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- アートが拓く超高齢社会の可能性―高齢者の潜在力を引き出すアートのポテンシャル
- 高齢者とアートの多彩な出会いが全国に広がっている。自ら演じたり、歌ったりするだけでなく、福祉施設にアーティストが出向き、お年寄りを対象にワークショップという参加・体験型の活動を行う取り組みも確実に広がっている。
- 演劇や音楽を始めた高齢者の多くは、楽しくて辞められなくなった、第二の人生で新たな生きがいを見つけた、人に見られるのが嬉しい、と口を揃える。北海道浦河町の「座・たくあん」、札幌の「生きがい探偵団」、横浜の「65歳からのアートライフ」などが代表例だ。
- 一方、アーティストのワークショップでは、リハビリでは上がらなかった腕が上がった、車椅子に座りっぱなしだったお年寄りが立ち上がったなど、周囲が驚くようなこともしばしば起こっている。1999年にアーティストを高齢者施設に派遣する「アートデリバリー」を始めたNPOのARDA(東京、写真)や、美術館で認知症のお年寄りを対象にした対話型の美術鑑賞プログラムを実施するアーツアライブ(東京)などが、大きな成果をあげている。
- それらの事例を俯瞰すると、高齢者の芸術活動は趣味や娯楽という範囲を超えて、アートが高齢者の新たな潜在能力を引き出しているのではないか、さらには、現在の高齢者福祉に対する考え方に大きな疑問を投げかけているのではないか、とさえ思えてくる。
- 演劇活動の中で自分に「役割」が与えられること、アーティストの感受性がお年寄りならではの個性や表現を引き出していくこと、集団活動をベースにした新たなリハビリテーションの可能性が見いだせること、などが、高齢者とアートの出会いによって、従来の福祉政策の枠組みを超えた様々な効果、成果が生み出される原動力となっている。
- しかし、医療的、福祉的な効果よりも重要なのは、アートを通して高齢者の主体的な参加やパワーが生まれ、お年寄りたちが与えられるだけ、介護されるだけの存在から脱皮できることである。その結果、福祉や高齢者に対する我々の常識に変革をもたらしてくれる。それは、高齢者が一人の人間としての尊厳や生きる誇りを取り戻し、人間性を恢復することに他ならない。高齢者とアートの出会いは、世界のどの国も経験したことのない超高齢社会を迎えた日本にとって、大いなる示唆を投げかけているのである。
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吉本 光宏 (よしもと みつひろ)
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