委員会)が、財務情報と非財務情報(環境・社会・統治)を統合して報告するフレームワーク(案)を提示した。実証プロジェクトも始まっている。
  5. CSRは「企業の意思決定や事業活動が社会および環境に及ぼす影響に対する責任」と定義された。今、CSRは世界が歩調を合わせながら新たな方向に動き出したのである。このグローバルな潮流を背景に、日本企業は好むと好まざるとにかかわらず、これまでの日本CSRのDNAから脱して、まったく新しい発想に基づくCSR経営に取り組む必然性が高まってきた。
  6. 今後、グローバル化が進展するなかで、社会・環境価値と企業価値の両立は不可欠である。影響力を強めた企業は、その本業(プロセスとプロダクト)においてこそ、社会的課題を解決しなければならない。それが本業における「影響力の行使」であり、CSR経営の実践に他ならない。
  7. 経営戦略において財務要素と非財務要素が統合されねばならない。なぜならば、様々な制約のある21世紀の経営環境において、統合報告は新しい社会・環境価値と企業価値を生むインフラに他ならないからである。この発想は、これまでの日本CSRのDNAから決して生まれない。

(2012年11月30日「基礎研レポート」)

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