2012年11月30日

鉱工業生産12年10月~10月の生産は予想外の上昇

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・市場予想を大きく上回る4ヵ月ぶりの上昇
・生産は年末から年明けにかけて底入れを探る展開へ

■introduction

経済産業省が11月30日に公表した鉱工業指数によると、12年10月の鉱工業生産指数は前月比1.8%と4ヵ月ぶりの上昇となり、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲2.0%、当社予想は同▲2.5%)を大幅に上回った。鉱工業生産の実績値(速報)が事前の市場予想を上回ったのは、12年1月以来9ヵ月ぶりとなる。
出荷指数は前月比0.0%の横ばい、在庫指数は前月比0.3%と3ヵ月ぶりの上昇となった。
10月の生産を業種別に見ると、情報通信機械は9月の前月比▲8.4%に続き、同▲15.3%と大幅減産が続いたが、在庫調整の進捗が見られる電子部品・デバイスが前月比14.7%の高い伸びとなったことに加え、5月からの5ヵ月で25.9%の落ち込みを記録した輸送機械が前月比1.1%と小幅ながら上昇に転じた。
製造工業生産予測指数は、12年11月が前月比▲0.1%、12月が同7.5%、生産計画の修正状況を示す実現率(10月)、予測修正率(11月)はそれぞれ0.6%、▲1.1%となった。
実現率がプラスとなったのは10年8月以来2年3ヵ月ぶりである。日中関係悪化による影響が先月時点(調査の提出期日は10/10)で企業が想定していたほど大きくなかったことを示唆している可能性もあるだろう。
12年10月の生産指数を11月、12月の予測指数で先延ばしすると、12年10-12月期は前期比0.8%の上昇となる。現時点では生産低迷の主因である輸出の下げ止まりが確認されていないこと、実現率がプラスとなったのは一時的で、来月以降は再び実績が計画を下回る可能性があることなどから、先行きについては慎重に見る必要があるだろう。ただ、少なくとも7-9月期の前期比▲4.2%から減少幅が大きく縮小することは確実で、急激な落ち込みが続いてきた鉱工業生産は年末から年明けにかけて底入れを探る展開となりそうだ。
なお、12月の予測指数は前月比では7.5%の高い伸びとなっているが、前年比では▲5.4%のマイナスとなっており、必ずしも強気の生産計画とは言えない。季節調整の歪みといった技術的な要因で前月比の伸びが高めに出ている可能性もあることには留意が必要だろう。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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