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東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、避難所で不自由な生活を強いられながら懸命に耐えている被災者の方々と、決死の思いで原発のトラブルに対処されている方々のご無事を心からお祈り致します。
未曾有の大災害を目の当たりにして、世界中の人たちが自分に出来ることは何かを考え、行動を起こしている。こうした人々から寄せられる善意が、迅速に公平にそして効果的に被災された人たちのもとに届くことを願わずにはいられない。
復興に向けて党派を超えた体制づくりや強力なリーダーシップの確立が叫ばれながら、なかなか具体的な展望が開けてこないのは歯がゆい。是非とも既存の制度や法律に囚われず、大胆にそして息長く復興を支える体制を一日も早く作り上げて貰いたい。ただ、気をつけなくてはならないのは、復興を急ぐあまり、或いは形式的な公平性にこだわるあまり、画一的なお仕着せの対応であってはならないということだ。
今回の被災地は極めて広範囲に及び、それぞれに長い歴史を経て特色のある美しいまち作りを進めてきた。勿論、多くの地域で過疎化・高齢化が進んでおり、元通りに戻せば済むというわけではないが、パターン化された画一的なまち作りをしても、かえって地域に対する愛着が薄れ、さらに過疎化が進むことになりかねない。やはり、それぞれの地域の歴史や文化、風土、産業、景観等の特徴を踏まえた上で、若い人たちが住み続けられ、外から人が移ってくるような魅力的なまちでなくてはならない。その為には、政府主導の本格的な復興が始まる前に、新しいまちの姿について、地元の人たちによる青写真づくりが必要ではないか。
そこで、これまで、地域の再生や、高齢になっても最後まで住み続けられるまち作りの実践活動をしてきた経験を持つ人たちには、是非とも早急に復興に向けての具体的なプランを提案して貰いたい。既に、東京大学高齢社会総合研究機構でも若手の人たちを中心に、これまで取り組んできた研究や実践活動の成果を生かした提言づくりが始まっていると聞いている。こうした動きがさらにひろがってゆくことを期待したいし、政府にはこれらのアイデアを積極的に募ってもらいたい。
また、被災地の人たちには、こうしたアイデアを参考にしながら、自分たちの住み慣れた地域をどうやって再生してゆくかを話し合い、未来に向かって夢と希望の持てるような青写真を描いて頂きたい。そして、当面の緊急対応を終えた地方自治体は、こうした住民たちのプランを基に具体的な復興計画を作り上げ、それを国が資金面を含めて強力に支援してゆくことで、はじめて魅力的な国土としての新しい東北が生まれるだろう。さらに、こうした国の支援を、私利私欲や党派的な利害を超えて、責任を持って進めてくれる政治家をキチンと見極め、長い復興のプロセスを託せる政治体制を作り上げることこそ、たまたま今回被災を免れたに過ぎない我々の「出来ること」ではないだろうか。
(2011年04月25日「基礎研マンスリー」)
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