2012年05月31日

鉱工業生産12年4月~2ヵ月連続上昇も、先行き不透明感が高まる

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・在庫指数がリーマン・ショック後の水準まで上昇
・生産の先行き不透明感が高まる

■introduction

経済産業省が5月31日に公表した鉱工業指数によると、12年4月の鉱工業生産指数は前月比0.2%と2ヵ月連続の上昇となったが、事前の市場予想(QUICK集計:前月比0.5%、当社予想は同0.9%)は若干下回った。出荷指数は前月比0.9%と3ヵ月連続の上昇、在庫指数は前月比2.0%と2ヵ月連続の上昇となった。
4月の生産を業種別に見ると、輸出の好調やエコカー補助金再開に伴う国内販売の好調を受けて、輸送機械が前月比6.5%の高い伸びとなったが、液晶テレビの販売低迷が続く情報通信機械が前月比▲19.5%と急速に落ち込み生産全体を大きく押し下げた。速報段階で公表される16業種中、9業種が前月比で上昇、7業種が低下した。
在庫は輸送機械(前月比11.7%)、電子部品・デバイス(前月比4.6%)を中心に高い伸びとなり、在庫指数はリーマン・ショック後の積み上がり局面とほぼ同じ水準にまで上昇している。生産の先行きを見る上で懸念材料のひとつと言えるだろう。
製造工業生産予測指数は、12年5月が前月比▲3.2%、6月が同2.4%となった。5月の減産計画はGWの関係で季節調整に歪みが生じていることが影響している可能性もある。しかし、そうした要因がなくなる6月の生産計画は5月の落ち込み分を取り戻しておらず、東日本大震災後の持ち直し過程にあった前年よりも低い水準(前年比▲1.1%)にある。生産計画は実態として弱い。
業種別には、4月に2割近く落ち込んだ情報通信機械が引き続き大幅な減少(5月:前月比▲7.7%、6月:同▲2.8%)が見込まれていることに加え、好調を続けてきた輸送機械が一転して大幅減産計画(5月:前月比▲13.6%、6月:同▲4.6%)となっている。生産は牽引役を失いつつある。
また、生産計画の修正状況を示す実現率(4月)、予測修正率(5月)はそれぞれ▲2.2%、▲1.2%となった。このところ生産計画の下振れ傾向が続いており、先行きの生産が弱めの計画からさらに下振れる可能性を示唆している。
12年4月の生産指数を5月、6月の予測指数で先延ばしすると、12年4-6月期は前期比▲0.8%の低下となる。鉱工業生産は4四半期ぶりの減産となる可能性が高くなってきた。

(2012年05月31日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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