- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- >
- 証券市場 >
- 現役世代と比較して高齢者世代の株式配分はどうして高いのか?
■見出し
1――はじめに
2――ライフサイクル・モデルによる世代間の株式配分の比較
3――高齢者世代と現役世代との投資パラメータの違い
4――結論と今後の課題
■introduction
家計が金融資産を保有する理由は、病気や失業などの万が一への備え、老後の(将来の)生活費の準備、住宅購入や子供の教育費の準備、流動性の確保などの様々なものが考えられる。このなかで、老後の(既に退職している場合は将来の)生活費の準備など長期的な目的で保有する金融資産では、リスクは大きいが高いリターンが期待できる株式(株式投資信託も含めて考える)に投資されることがある。
最もシンプルな仮定をおくファイナンス理論では、株式に期待できるリターンが国債などの安全資産の利回りを超える限り、全ての家計が(ごく少額であったとしても)株式を保有すべきであり、また、株式への資産配分(以下、「株式配分」とする)は、家計の年齢に関わらず一定量を保つべきだとしている。
一方、実務の世界では、労働収入の限られる高齢者世代は、労働収入を得て生計を立てている現役世代よりも、株式配分を少なくすべきというアドバイスが行われる。例えば、勤務先の企業が掛金を拠出し、従業員(加入者)が資産運用を行う確定拠出年金では、ライフサイクルに基づく運用商品の選択が提案されることがある。これは、年齢が若い加入者には、運用期間が長いので株式投信などを積極的に組入れるのに対して、退職が近い従業員には比較的安全な運用を薦めるものである。あるいは、ライフサイクル・ファンドといって、運用会社が株式と債券への資産配分を自動的に調整するタイプのファンドが導入されつつある。このファンドは、加入者の年齢が低いうちは債券より株式への配分を高め、年齢が高まるにつれ株式への配分を減らす運用が行われる。また、退職後の従業員(受給者)に対しては、リスクが低い運用商品が多く提示される傾向がある。
これに対して、現実の家計の株式配分は異なる傾向を示している。家計の全金融資産に占める株式と投資信託の割合は、30~40歳代では約8%、50歳代では約10%であるが、60~70歳以上では約13%であり、高齢者世代の方が高まっている(金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」(平成22年))。
そこで本稿は、高齢者世代の株式配分が現役世代よりも高まる要因を分析する。本稿の構成は以下のとおりである。まず、第2節で家計が生涯にわたってどのような投資をすべきか理論的に説明するライフサイクル・モデルを利用して、高齢者世代が現役世代と比較して相対的に株式配分が高まる要因を概観した後、第3節では、高齢者世代と現役世代の株式配分について、実際のデータを利用して検証する。第4節は結論と今後の課題である。
(2011年11月07日「ジェロントロジーレポート」)
このレポートの関連カテゴリ
北村 智紀
研究・専門分野
北村 智紀のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2017/12/29 | 公的年金改革があると考える人はNISAやiDeCoに加入するか?-自助努力を進める可能性に関する実証分析 | 北村 智紀 | 基礎研レポート |
2017/11/30 | 公的年金の支給開始年齢が引き上げられると考える人は、自分で老後の準備を進めているか? | 北村 智紀 | 研究員の眼 |
2017/09/29 | ねんきん定期便はライフプラン設計を改善するか?-インターネット調査を利用した検証 | 北村 智紀 | 基礎研レター |
2017/07/31 | やりくりに余裕がない家計は変動金利を選択する傾向がある~家計の住宅ローン金利の決定要因分析~ | 北村 智紀 | 研究員の眼 |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年10月25日
金融システム、特に保険と年金基金のリスクと脆弱性に対する助言等の公表(欧州 2024秋)-EIOPA等の合同報告書の紹介 -
2024年10月25日
米労働市場の緩やかな減速が継続-景気が堅調を維持する中、失業率の大幅上昇は回避へ -
2024年10月25日
副業・兼業で広がるキャリア戦略~会社視点の働き方改革から生き方改革へ~ -
2024年10月24日
24年9月末時点の経過措置適用企業の進捗状況~経過措置の適用は2025年3月から順次終了~ -
2024年10月23日
円安再燃、1ドル160円に逆戻りするリスクは?~マーケット・カルテ11月号
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
【現役世代と比較して高齢者世代の株式配分はどうして高いのか?】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
現役世代と比較して高齢者世代の株式配分はどうして高いのか?のレポート Topへ